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第14話 棋士は回復魔法が使える



 レベル2になった『大樹魔法』。その能力は、『治癒の花園』で圭を中心に半径1メートルを少しずつ回復していく花園を設置することが出来る。効果時間は30秒なので、治せるのは軽傷だけで重傷は難しいようだ。


「『治癒の花園』…………お! 薄い切り傷が消えた! それなりは使えるみたいだな」


 スモールクロウに斬られた傷は治り、便利でシンプルな魔法だと思った。自分自身を中心と教えているから離れた場所には発動出来ないが、ソロなので問題はなかった。


(ブラッククロウは倒しにくい分、経験値が多かったのかな?)


 レベル2になるのが早いなと感覚で感じていたが、ブラッククロウが予想していたより経験値が多かったと判断した。


(後はロックゴーレムだが、見えている核を狙えばすぐ終わりそうだよな。ロックゴーレムも経験値が多かったら良いんだが)


 今回は地下10階にいる階層ボスを倒す事が目的だが、出来れば『将の棋士』で使える効果を増やしたいと思っている。香車の次は桂馬になるだろうが、どんな効果になるか想像出来ないから楽しみでもある。




「お、いたか。核は……あそこか」

「ゴォォォ!!」


 ロックゴーレムを見付け、核の場所を確認すると心臓と同じ胸辺りに光っている核があった。


「核の硬さはどうなんだろ? 『香車の激進』!」

「ゴォォォッ!!」

「弾かれた!? ……流石に舐めすぎたか」


 まだ距離があるのに真正面から斬撃を飛ばしていれば、弾かれるだろう。ゴーレムの癖に反応が良いなと思いつつ、今度は近付いて攻撃をする。


「ゴォォォァァ!!」


 両手で振り下ろしてくるが、他の魔物と比べたら遅いので余裕を持って避けれる。


「ここ!! 『香車の激進』!」


 今度は懐へ入って、核を狙ったが…………


「小さな傷は付けられたが、完全に破壊出来なかったか」

「ゴォォォ!!」

「な、なんだ?」


 ロックゴーレムが怒ったのか上半身を回転しながら突っ込んできた。


(これじゃ、狙えないな! 無理はしないでおこう)


 回転したままじゃ、核を狙えないので回転が止まるまで距離を取る。ロックゴーレムは10メートル程は歩いたら回転がゆっくりになり、元のロックゴーレムに戻った。


(あ、成る程。これを何回か繰り返されると他の魔物ともかち合ってしまう可能性があるか)


 他の探索者であっても、上半身を回転するモードに入ったら誰でも落ち着くまで下がるしかないだろう。何回かやられたら、後ろからブラッククロウや別のロックゴーレムに挟み打ちされてしまう。


「こいつは短期で決着をしないと駄目だな」

「ゴァォォォ!!」

「石を生み出して投げてくるか…………だが! 回転よりはマシだ!」


 篭手を盾にしながら前へ進んでいく。斬撃を飛ばすよりも高い威力をぶち込めれば、核が壊れてロックゴーレムは倒れるだろう。


「ここ……!! オラッ!!」


 変異種のトレントに使ったように拡散ではなく、集中された衝撃波を込めて、核へ向けて殴った。これは圭が使える技の中では1番威力が高い。喰らったロックゴーレムはーーーー




 パキッ!!




 変異種のトレントみたいに厚い皮に包まれている訳でもなく、弱点がまる見えなロックゴーレムには耐えれる訳でもなかった。

 目から光が消え去り、倒れる前に煙へなっていった。


「最初からこうすれば良かったな」


 ロックゴーレムも無事に倒せた。ロックゴーレムのドロップアイテムはハズレの岩塊と当たりの魔石があるが、眼の前にあるのは魔石だった。


「うむ、トレントのと大きさが変わらないな」


 トレントのと変わらない魔石なら金稼ぎにはならなそうだ。まぁいいと、次の階層を目指すことにした。






 地下10階へ向かう階段に着き、降りようとした時にーーーー


「む?」


 後ろから大きな音が響き渡り、何か崩れたような音だった。ロックゴーレムが崩れ落ちたとしてもこんなに大きな音にはならない筈だ。


(何処か天井が崩れたとか? まさか、ロックゴーレムの変異種がいて、誰かに倒されたとか…………?)


 もし、前半なら崩れた場所に誰かがいなければ良いが、後半は危険な変異種が倒されて、頼もしい探索者がいることになる。


(見に行くべきか? …………いや、天井が崩れる訳がないか。ダンジョンだもんな)


 圭の想像していた通りに、ダンジョンは壁や天井は必ず壊れることもない。前にSランクの探索者が壁を壊そうと試したことがあったが、小さな傷が出来るだけですぐに塞がったと聞いている。


(つまり、魔物を倒した音なら気にしなくてもいいか)


 圭は気にしないことにして、地下10階へ降りたのだったーーーー






次は明日の7時に投稿します!

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