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不良と私  作者: 秋元愛羅
本編
64/72

私ともう一人のワタシ




ギュッと体を抱きしめる。


一人なんだと分かっていても一人は寂しいと感じてしまうから。


誰も見てくれないことはこの世で一番寂しいことって、分かっているから。


なんとなく私たちは重なるんだ。


それは長く続く血縁のせいなのか。


はたまた偶然重なったのか。


どちらにしろ私たちは似たもの同士。


もう一人の、ワタシとも言える存在なのだ。





「あら、私より早く当主になっておいてそんな顔してたら私が奪っちゃうわよ」


「ハルちゃんが言うと現実になりそうだから冗談でもやめてよ」


現実になんかならないわよ、言い方があまり気に入らなかったの眉がよっている。


私より少し長い黒髪にきつい印象を与えそうな一重、でもそれを調和するように整った顔。そして絶対に忘れられないほど有無を言わせないような雰囲気。


私たちのもうひとつの直系、ヤマトウ株式会社の次期後継者山内遥。


私にとっては境遇が同じようなお姉さん的存在だ。


ついでに私の友達の先輩でもある。


「オメデトウ、と言いに来たんだけれど面白そうなことになっているわね」


「人の厄介ごとを面白そうと言って首を突っ込まないでくださいね」


「他人事だから面白みが出るのよ」


一言だけ追加するなら私よりも性が悪いというところか。


これでも丸く収まっている方なんだけれど・・・


「で、庄吾君だっけ?噂の彼。いいの?手放して」


「決めたことですから」


「本人は却下でしょ?しかも告白したみたいね」


パチンと綺麗なウインクする彼女。どこから情報が漏れた。


「気にしないで。ちょっとしたおじ様からのお話よ」


あいつか!!


「まぁ、情報源はいいとして」


「いや、私にとってはよくないんですが」


「で?あんたは恋を捨て勉学に励むの?」


「当たり前です」


「つまんないわね」


「そっちもですよね?私に言う筋合いは無いと思いますが」


「うらやましいぐらいだわ。澪の状況が」


「え?」


「この恋の妨げは金持ちというカテゴリーがあるせいとか私のアピールが足りないせいとか単に彼が鈍感なのかって思ってた。


でも最近はうちの会社の方も妨げになってる。


もうすぐ、あと多く見積もって3年。3年の間に業績を上げないとうちの会社は・・・潰れる。


そのぐらい傾いてるの。あの金融ショックのせいで」


「それじゃあ・・・」


「一応超特待制度でお金は何とかしてるけれど大学を下手したら中退の危機もあるの。


借金した、しかも膨大の桁の、元お嬢様なんて一緒に居たく無いでしょ?


彼に見苦しい姿なんて見せる気も無いけど。


だからうらやましいわ。


同じ状況にいられるあなたが」


珍しく弱気になっている彼女を見たのは3度目だ。


1度目は彼女の育ての親がなくなったとき。


2度目は大切なパートナーであり私の友達がなくなったとき。


それほど彼を大切に思っているのだろう。


私が庄吾を思うように、彼女もその彼を思っている。


もし逆転した立場だったら・・・まっすぐ駆けるだろう、彼の元に。




私は・・・私はどうしたい?


立場上決める権利があるのは自分の位置を決められる庄吾と最終決定を下す私。


私は・・・





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