136話
建築?できるかなぁ?
『精霊化状態になって、空から見てみたが…‥‥やっぱり視点を物理的に考えてもいい案は出ないな』
大空に浮かびながら、ルースは模擬戦用の舞台建設予定地の全貌を確認しつつ、そうつぶやいた。
昨日、ミュルとの模擬戦でやらかした学園内にできた大穴。
上から見ても分かる通り、底が見えないほど深く出来てしまった穴を綺麗に整えるには莫大な費用が掛かるそうで、その上申請する書類手続きなども面倒なレベルになるらしく、珍しくバルション学園長がキレてしまったのだ。
そういうわけで、その穴がふさがるまでの間に、せめて護身術の授業やその他魔法に関しての授業をまともに行えるような舞台の建設を強制的に命じられて、留年もかかった状態にさせられたのである。
とはいえ、そんなところに素人のルースをやらせるのはどうかと思ったが‥‥‥‥これも一つの罰であろう。
何にせよ、給料カットを人質に取られたミュルも加わり、ついでに手伝ってくれるとレリアとエルゼが申し出てくれたので、何とか出来るかもしれないと思えたが…‥‥
『学園長の攻撃にも耐えうるものってどうしろと言うんだよ……』
ぷかぷかと上空に浮かびながら、ルースは首をひねった。
その注文、どう考えたって不可能に近い。
あのバルション学園長の攻撃を耐えられるようにするには‥‥‥‥少なくともそんじょそこいらで手に入るような材料では意味がないだろう。
なお、精霊化状態になって宙を浮かんで全あ値を見ているわけだが、別にやる必要はなかったりする。気分転換のためにやっただけである。
「よっと、とりあえずデザインだけでもなんとかなったかー?」
精霊化状態を解除し、地上に降り立ってルースはエルゼ達に尋ねた。
組み立てとかも必要だが、まずは全体的なデザインも必要ということで、頼んだが…‥‥
「うーん、ここはもうちょっとこのサイズにして……」
「いや、これだと全体的な強度が足りないな。足場が崩れる危険性があるだろう」
「いやいやいや、ここはもう少し控えめに見せることも考えてでアルな」
「…‥‥何、この一体感?」
デザイン関係、その事がどうも衣服に近いこだわりを刺激したようで、エルゼ達はああでもない、こうでもないと真剣に話していた。
というか、ミュルが加わっているのにまったく邪険にせず、私情を挟まずに真剣に議論しているとはなぁ。
「そして何だろうか、この疎外感は」
どことなく仲間外れにされたようで、ルースは疎外感を覚えた。
考えてみれば、いつもエルゼやバト、レリアたちが周囲にいたものだカラ、こうやって見向きもされずに疎外感を感じるのは新鮮さがある。
……寂しくも思う。仲間外れってこんな気分なのだろうか。
「『召喚タ……』いや、止めておくか」
せめて話し相手が欲しいと思い、タキを召喚しようと考えたが‥‥‥ルースはその手を止めた。
理由は簡単、女子の比率が高くなってしまうからである。
どこかで大きなくしゃみが聞けたような気もしなくはないが、ルースはただ女性陣が舞台の設計を描くのを待機するだけであった‥‥‥‥。
ちなみに、バトは現在ポケットの中で熟睡中。最近よく寝ているけど、だんだん時間も回数も増えてきているような気がするが気のせいだろうか?
それから1時間後、ようやく設計図が完成したようである。
「出来たわー!」
「よし!これなら強度的にも完全無欠なはずだ!」
「組み立てやすさも重視してあるのでアル!」
ぼーっとしていたルースは彼女達の声を聴き、はっと意識を戻す。
「できたのか?」
「ええ、これぞ完璧なものになるはずよ!」
自信満々にエルゼがそう言い、その設計図を見せた。
……建築関係は素人なルースだが、そこまで知識が浅いわけでもない。
その為、設計図を見てその内容からどれだけよく考えられているのか理解した。
「‥‥‥でも、完璧というか、やり過ぎなような気が」
学園長の攻撃に耐えうるための防壁を1000枚分圧縮して設置するというのはどうなのだろうか?
というか、あの人の攻撃ってそれだけ固めないと防げないのか。
何にせよ、設計図が出来たらそれに沿っての建設する必要がある。
とはいえ、ただの材料でやったり、普通の建築方法だと時間がかかる。
ゆえに、そこまで万能ではないが、材料を魔法で作り、あとはガンガン組み立てればいいだろうということになった。
「木材、鉄材などか‥‥‥木や土などの組み合わせで生み出せるかな?」
とりあえずやってみよう。
「『魔導書顕現』からの、『メタルロック』!」
魔導書を顕現させ、ルースは連続で魔法を使用し始めた。
土から鉱石を抽出し、火による精錬でいくつも分けて水で冷やして固め、インゴット状に生み出す『メタルロック』。
頑丈な大木を創り出すために、土に栄養を与え、水と光で促進させて木を育て上げる『ウッドグロウ』。
石や土などを水で撹拌し、コンクリートもどきを精製し、火で固め上げる『コンクホット』。
学園長の魔法攻撃などに耐えられるように、様々な属性を持つ魔法そのものを練り込んだガラスのような防壁『マジックブロック』。
その他もろもろ、とりあえず建材を生みだせそうな魔法を使用し、それらを元に、あとは組み立て上げるだけであった。
「ほっと、よっと、この程度なら運ぶのは軽いでアル」
重い建材を楽々と肩に担いだり、まとめて持ち上げたりしてミュルが運び、
「水で流して、きちんと水平になっているのか確かめるわね」
できるだけズレがでないように、エルゼが水魔法で水を流して水平になっているか確認し、
「『ジェットラッシュ』!」
ジュゥゥゥゥゥ!!っと、金属部分の溶接を火の魔法で行うレリア。
ルースが建材を生み出し、皆で組み立てていき‥‥‥‥それから時間をかけて夕暮頃。
「「「「完成!!」」」」
ようやくの完成と同時に、ルースたちは思わず皆でハイタッチした。
「苦労して作り上げた感動があるな!」
「皆で協力して作り上げた達成感が心地良いわね」
「うむ、なかなかいい出来になった!」
「これなら学園長の注文通りにもなっているはずでアル!」
ここまで組み立て上げるのに、途中で設計ミスが見つかったり、強度不足だったので継ぎ足ししたり、本当に耐えうるのか実験したりなどの苦労があったが、それらを乗り超えての完成は感動を感じさせた。
この時、もう過去にガチで戦ったなどの溝はなく、全員に団結心が産まれ、わだかまりが無くなっていたのであった。
……あ、もしかして学園長、これも企んでいたのだろうか?
互いに何処かぎこちないというか、ミュルとの戦闘時の事もあったから溝を払いにくかった関係を、埋め合わせようとしてくれたのだろうか。
何にせよ、無事に舞台は完成し、模擬戦はこれ以降その場で行われるようになったのであった…‥‥
……が、3日後。
今度はルースがうっかり魔法を派手に行い、修復作業に追われたのはまた別の話である。
「今度は手伝いませんよ」
「自業自得だからな」
「こればかりはフォローできないアル」
「見捨てられた!?」
……主人公、自らやらかすオチであった。
まぁなんにせよ、これでわだかまりは‥‥‥あ、タキだけ参加してないか。
とりあえず次回に続く!
……そろそろまた騒動ドーン!!とやるぞ。




