129話
雪のせいで通販したものが届く予定だったのに、届かない。
悲しいなぁ‥‥‥急いでいないとはいえ、雪害って辛いものである。
交通機関も被害あるしね。
―――――ぴちょん
「うっ‥‥‥」
何かが頬に当たり、ルースが目を覚ますと辺りは暗かった。
地面が何やら脈動を打っており、物凄くぬめぬめして生温かく、物凄く不快になる。
辺りを見渡すが、暗いせいでよく見えなかった。
「‥‥‥そっか、そういえば俺たちは」
ふと思い出したのが、砂浜での出来事だ。
沖合から舟が来て、それを追うようにやってきた大きな海のモンスター。
詳細は不明だが、とにもかくにもそのモンスターの吸い込みによって、飲み込まれたことをルースは思い出す。
そしてそれと同時に、エルゼにレリア、バト、タキ、あとその他舟にいたらしい3人も一緒に飲み込まれていたことに気が付く。
「おーい、エルゼ!レリア!バト!タキ!!」
見にくいので声を上げてみたが返事はない。
と言うか、辺りが暗いせいで全く見えない。
「まずはこの暗さをどうにかしないとだめか‥‥『魔導書顕現』!!ついでに『フレイムライト』!」
魔導書を顕現させ、炎と光の複合魔法である明かりを灯し、辺りを照らした。
小さな炎が光魔法でよりその明かりを増幅させ、薄く広がったことにより、広範囲をより照らしていく。
「うわっ、気持ち悪っ!!」
照らしたのを後悔した。
分かっていたが、ここはあのモンスターの腹の中。
つまり、その内臓にいるわけであり、周囲を照らせば生きて脈を打っている部分がまともに見えてしまったのである。
ゲームとかで体内ステージとかがあるが、それの超・リアルバージョン、いや現実であった。
……正直言って、トラウマものである。
ドクン、ドクンと微弱な振動を見せ、生きているのが分かるけど気持ち悪すぎる。
何にせよ、明かりを灯したことで新たにわかったが、ここはかなり広い。
壁になっている部分には、無数の別の器官へつながる穴が開いているようで、気持ち悪さに拍車をかけていた。
……あと、海の中を漂っているのか少々揺れており、ちょっと酔う。
「さてと、この辺りにエルゼたちは‥‥‥‥いないか」
吸い込まれ、飲み込まれた際にどうもルース一人だけはぐれてしまったようだ。
辺りを照らしてもいないので、壁にある無数の器官のどこかへ皆行ってしまったのだろう。
とはいえ、いちいち一つずつ探す余裕はない。
あのモンスターの腹の中ということは、胃のような部分があって、消化される可能性があるのだ。
…‥‥一度、フェイカー製の怪物に食われて一部を溶かされた身からすればトラウマである。
しかし、広いのであれば探すためにはどうしても時間が必要で‥‥‥何かいい手はないか。
「あ、そうじゃん!タキがいたじゃん!」
召喚した状態で、彼女もいっしょに飲み込まれていたはずである。
けれども、ここに飲み込まれた時にルースは気絶し、彼女が送還されている可能性があるのだ。
得体のしれないモンスターの体内ゆえに、そう都合よくいかないかもしれないが、うまいこといけばタキを召喚可能かもしれない。
「『召喚タキ』!」
その可能性に賭けて、ルースはタキの召喚を行う。
すると、うまいこと言ったようで、召喚が出来た。
ドロン!
【召喚主殿無事なのかなのじゃぁぁぁ!!】
召喚されると同時に、すばやくタキが飛びついてきた。
狐の状態ではなく、人型で水着を着た状態の‥‥‥って!?
「ぐむっ!?」
【ああよかった!生きているようでよかったのじゃよ!!召喚主殿の気絶の際に送還を抵抗できたりするのじゃが、今回ばかりは特殊な状況故にうまいこと行かず、送還されてしまったのじゃよ!!でもこうやって召喚されたから、召喚主殿の無事を知れて本当によかったのじゃぁぁあぁぁ!!】
「もがぁぁ!!もぐかぁぁぁ!!」
【おうおう、元気いっぱいに‥‥‥って、ああやっちまったのじゃよ!?】
ベしべしと叩き、ようやくタキは気が付いて解放してくれた。
……狐状態ならまだしも、人型の状態ではレリア並みに胸部があるからね。危うく死にかけた。消化云々以前に胸部に死の恐怖を感じた。
何にせよ、タキを召喚できたのは行幸である。
「タキ、どうもモンスターの中に飲み込まれて皆とはぐれてしまったようなんだ。匂いを探して何とか合流できないかな?」
【お安い御用じゃよ!‥‥‥と言いたいのじゃが、少々無理じゃ】
狐と言えばイヌ科、イヌ科と言えば嗅覚が鋭いはずであり、匂いですぐに見なの位置が分かるかもしれないと思い、ルースが頼むと、タキは自信満々に胸を張ったのだが‥‥‥すぐにズンッと落ち込んだ。
「え?どういうことだ?」
【ここ、臭いのじゃ。臭すぎて匂いを追えないのじゃよ・・・・・】
「‥‥‥言われてみれば臭っ!?」
人は気が付ない時は気が付かない、気が付くときは気が付くものであり、タキの指摘によってルースは今、この場所の猛烈な悪臭を感じた。
言われなければ気が付かなかったのに、意識してしまえばかなり臭い。
例えで言うなれば……いや、止めておこう。言い切れるものではない。
「く、『クリーンワールド』!」
光と風、火、水の4属性の複合魔法を発動させた。
周囲一帯を殺菌、消臭、洗浄、空気の入れ替えなど、浄化を徹底的に行い、この臭さから逃れるための魔法である。どんなごみ屋敷だろうと、一瞬で綺麗な屋敷に変える自信もある。
その効果はてきめんだったのか、赤黒かった周囲の内臓壁が見る見るうちに明るいピンク色となって、綺麗に浄化されていった。
数分後、周囲からは汚いところはなくなった。
臭いも清浄になり、木があればマイナスイオンを感じることができたであろう。
…‥‥と言うか、それだけこのモンスターの体内が汚れていたのかもしれない。体にも念のために同様の魔法をかけておく必要があるかもしれない。
とにもかくにも、これで激臭問題が‥‥‥
【あの、召喚主殿。これじゃと匂いが無くなって追えなくなったのじゃが】
「あ、しまった」
今度は匂いが無くなってしまうという問題が発生してしまった。
タキを召喚した意味があったかな?いや、万が一の場合に備えて一緒にいてくれた方が心強い。
と言うか、ここに飲み込まれたとき全員水着だったから、下手すりゃ脱げている可能性もあるので、万が一の衣服輸送要員としても大事であろう。
とにもかくにも、出来る限り早く皆と合流したい。
だが、どこにいるのかまでは良く分からない」
「消化液が出てくる可能性もあるし、何とかしたいが‥‥‥」
【ううむ、手あたり次第では時間がかかるしのぅ、声を出して反応があればいいんじゃが】
「叫んで返答がないってことは気絶している可能性があるしな‥‥‥待てよ?『声』か」
ふと、ある案をルースは閃いた。
「声とくれば音、音なら反射して戻って来るし、それを探知できる魔法があればいいじゃん」
要はコウモリと同じである。
コウモリは超音波を放ち、それの反響を聞くことで周囲の状況を知っていると聞いたことがある。
ならば、それと似たような事を行えば、どこに誰がいるのか等も分かるのではないだろうか。
…‥‥他に例えるならソナーとかあるだろうけどね。
とはいえ、そんな都合のいい魔法などそんな簡単にわかるものではない…‥‥が、それはあくまで単体の魔法に限った話。
複合魔法であれば、似たような物を人為的に可能にさせるはずだ。
「えっと、音とくれば空気の振動があるだろうし、適当に出した音を拾うには人の耳では辛いから、それの代用は‥‥‥闇とかでいけるか?」
考え、複合し、出来た魔法は…‥‥単純明快に『ソナー』と言う魔法名になった。
音を適当に複合した土や水の魔法によって発生させ、反響してきた音を闇で吸収し、光でその探知場所を浮かび上がらせる。
「さてと、うまいこと行ってくれよ‥‥‥『ソナー』」
魔法を発動させると‥‥‥‥
ズボォォォォォォン!
…‥‥気が抜けるような、それでいて大きな音が発生した。
水と土で出来た泥が破裂して、その音が周囲一帯に響き渡る。
ずっしりとした重みのある音ゆえに振動がじんわりと伝わり、音を闇で感知し、光でその居場所を映し出した。
ピコン!
「お、映った!」
周辺一帯の地形が光の線で表され、中に何があるのかまで、その大体の形が上に映し出される。
そして、それを頼りに確認してみた結果…‥‥どうやら全員、同じ器官の中にいるようだ。
あの追われていた舩に乗っていた3人組の者らしき反応もあるし、全員動いていないところを見ると気絶しているのだろう。
「タキ、この反応場所まで乗せてくれ!思ったよりも遠い位置にいるようだしな!」
【了解なのじゃよ!】
ドロンと大きな九尾の狐の姿に戻ったタキの背中にルースは乗り込み、皆がいる位置へ移動する。
…‥‥少々気になる反応も他にあったのだが、それは後回しにするのであった。
なんとかエルゼ達の位置を把握し向かうルースたち。
この気色悪い怪物の体内から抜け出すためにも、皆の協力は不可欠である。
……ところで、タキが九尾の狐の姿になったにもかかわらず、許容できている怪物の大きさが怖いのだが、気が付いているのだろうか?
次回に続く!
タキって一応そこそこ大きいのに、平然と体内に入れることができるモンスターってどれだけのサイズだろうか。
もしかして、水上にあった部分は氷山の一角とか?考えれば考えるだけかなりのサイズなのが予想できてしまう。
……ついでに、作中に言ったゲームは某緑の剣士のものをモデルにしているけど(あれってタイトル名は主人公じゃないんだよなぁ‥)、実は作者はプレイしたことがなかったりする。実況動画とかで見ているんだけどね‥‥‥やってみたいけど、基本ごり押しの作者には苦手。




