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不良と私  作者: 秋元愛羅
本編
66/72

不良ともう一人のワタシ




「あの、どこまで行くんですか?」


「あの子のお気に入りの場所」


ドンドン人の家なのに自分の家のように進んでいくもう一人の当主についていくと小さな一角が見えてきた。


それは唯一廊下につながっていない離れに隠れていた場所。


一面の花壇。


「すっげー、花」


「そして、澪の母親が一番好んだ場所」


「え?」


「ここ、当主以外は入れない場なのよ」


「なら俺、ここに」


「当主と一緒に入れば問題ないのよ。ここで桐恵さんにプロポーズしたりとか、凛香さんがおじ様に追求したりとか」


「いろいろなことに使われているんですね」


綺麗な場所に似合わずドロドロとしている・・・


「そうね。さて、さっさと本題に入りましょうか。


私、だらだらするの嫌いなの」


そうだった。何か聞きたくてここにつれてこられたんだった。


「澪のこと、どう思ってる?」


鋭い視線に臆してしまいそうになるが一歩とどまる。


「好きです。恋愛感情の意味で」


「本当ははけ違えてない?


親に見向きもされない生活、外に出れば喧嘩を売ってくる不良どもしか寄ってこない。


そんな中転機を変えてくれたのは澪との婚約。澪といることですべてが変わった。


友も出来てすれ違いの起きていた弟とも中が戻り始めている。


実際本当はそう思ってるんでしょ?」


「それは・・・そうですけど」


「尊敬や感謝する気持ちが混じり合わさっているだけで本当は恋愛感情じゃないんじゃない?


言っとくけれどそんな気持ちで付き合ったって壊れるだけよ」


ここに来て俺はようやく分かったんだと思う。


彼女は・・・俺を澪から手を引かせようとしている。いや当然の行為なんだろうけれど。


でも彼女の言葉に一理ある。


澪のおかげで今の俺があると言っても過言ではない。


自分のことだけではなく俺のことも考えてくれた彼女に尊敬も感謝もしてる。


でも・・・それだけで守りたいとかそばに居たいとか思うのだろうか?


もし泣いているとき、苦しんでいるとき一番に駆け寄りたい、傍に寄り添っていたい、そう思うのは澪だけなんだ。


「たとえ・・・遥さんが言うとおり恋とか愛とかの分類じゃなかったとしても俺が一番守りたいものは澪なんです」


俺は澪の笑顔を守りたい。ただそれだけなんだ。


俺の言葉に少し沈黙を置いて笑い出した遥さん。


そんなに大笑いされると恥ずかしいのですが・・・


「そんな歯が浮いたような言葉人前でいえるわね。


私も同じ言葉を言われたけれど意味が全然違ったからそう思うようなところも無かったけれど・・・


こうも堂々と言われると聞いてるこっちが恥ずかしいわね」


歯が浮いたって・・・


本当のこと言っただけなのに。


「あ~~。いいわ。ええ、あなたに賭けましょう。


ここにある葉牡丹の花言葉どうりになってくれると信じて。


ひとつだけ、ひとつだけ7親等内でも結婚出来る方法があるのよ」


「え?」


「例外とかそういう特殊な例とではなく全面的に許される方法。


ただかなりの条件が付くけれど」


「あのそれって能力とかですか?」


「まったく。3点を気をつけて過ごせば全く問題なし」


「本当にそれって大丈夫なんですか?」


心配する俺をよそに自信満々で言う。


「当たり前よ。それを証明するために私が呼ばれたんだもの。


ただしこちらの要求としては澪が自分から庄吾自身が好きだと言わせること。


それが完了しだい行ってあげる。ただその分覚悟が必要だけれどね」


ウインクする彼女の雰囲気とは似合わないノリが少し沈んでいた心を浮上させた。


多分澪が俺を好きになってくれたとき、一筋の光がさすんだろう。



「葉牡丹の花言葉は祝福や愛を包む。


利益や慈愛と言った言葉もあるけれど今はその言葉どうりになって欲しいわね。


二人の幸せに祝福を祈るわ」


たとえどんなことが待ち構えていても。



葉牡丹の花言葉『http://www.hanakotoba.name/archives/2005/09/post_362.html』から。

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