174話
主人公不在回。
もしくは主人公がまいた騒動の始まり回。
……アンケートの用紙が配られて2日目の夜。
その日、女子生徒用の寮の一室にて、集まっている者たちがいた。
「‥‥ルース君が将来について悩んでいる中、その将来を案ずる者たち、良く集まってくれましたわね」
「こうやって集まって話すのは、なんかドキドキするな」
―――――タマニハ良イカモネ。
【秘密の女子会のような物じゃからのぅ。‥‥‥まぁ、譲れぬものが一緒なのはどうかと思うのぅ】
【それは同意ダね】
「と言うか、密度がすごいアルな」
特別に借りた寮室であったが、そこに集まっていたのはエルゼ、レリア、バト、タキ、ヴィーラ、そして真夜中に集まるので一応教員として監視しつつ参加するミュル。
彼女達がここに集まったのは、今、アンケートでルースが悩んでいることが原因であった。
「今、彼が悩んでいるのは、将来に対しての具体的な目標の無さ。今まで結構面倒ごとがあったせいでごたごたしていた分、何になろうか、何にしようか、どうしようかと言う部分を考えるのを忘れてしまっていたのよ」
「今はフェイカ―討伐と言うのを掲げてはいるが、その後の事をルースは考えていなかったようだ」
――――――主様、忙シカッタカラネ。
【無理もないじゃろうな。落ち着いてきたところへ厄介事が舞い込み、解決してまたやってくるという繰り返しがあったからのぅ】
今の状況を確認し、互いに頷き合って確認を終える。
【‥‥‥けレども、一つだけ朗報ト言エば、彼は『一生を一人で過ごす』と言ウのがナさそうな事かな】
ヴィーラのその言葉に、その場に居た全員が同意を示した。
ルースがアンケートについて悩んでいた時にあった会話内容に、その証拠があるのだ。
―――――
『いっその事、誰かのヒモになるのはどうアルか?』
『ヒモ?…‥‥いやいやいや、流石にそれはダメだと思うんですけど』
――――――
ミュルの質問に対してのこの応答。
『流石にそれは』と言っていたが、誰かと結ばれることを望んでいたのであれば『結ばれるような相手もいない』と言うような返答があってもおかしくないはずだ。
また、さりげなくエルゼやレリアが自分たちの元へ来ないかと言った言葉に対しても、遠慮しつつ否定はしていなかった。
そこから導き出される結論は…‥‥
「ルース君は一生を独身で過ごすというような選択肢がない。つまり、誰かと結ばれる未来を無意識のうちに考えている可能性がある…‥‥ということよね」
その結論に、その場に居た全員がごくりと唾を飲み込みつつ、静寂が包み込んだ。
その反応は、皆が同意を示しているのと同意着であった。
「まぁ、どう出るかはルース君次第。将来何を目指すのかという答えは出ていない」
「けれども、確実な結論としては‥‥‥」
――――――主様ノ伴侶ニナレル可能性ハ。
【0ではない】
【そしテどウ出るカもわカらナいけれドも】
「チャンスはあるということでアル‥‥‥」
その瞬間、第3者から見れば、彼女達の間に大きな火花が飛び散ったように見えただろう。
そして、彼女達の纏う雰囲気が同種のものとなり、寮、いや、都市に起きていた者たちは例外を除き、皆寝ながらにして気絶したり、起きていても気を失ったりしたであろう。
……バルション学園長が学園に行ったアンケート調査。
それは思いもがけず、とんでもない争いを生み出す火種になってしまい、今ここに燃え上がろうとしていたのであった‥‥‥‥
「‥‥‥っ、なーんかやらーかしーているわね」
丁度その頃、学園長は自宅にてそうつぶやいた。
実は魔法で密かに寮内を監視し、そしてエルゼ達の集まりを見ていたのである。
「…‥‥都市内で気絶者が出ーるとーか、どーれだーけの威圧をあーの子たちはーだーしているのやら」
呆れたようにつぶやきつつ、学園長は面白そうなものを見つけたかのような笑みを浮かべる。
「せーっかくだーし、この事に関しーても出たほーうが面白いかーもね。どうーせ、国でも今、彼に関しーての議題があーるし、誰がなっても文句はいーえないかもしれないけれどーも‥‥‥‥」
くすくすと笑い声を漏らし、監視の魔法を終了させるバルション学園長。
「どーうせなら、せっかーくここまで育っていーるし、私も参戦さーせてもらおうかしら?」
思わずそうつぶやいた後、学園長は就寝準備に入った。
彼女のライバルは結婚してはいるが、学園長は未だに独身。
求める相手がいないからと言うのもあるが、それでもやはり独身だからこそ求めたくなるという矛盾もあるのだろう。
そこに、当てはまりそうな人物が出来て、成熟してきているのであれば…‥‥摘み取らない手はない。
反魔導書組織フェイカーの襲撃や、その他もろもろよりも恐ろしき戦いが今、この都市で行われようとしているのであった‥‥‥‥
……互いにライバルだと確認しつつ、動き始めるエルゼ達。
そして、建前は国のため、裏では自身の独身に焦りを持つ学園長も動き出す。
何と言うか、天然ジゴロが自らまいた騒動の種が、大きな騒動を生み出そうとしているのであった。
次回に続く!!
……正直言って、書いている作者としては、できれば穏便に進める予定であった。
だがしかし、なぜかそうはうまいこと行かず、ものすごく争いが起きる状態になってしまった。
収拾をつかせるためにも、主人公に決めてもらうか、生贄になってもらうしかあるまい。
公爵令嬢、戦姫、妖精姫、国滅ぼしのモンスター×2、元幹部、そして学園最強かもしれない、嫌そうであるに違いない学園長。
……どう考えても穏便にはすまないというか、激化しそう。あ、以前出ていた貴族の令嬢もちょっとはいりそうだったけど、あれはどうなのか……




