206話
まだまだ決闘は続く
オーバーキルも致し方無い
‥‥‥決闘場にて、後悔をする人はどれぐらいいるのだろうか?
決闘を自ら挑むぐらいだし、きちんと戦い抜く覚悟をしているから後悔する人と言うのはあまりいないであろう。
だが、相手を甘く見ていた、もしくは挑んだ者の代理人として出ているのでそこまで覚悟していなかったなどの場合では、そうはいかない。
そもそもやるのならばきちんと心構えをしていなければいけないのに…‥‥できていないからこそ、後悔すると言うのは何事にも言えよう。
そして今、決闘場の舞台では、その後悔を思いっきりしまくっている人たちが大勢いたのであった。
「『マッドストライク』!」
水と土の魔法が合わさり、巨大な泥の腕が出現し、舞台に立つ者たちをまとめて殴り倒す。
ドッゴォォォン!!
「ぎえぇぇぇぇぇ!!」
「ふぐわぁぁぁぁぁ!!」
「泥で痛みが微妙だけど、重量があぁぁぁぁ!!」
「『プラズマウィップ』!」
雷と木に関する魔法が複合され、蔓が舞台から生えると同時に電撃を帯びて暴れまく。
ビシバチィッツ!!
「ひっぎゃぁぁぁあ!!」
「あべんじゃぁぁぁぁ!!」
「ぎもちぃぃぃ!!」
「『ハイドロヒート』!」
空中に浮き出た水を炎の魔法が沸騰させ、煮えたぎったお湯となって、風の魔法によって流されて決闘場にいる者たちに浴びせられる。
ぶしゅわぁぁぁぁぁぁ!!
「あっちぃぃぃぃぃ!!」
「拷問かぁぁぁぁぁぁあ!!」
「他よりましかもだけど、それでもひでぇぇぇぇ!!」
「『マッドハンマー』!!」
水と土が合わさってできた泥に、木が持ち手となって、ぶん回される大きなハンマーが、あちこちに叩きつけられる。
ドッゴン!バッゴン!!ズッゴォォォン!!
「ぎやぁぁぁぁぁ!!」
「さっきの泥の腕の方がましだろぉぉぉぉ!!」
「これ一番ダメな奴だぁぁぁぁあ!!」
決闘を挑んできた者たちは、ルースが次々と繰り出す魔法によって翻弄され、薙ぎ払われ、叩き伏せられ、何かに目覚め、吹き飛ばされ、茹でられるなどの阿鼻叫喚な状態となっていた。
『うわぁ、ものすごーいことになっーているわね』
『【さっきから感想を述べてるやつがおらぬか?】』
実況席にてタキたちが色々と言っている中、どんどん脱落者が出ていった。
それでも根性でルースに攻撃しようとする者たちがいるが、接近する前にやられたり、ルースの方から接近してきて蹴り飛ばされるなど、もはや決闘というよりも蹂躙劇が引き起こされていた。
中には、代理人としてやってきたにも関わらず、戦意喪失して自ら逃げたり、こっそり禁止されているズルな行為を行おうとして、それをする前に素早くやられるなど、もはや決闘となっているのが疑わしい状態である。
『おおっと!!どうやらほとんどの参加者たちが撃沈したようだぜベイベー!!』
『【あ、こやついつの間にか、ちゃっかり実況席に逃げてきているのじゃ】』
『ルースのほ-うは一応そ-れなりに配慮して、範囲を決闘場の舞台の上の-みで暴れているよーうだけれどね…‥‥近く-で見たら逃げた-くなるのも無理はな-いわね』
いつのまにか審判も兼ねているはずのエルダンベーラが実況席にいたので、タキとバルション学園長は呆れた声を出す。
とはいえ、今の舞台上に立っていれば巻き添えになりそうなのが目に見ているため、責めることはなかった。
「‥‥‥さてと、残るは王子様達だけか」
魔法を止め、周囲を見渡してみると、舞台の端の方に、第1王子アレス=バルモ=グレイモ、第2王子ハルバーン=バルモ=グレイモ、第3王子ギェーア=バルモ=グレイモだけしか残っていなかった。
他の決闘参加者たちは既に撃沈し、中には埋まっているのもいるのだが、戦闘不能な状態なので数に入れなくても良いだろう。
「…‥‥ふっふっふ、ふはははははは!!まさかここまで人数が減るとは思わなかったぞ!」
ルースが目を向けた瞬間、第1王子アレスが高笑いをしながらそう告げる。
「全滅に等しいのに、なぜ笑うのでしょうか?」
「ふふん!!他の奴らよりも、妹たちを守る砦の我々が残っているからこそ、まだ大丈夫なのだ!!」
ルースの問いかけに対して、第2王子のハルバーンが自信満々に答える。
ここまで大量にいた参加者たちが全滅したし、残るは王子たちだけだというのに……やけに余裕がある。
ルースは警戒しつつ、何時でも魔法を発動するか精霊状態になれるように身構えた。
「さてと、ルース=ラルフとやら!!お前がどれだけの実力を持っているのかは、しっかりと見させてもらった!!普通に相手をすれば、いくら我々妹を守るために鉄壁に慣れる様な者でもなぎ倒される未来が見えているだろう!!」
第3王子ギェーアの言葉は、普通であれば自分たちが負けると言っているようなもの。
だが、その口ぶりから察するに、何かしらの必勝手段が隠されているようにルースは感じた。
「そう、普通に相手をすれば負けるのは分かる…‥‥ならばどうするか!!」
「そもそもそんな相手に決闘を挑むにはそれなりの準備が必要であろう!!」
「ゆえに、決闘を挑む前から、そして決闘の最中でも我々はコイツを使ってお前を調査していたのだぁぁぁ!!」
ばっと王子たちが出したのは、王城についていたしゃちほこのような物体。
どこにそんなものがあったのかというと、どうやらずっと足元に置いていたらしい。
「ふははははは!!お前にはこのマジックアイテムが分からないだろう!!これは我が王家に伝わる最終兵器とも言えるマジックアイテム『しゃちほうこう』だ!」
「相手を記録するのはもちろんの事、自立して稼働し、何もかもこなすことができる!!」
「そして今!!お前のありとあらゆる動きの大まかなデータを記録し…‥‥反撃を開始する!」
そう高らかに宣言すると、王子たちはマジックアイテム「しゃちほうこう」とやらを舞台の床に置き、その背の部分をごそごそと弄ると、かちっと何かスイッチを押したような音が聞こえた。
「さぁ。行けしゃちほうこう!!」
「相手のデータ記録から、あの我が妹たちを毒牙に賭ける様な輩を問答無用で叩きのめせ!!」
「あ、流石に命を奪うのはアウトだが‥‥‥‥それでも何もできないようにしてしまえ!!」
王子たちが叫ぶ中、しゃちほうこうは不気味な音を立てはじめる。
ガゴン、ガゴン、ガッシャゴンゴン、ガガガガガ…‥‥
ばかっと真ん中から割れ、中から人の胴体のような者が出てきて、足が生え、腕が生え、膨らんで重量感を増し、どんどん姿が変わっていく。
そして、最終的にできたのは…‥‥頭に巨大なしゃちほこの頭を乗せたような人間の姿。
いや、なんかこう、ムキムキのすごい筋肉質なおっさんがしゃちほこの被り物をした姿と言えばいいだろうか。
騎士のような鎧が最小限急所などを覆っているだけであり、下手すればフェイカー製の生物兵器以上の気持ち悪さを詰めた見た目であろう。
腕が大量に生え、それぞれに剣やハンマーや弓矢などの武器を搭載し、足に至ってはとげとげしく、もはやマジックアイテムというよりも、不気味なゴーレムモドキ。
【しゃ、しゃ、しゃちほーーーーーーーーーこーーーーーーーーーーー!!】
雄たけびを上げ、ゴリラのドラミングのように腕で胸を叩き、しゃちほうこうはルースを見て構えを取る。
……変形している間に、さっさと壊せばこんなものを見なくて済んだかもしれないと、ルースは少々後悔するのであった。
まさかのマッスルしゃちほこコスプレおっさんのような見た目のマジックアイテム。
これは反則じゃないかと言いたいが、一応反則ではないらしい。
というか、こんなものがこの国の城の屋根についていたことに色々と問題があるような気がするも、とりあえず次回に続く!!
……ファ○ネルのような感じにしようと当初は思っていたが、なんかインパクトを求めたらこうなった。
魚人というか、ゴーレムというか、とりあえず言えることはこのデザインを考えたマジックアイテムの製作者を問い詰めたい。
精神的な気持ち悪さのダメージを与えるのを優先にしているのだろうか?




