115話
ルースの祖父登場。
まぁ、精霊王と言っても…‥‥色々あるんだよなぁ。
‥‥‥精霊王。
それは、自然そのものが形を成したものだと言われ、そしてすべての精霊たちを統括する、自然の力そのものだとも言われる存在。
その存在があること自体は確認されてはいるのだが、その姿を見ることはほとんどない。
なぜなら精霊自体は自然界に溶け込んで姿が見えなかったり、もしくは人に偽装して過ごしているなどと言われており、明確な判別が出来ないことの方が多いのだ。
その為、もし精霊に出会う事が出来れば幸運の証とも言われ、滅多に出会えないその存在に敬意を示し、祀っている地域や国もあるらしい。
そして今、その精霊王がとある村に訪れていた。
大きな騒ぎにならないように、村の人達はあらかじめ眠らされていたりして意識を失っており、関係者以外は入れぬように制限されているのだ。
そんな村に精霊王が訪れたのは、久し振りに彼の娘であった元精霊の妖精と、そんな彼にとっての孫の一大事だと言うことで、急きょ駆けつけてきたらしい。
その精霊王の容姿は、威厳溢れる様ないかつい顔をしており、厳格でしっかりとした服装をしていた。
『…‥‥これが、孫か』
「はい、今はちょっと問題があって起きれない状態で・・・・・」
『よし、持って帰ろう。今すぐここから儂の家へ持って帰ろう』
「話を聞いてくださいよ精霊王!!」
ベッドで横たわるルースを見て、そう言いだした精霊王に対して、アバウトはどこからか持ってきたハリセンではたきまくった。
『なんじゃよ我が娘、いや、元娘のアバウトよ。儂の孫ならば儂がどう扱ってもええじゃろうが?』
「親馬鹿から爺馬鹿への変化は予想できていましたけど、話しをまともに聞きなさい父、いえ元父の精霊王!!」
反論した精霊王に対して、アバウトは再び今度はトゲ付きのハリセンで精霊王を叩く。
そのやり取りを見て、エルゼ達はあっけに取られていた。
「あ、あれが精霊王‥‥‥なのよね?」
「い、威厳のかけらもないというか、ただの孫好きな爺馬鹿にしか見えない」
【じゃが、感じ取れる力は大きいのじゃが…‥‥なんじゃろうな、この感じ】
―――――憧レ、評価マッハデ低落中。
その様子を見て、バトが何やら精霊たちのあこがれであった精霊王に対するイメージが崩れたようで、膝をついていたのであった。
とにもかくにも、ルースの今の状態‥‥‥昏睡状態から目覚めさせるために手を貸してもらおうと来てもらったのが精霊王なのだが、容姿でのいかつい厳格そうな第一印象から、速攻でただの孫好きな爺馬鹿へと皆の評価は変わったのであった。
『ごほん、とりあえずかいつまんで要約すれば…‥‥孫、封印解除、供給より消費が上回る、起きれない、なら封印しよう、ということで合っているな?』
「大体合っていますが‥‥‥単純にし過ぎです」
精霊王にカクカクシカジカとここまでの状況をエルゼたちは伝え、内容は理解してもらえたようだが‥‥‥どうもこの爺さん、もとい精霊王はどこか適当なところが見受けられる。
自由奔放というべきか、本能のまま、自分のやりたいように生きる…‥‥そうとしか、皆は感じられなかった。
『ふむ、確かに見たところ精霊の力を生み出すよりも、自身を維持するだけの消費の割合が高いな。とはいえ、無駄が多すぎるのが原因のようだし、これはコントロールするすべを得れば封印を施さずとも、このままで体を保てるはずじゃな』
「え?どういうことですか?」
精霊王のその診察した言葉に、皆が疑問の声を上げた。
『例えるならば‥‥‥そうじゃな、今のこの孫の状態は、いわば穴の開いた風呂桶で、いくら力を注ごうとも、それが穴から出て行ってしまい満タンにはならん。だがしかし、成長し、自身をコントロールできるようになれば穴は小さくなって、気絶することはなくなるじゃろう。人間が混じっているゆえに、完全いとはいかぬがな』
要は、今回のルースの昏睡状態は、まだルース自身が未熟なのと、半分人間が入っていることが原因らしい。
ゆえに、今後精進すれば精霊の力を使いこなせる可能性があり、今回のような昏睡状態にはならないだろうと精霊王は言った。
‥‥‥まぁ、まだ未熟なので、とりあえずまだまだ精進させなければいけないので、この状態から目を覚まさせるために術を施さなければいけない必要性はある。
『精霊の部分を封じつつ、それでいて人間の状態でも精進可能な術を施すには‥‥‥‥ちょっと面倒なものが必要じゃが、これも孫のためじゃ。一肌脱いで置かんとな』
そう言いながら、精霊王はルースに手をかざした。
『‥‥‥‥あふれ出し、消費されている部分の力の流れを一時的に閉じ、ここから徐々に慣れるようにすれば問題ないはずじゃな』
精霊王のかざした手が輝き出し、ルースにその光が注がれていく。
そして、徐々に何やら鎖のようなものがエルゼ達にはっきりと見え始めた。
その鎖はルースの身体へ巻き付くと、浸透するかのようにその姿を消した。
『‥‥‥よし、これで大体の処置は完了じゃな。後は自然に蓄えられて目覚めるのを待つだけでいいじゃろう』
「これで、目覚めるのかしら‥‥‥」
「精霊王のいうことだし、大丈夫じゃないかな?」
とりあえず、今回は一旦その消費が激しい部分を閉じさせ、力を蓄えさせて貯まれば目覚めるようにしつつ、精霊の力も封じるように、精霊王はルースにそう施したらしい。
『じゃが、ここで注意しておくべきことがある』
「というと?」
『儂らの…‥‥精霊の力は、いわば自然に干渉し、その力を借りることができるものじゃ。でも、感情に左右される場合もあるからのぅ‥‥‥孫が激怒すれば火山が噴火する可能性もあるから、できるだけそのあたりの感情については激しく変動させぬようにしてほしいのじゃ。…‥‥できれば、このまま孫をお持ち帰りしたいがの』
「それはやめてください精霊王!」
理由をつけてルースを持って帰ろうとする精霊王に対して、エルゼ達は慌てて防いだ。
大丈夫なのかこの精霊王。
とにもかくにも、これであとは時間が経ちさえすればルースは目覚めることができるらしい。
孫を連れて帰ろうとしたが叶わず、ややしょんぼりとした様子で精霊王は帰っていくのであった‥‥‥‥
「流石に、元父でも子供を連れていかれるのはよしてほしいわね」
「というか、あれが精霊王なのね。…‥‥ルース君の祖父としては、納得したような気がしますわね」
「威厳がない爺馬鹿だったようだけど、実力とかは確かに本物のようだったしな」
【なんとなく我と話し方が被ってたようにも思えるのじゃが…‥‥変えようかのぅ?】
――――――アレガ、妖精ノ憧レノ対象‥‥‥スゴイケド、チョット幻滅。
約一名、理想と現実の差にがっかりしてはいたが、これで解決するらしい。
「ところで、ルースが目覚めるまでみんなうちに泊まるのかしら?」
「え?…‥‥そのつもりですが」
「んー、ちょっと客室の大きさ的に、実は一人だけ息子と同じ部屋に泊まってほしいのだけれども…‥‥どうかしらね?」
「「【-----!?】」」
アバウトのその言葉に、エルゼ達は目を光らせる。
考えてみれば、今いる家は元々アバウトがルースの子育てのために使っている家であり、親子二人でちょうどいいサイズ、つまり客が来るのは余り想定されていない小さい家でもあるのだ。
二人ぐらいであれば客室があるのでそちらに泊まってもらう事が出来るのだが、チョットそれで狭く感じるかもしれないので、できればもう一人はルースの方に言ってもらいたい。
内心、実は息子の周囲の恋模様を面白がっているアバウトであったが、とにもかくにも何やら乙女の戦いが起きようとしているのであった…‥‥‥
精霊王が施した処置によって、ルースは目覚めることができるようである。
だがしかし、アバウトが面白がっているというか、昼ドラ感覚というべきか‥‥‥
宿泊の部屋割りでの争いが、今まさに起きようとしていた。
次回に続く!
‥‥‥というか、実は客室に3人泊っても大丈夫だったりする。そもそも、この中でもバトが一番体が小さくて場所を取らないから、詰めて寝れば問題ないんだよね。
となると、アバウトさん確信犯か?




