私と不良(1)
彼女と彼が帰ってきた。
何を話してたの?
そう言いたいものの口に出来ない自分がいる。
彼女が見ず知らずの人と話すことを心の中で実は拒絶してることを知っているから多分かなり大切な話だったのだと思う。
そしてもしハルちゃんに話すなと言われていたならば庄吾は絶対に話さない。
約束はなんとしてでも守る彼だから。
特に花の水やりを頼んだときとか・・・・
半分いたずらでやったのにまさか本当にやるとは思わなかったな。
「澪」
言いづらさそうに言う彼の様子から何か話があるのだと感じる。
ということはハルちゃんは庄吾に説得してたのか。
「どうしたの?」
「あのさ・・・話あるから二人きりで話したい」
「うん、分かった」
そうだね、これから先庄吾の幸せを見つけてほしい。
ハルちゃんも同じだったね。
同じのようで同じじゃない。似てるようで似てない。
それがワタシたちの宿命のようなもの。
好きだったよ。
大丈夫、あと2年は幸せの夢は見られるんだもの。
私は幸せだわ。
「あの・・・さ」
目が泳いでいてずっと下向いている。
現在人払いをして部屋の一角の縁側にいる。
机の前で向かい合って話すよりも縁側で隣り合っている方が話しやすいし、やっぱり今は庄吾の顔を見るのがつらい。
分かってる、次に出る言葉が私の心に冷たい氷の釘をさすことぐらい。
だからこうやって準備をしているのだ。傷を浅くするために。
「俺、澪のことが好きだよ」
・・・え?あれ?
「一晩考えたんだけどさ、うん、やっぱり無理かと。
澪と付き合うことを剥奪されて安定した生活をするよりもすべて投げ出して澪といることの方が良いかなぁっと・・・
もちろん澪や澪の家に頼らずに働いていることを前提としてるけれど。
昨日ちゃんとした返事聞いてなかったから聞きたいんだけど・・・」
「ハルちゃんに養子になるように説得されてたんじゃないの?」
「え?いや、本当に好きなのか?って聞かれただけだけど」
きょとんと聞かれたことに対して不思議そうに見ている彼の様子だと本当のようだ。
ハルちゃんの馬鹿。どうして?
「それで・・・」
「ちょっとハルちゃんぶん殴ってくる」
「は?」
「一発じゃ足りないから何発殴ろう?」
「ちょっと待て。落ち着け澪」
「五発は殴ろう。うん、そうしよう」
「ほんとにちょっと落ち着け!!」
もう怒った。
自分は逃げる気満々で逃げ道を用意してるのにどうして私にだけ逃げ道を埋めるようなことをしてくれるの?
今度は私から埋めてやるぞ。




