150話
雪やコンコン♪あられやコンコン♪
って唄もあるけど、現実はそんなに気軽に歌えるものではない。
この小説投稿時、大雪でヤヴァイ。なんやこの雪は‥‥‥
「なぁ、ルースよ」
「‥‥どうしたスアーン、そんな顔をして」
「お前はあれか?あれなのか?」
「アレって何だよ‥‥」
エルゼ達と収穫祭の露店巡りをしている中、偶然にも露店で休憩があったのか、出くわしたスアーンがルースへそう問いかけた。
その顔は言うなれば般若のようであり、イライラがものすごくたまっているような表情であろう。
「こちとら親戚に手伝わされ、既にヘロヘロだというのに‥‥‥‥何でお前は両手に花、ついでに上にもという状態なんだよぉぉぉぉぉ!!」
スアーンの深い深い恨みを込めたその叫びは、周囲にいる独身男性たちが思わず刻々と頷かせるものであった。
とはいえ、そう言われてもどうしろと?
「いやまぁ、エルゼ達は一緒に見回る約束もしていたからいるんだよな」
「そうよ下僕、あたしがルース君と一緒で何か悪いかしら?」
「年末の帝国の騎士たちの中で数人が叫ぶような内容だな」
―――――好キニシテイルダケダヨ?
スアーンに対して言うルースに続けてエルゼ達もそれぞれの意見を述べる。
4対1では圧倒的にスアーンの方が不利のようであった。
「ああもぅ、何でこんな奴が本当にこうなるのかね…‥‥しかも、こちらの露店は男だらけで出会いも何もない悲しいことになっているのになぁ‥‥」
はぁぁぁ、っと長い溜息をつき、がっくりとうなだれるスアーン。
どうフォローして良いのかは分からないが…‥‥少なくとも一つだけ言えることはある。
「ええと、スアーン。出会いを求めるんだったら、積極的に動けばいいんじゃないか?」
「やっているよ!!でも今までモテたことが無いんだぞ!!」
スアーンの心の叫びに、周囲の独身男性陣がうんうんと頷く。
そのままやつはがっくりとうなだれながらその場を去った。
休憩が終わるそうなので、露店へ再び戻るのだろうけれども…‥‥その叫びに共感していたらしい人たちはスアーンに向かって敬礼をしていたのであった。
まぁ、そんなどうでもいいことがあったが、ルースたちは収穫祭に出ている露店巡りを楽しんだ。
「『ゴルフィッシュすくい』か」
ぴちぴちと生きのいいゴルフィッシュと呼ばれる魚のモンスターが泳ぐ水槽を見てルースはつぶやく。
―――――――
『ゴルフィッシュ』
小さな金魚のような魚のモンスター。色とりどりでなかなか華やかだが、生だと毒を持つ。
過熱すれば毒が消えておいしくいただけるのもあって、かるく揚げたものは酒のつまみとしても人気がある。なお、身体に骨はないそうだが、きちんとした魚の動きをする。
―――――――
いわゆる金魚すくいに近いらしいが、違う点は‥‥
「ハシでつかんですくうとはこれまた面倒な‥‥‥あ、逃げた!」
「なかなか難しいわね‥‥ああもう!!つかんだのにヌルっと逃げたわよ!」
「ほっと!よっと!剣を斬る感じでやればなんとかなる!」
―――――コノ程度、楽々ダヨ。
ハシでつまんで取るのははたして「すくい」にはいるのかは疑問だが、これはこれでなかなか難易度が高い。
ビュンビュン動き回るし、取ったとしてもぬめり気がある感触で摘まみ切れなくて逃げるなど、通常の金魚すくいよりも難しい。
ルースやエルゼの場合2,3匹程度しか取れなかったが…‥‥それなりに器用なレリアや妖精時代の器用さを持ったままの妖精姫のバトたちは100匹以上捕えてしまった。
……なんだろう、この敗北感。
「よし!次だ次!!」
少々悔しく思えたので、次は違う露店で勝負を仕掛けることにルースはした。
選んだのは‥‥‥『射的』。
しかし、良く縁日とかにあるようなコルク栓をつめた空気銃とかでやるのではない。
…‥‥というか、魔法があるこの世界に銃はあまり見かけない。
その代わりとして置いてあったのが‥‥‥パチンコだ。別名スリリングショットとも言うはずである。
「狙って……良し!」
バチィンっと勢いよく放たれた球が景品に当たり、倒していく。
魔法を扱う分、こういった射的系は得意‥‥‥とルースは言いたくなったが、隣の後継を見ていえなくなった。
ズババババババババババババン!!
……水魔法を使って水の手を創り出し、あるだけのパチンコをすべて放つエルゼの姿を見たからである。
しかも全弾命中。
「ふふふ、これはなかなか面白い道具よね。なんかこう言うのが向いていたのかしら?」
「ぐっ、外れたか!!」
―――――当テタケド、カナウ気ガシナイ。
不敵な笑みを浮かべながら連射するエルゼを見て、レリアとバトはそうつぶやく。
かなうかなわない以前に魔法でズルしているようなものだけれども‥‥‥‥フェアにやったとしても勝てそうにない。
というか、連敗しているような気がする。
そもそも、勝負せずに収穫祭を楽しめなばいいな。
6店舗ほど巡ったところでそう気が付き、ルースが気持ちを切り替えようとしたその時であった。
【おやオや?なんかやッテいるね?】
「ん?」
ふと、声がかけられたのでその方向を見てみれば、そこには巨大な兎がいた。
「あ、たしかこの間の…‥‥タキと同じモンスターの人でしたっけ?」
国を滅ぼせるモンスターらしいが、モフモフもこもこした見た目からあまり想像できない、兎のようなモンスターがそこにいた。
観光目的で都市に来たようだが、絶賛満喫中のようである。
タキとは違って人型にならないようで、兎の姿のままだが…‥‥露店で売っている食べ物を括り付け、お面や露店での戦利品などを大量に持っていることからかなり楽しんでいるようだ。
「えっと、名前は……」
【あア、あたいの名はそウ言えば名乗ッテなかッタな。あたいは『ヴィーラ』と言ウ名があるンだ】
そう兎ことヴィーラは名乗った。
【しかし、この都市の収穫祭ハ面白いナ。趣味で各地ヲ回ったリ、穴掘ったリしているが、ここもなかなか居心地ガ良い】
「趣味で各地を回って‥‥‥ん?」
穴掘っての部分にはツッコミを入れるべきだろうか。
いやまぁ、その背中に大きなシャベルを持っているから説得力はあるけれども、各地に穴を掘るって何だろう。
「穴を掘るって、何か目的があるのかしら?」
ルースと同じ疑問を抱いたらしいエルゼが、ヴィーラに訪ねる。
【うん、あたいの目的は観光ガ主にあルが、別の目的があって掘ってイるんだよ】
「というと、どのような目的で?」
【‥‥‥秘密だ】
問いかけてみたが、笑ってごまかされた。
何だろう、このいかにも聞いたらやばそうな予感は。
知ってしまえば最後、絶対に面倒ごとに巻き込まれると、これまで数々の面倒ごとに巻き込まれたルースの勘が、そう告げた。
これ以上の踏み込みは危険だと、ルースは判断し、話題を切り替える。
「えっと、まぁその話は置いておくとして‥‥‥そうだ、ヴィーラさん、露店をめぐるなら一緒に廻りませんかね?」
【オ?なら一緒に行動するカ】
切り替えの話題として、ルースがとったのは共に露店をめぐる事。
その事に関し、ヴィーラは乗ってくれたようで、共に露店をめぐることになった。
……だが、ルースは気が付かなかった。
その言葉が出たときに、ヴィーラの目にほんの一瞬だけ怪しい光が差したことを。
そして、エルゼ達がそれに気が付き、ルースに気が付かれないように瞬時に警戒をし始めたことを。
知らぬはルースだけで、瞬時に変わったその空気に気が付くのは、もう少し後であった‥‥‥‥
ヴィーラと名前が判明したところで、ルースはその兎も加えて収穫祭をめぐることを楽しむ。
だが、彼は気が付かなかった。
殺気とかなら割と気が付くのだが、それとは異なる類には鈍感であったがゆえに……
次回に続く!!
草食獣に見えるけど、一応モンスターだから肉食獣であってもおかしくなかったりする。
ヴィーラって名前にしたのは、なんか響きが良かっただけ…‥意味も考えたものにしたかったけど、しっくり来たからね。




