193話
新モフモフ要員登場まであと少し。
残るは細かいモフモフ容姿の調整である。ただモフモフしているだけでは意味がなく、その毛並みや質感、量などを決めねば出せないからね…‥‥
勘違いによってルースを襲ってきた王子たちは現在、彼らにとって最もきついお仕置きをされていた。
王族にとってのきついお仕置きとは何か?
贅沢禁止?権力使用不可能?それとも他に何かあるのか?
いや、それらではない。
単純明快、ただ単に王子たちにとって最も酷な事は周知の事実となっているらしく、しかも三人の王子たちはそろってその酷な事が同じだったために同時に執行されて…‥‥
「えっと‥‥‥これぞ全部読めばいいんでしたわね」
「ふむふむ、『お兄様の不潔』!」
「ふぐべぇ!?」
「『お兄様の馬鹿』!!」
「ぼぶぅっ!?」
「『お兄様のマヌケ』!!」
「あ、ちょっと否定できない……」
「「『お兄様なんて大っ嫌い』!!」」
「「「ぐはぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」
ルルリアとアルミアの二人が朗読した『対王子用お仕置き文』によって、三人の王子たちは吐血し、その場に倒れた。
……シスコンらしいので、その大事な対象の妹でもある王女たちに言われたらきつい事ばかりがかかれているらしいが‥‥‥そこまできついものだったのだろうか?
何にせよ、王子たちは自らの血の海に沈みこんだのであった。…‥‥死んでいないだろうが、一国の王子たちの醜態を見てよかったのだろうか?
「‥‥‥すまないな、我が息子たちが迷惑をかけた」
「いえ、別に良いのですが‥‥‥彼らは大丈夫ですか?」
申し訳なさそうにする国王ハイドラに対して、エルは王子たちを指さして問いかけた。
王女たちを連れてきた相手に対してやらかしたことへの罰として、今回の刑がすぐさま執行されたとはいえ、ちょっと生きているのか不安になる。
あれでも一応、この国の第1~3王子だし、無くなったら色々と困るはずだからだ。
「大丈夫ですわ。お兄様方は大体3時間ほどで目を覚ますはずですわ」
「身内の見苦しいところを見せて、済まなかったですの」
ルルリアとアメリアが答えたが…‥‥なんだろう、すごい辛辣な感情を感じさせた。
「とにもかくにもだ、あの馬鹿息子たちは後で放置していた教育を倍増させるとして、改めて我が娘たちを発見し、連れて来てくれたことに感謝を示したい」
王子たちを横目で少し見て、溜息を吐きながらもハイドラ国王はそう告げた。
「今回のこの騒動は、後で正式に集結したと発表するのだが‥‥‥その場で何か褒美を与えたい。今この場で、何か願いがあればそれをある程度受理して、発表の場で授けることができるのだが…‥何かないだろうか?」
その質問に、ルースは考えた。
どうやら王女たちの保護及び輸送の褒美をくれるようだが、望みのものをある程度送ってくれるらしい。
だが、一体何が良いのかと問われてみれば‥‥‥何があるのだろうか?
と、そこでふと、ルースはある事を思いついた。
「でしたら‥‥これは少々差し出がましい事かもしれないですが、何処かゆったりと暮らせそうな場所を提供してくれないでしょうか?」
「ほぅ?土地を望むとは…‥‥しかし、何を思ってそのような事を?」
「実はですね‥‥‥」
理由を尋ねられて、ルースは国王に説明した。
以前からずっと将来について考えており、自身の力についても色々と面倒なことがあるので、できれば早々変な事に巻き込まれないようにしたいのである。
その為には、どこか適当な場所に籠っていたほうが楽であるので、できれば面倒ごとがやってこないような場所に住みたいのである。
「‥‥‥爵位を望むとか言われたら、そう高いものは自身には合いません。精々男爵程度だと身の程わきまえていますが、考えてみればそのような物をもらわずとも、国王陛下が与えてくださる土地へ移住できれば、そう簡単に手出しをするような輩も来れないかと思ったのです」
何も男爵とか、貴族の地位をもらわずとも、国王が命じた地に移住させてもらえば、そこからわざわざ連れ出して何か良からぬことをさせようとする輩をある程度ならば防げるはずだとルースは考えたのである。
「なるほど‥‥‥その力の強さは既に知っておるし、確かにそうした方が良いのかもしれないな。‥‥‥一応、念のために聞いておくが、この国に害をなすような気もないのだよな?」
「害されなければ害を与える気もないことを誓います。要は変な手出しをされなければいい話しですので…‥‥」
「ふむ、わかった。できるだけ都合の良さそうな場所を検討し、後日の発表の場で与えることをここで約束しよう。‥‥‥それとバルション学園長殿、今回の件はそなたも関わっておるのだから、そちらは何かないのか?」
「私は特になーいですかね。まぁ、しいていうのであーれば……学園の予算を1.75倍にして欲しい程度でーす」
……その微妙な倍率は何だろうか。
ハイドラ国王も、ルースもそのような同じ感想を思ったのであった。
王女たちの保護及び移送という事も終え、学園に戻るためにルースたちは退出し、その場には国王と王女二人、そしてまだ気絶して血の海に溺れている王子3人だけとなった。
「‥‥‥さてと、我が娘たちよ。今回の騒動でいろいろやらかす馬鹿が出て、彼らを罰せねばならないことになるのだが、その分政務に支障が出ることを理解しているな?」
「‥‥‥はい」
「わかっていますの」
厳しい顔になってそう告げる国王に、ルルリアとアルミアはうつむいて答えた。
自分達が家出をしただけで、今回色々な人たちの処分が決まってしまった。
まぁ、それは欲望を出したがゆえに自業自得と言うのもあるのだが‥‥‥なんであろうと、彼女達が引き起こしてしまったことから始まるので、責任がないわけではないのだ。
そう言うわけで、王女たちにもある程度の処分をしなければならず、自身の娘だからと言って、国王は甘く対応するつもりはなかった。
「元々の家出の理由が勉強が嫌だったからというのは調査済みだ。ゆえに、今後このような事が無いようにしばしは軽減するが‥‥‥いずれにせよ、何らかの罰を下さねば臣下に示しがつかぬ」
「どのような処分でも、お受けいたしますわ」
「わかっているの‥‥‥」
チャラい見た目とは裏腹に、威厳ある国王としての言葉に、ルルリアとアルミアはその沙汰を待つ。
「‥‥‥そうだな、王族としての暮らしをそもそもお前たちが耐え切れなかったと言うのが原因とも言うべきわけだが、その事を考えると、将来お前たちは他国の王族との政略結婚による繋がりには使えぬ。かといって、他家に渡そうにもそれではお前たちだけが不幸になる可能性も否めない」
ハイドラ国王はしばし考え、そう口に出していく。
「であれば、何が良いのか。王籍を廃嫡したところで意味はない。かと言って、独自に公爵家として立ち上げても伴侶がいなければすぐにつぶれてしまう。…‥‥となれば、適した落としどころは限られる」
国王はそう言いながら、王女たちをじっと見つめて、口を開いた。
「…‥‥今回の件は、もしかしたら良い方へつながるかもしれぬ。何しろ、ある組織と戦っており、戦力としてはこの国から手放しがたく、そしてなによりも精霊とつながっているものとお前たちは出会ったのだからな」
「‥‥‥ん?」
「‥‥へ?」
何か話の流れが重苦しいものから、面白そうなものへ変わってきた気配に、思わずルルリアとアルミアは顔を上げて国王を見た。
その顔はニヤリと笑っているが、どう見ても腹黒そうなものも含んでいた。
「‥‥‥ある公爵家からは、彼の者は娘の嫁ぎ先と考えており、ある帝国の王からも狙っているという話があった。だが、あの者の身分で考えるのであれば、得られるのはただ一人しかおらず、愛人、側室という落としどころがあったとしても、何処かで溝がうまれよう」
「ならば、その落としどころそのものを無くし、受け入れさせればいいのではなかろうか」
「‥‥‥えっと、お父様?」
「な、何を企んでいるの?」
にやりとますます腹黒い笑みを浮かべるハイドラ国王に、ルルリアとアルミアは冷や汗を流す。
なんとなく話の流れ的に分かってしまったような、それでいてとんでもない事を言いそうな気配に、彼女達は自然と後ずさりをしていた。
「であれば、望んでいないようだが…‥‥それは表向きのものとして納得させればいい。そこに、ぶち込めば済むだけであるからな」
そこまで言われて、彼女達は己の父が何を言おうとしているのか理解した。
一国の王として考え、そして導き出せた決断だが‥‥‥下手をすれば、他の臣下たちから反対されるかもしれない、大きな決断を・
「えっと、お父様の罰を受け入れると言いましたが‥‥‥」
「それって、罰になるの?」
「何を言うか?他から見れば罰に見えるだろうが。何しろ、王族が降りるのだぞ」
その言葉に、ルルリアとアルミアは確信した。
この国王もとい父、チャラい見た目をして、下半身ゆるゆる王などという呼び名もあるのだが‥‥‥その実態は子を想いつつ、恐ろしく腹黒い算段を立てる王だと。
頼りなさそうだったのに、こうして対峙をして初めて理解した、自分たちの父親の威厳溢れる姿に、彼女達はあっけに取られた。
「まぁ、そもそもの話だが…‥‥お前たちだって、別に悪くない話しだろう?」
「へ?」
「なんのことですの?」
国王のその問いかけに、彼女達は首を傾げた。
「だって、先ほどから拒絶しないばかりか、『むしろ罰になるのか?』という疑問の声で、いつの間にか心から納得していることではないだろうか?」
「「…‥‥あ!?」」
その国の言葉に、深層心理を読み取られたような気がして声を上げる王女たち。
……とにもかくにも、まだまだ問題は山積みそうであったが、ひとまずは後日にこの話を回すことになったのであった。
色々と言われている国王であったが、その実態は割と国王らしさがあった。
娘の事も考える父としての面もあってか幸せも考え、国としての最善策も考える。
能ある鷹は爪を隠すと言うが、隠し過ぎていたようであった…‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥王子たち?まだまだ出番はあるが、とりあえず搬送せねば血が足り無さそう。シスコンにはきついお仕置きがもっとああったけれども、まだ軽いやつを選択しました。
ちなみに、この王女たちに言わせた分を考えたのは、この国の宰相や財務大臣という話があるのだが‥‥‥この国大丈夫なのか?




