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#62 友人達と遊ぶことは、やっぱり楽しい。

 それから俺と一輝は少しバッティングしようと、二人に一言言ってパッティングゾーンに向かった。バットを振るのは中学ぶり、実際には十年ぶりくらいだが、高校生に戻ったおかげで運動神経も感覚も残っている。ボタンを押して、バッターボックスに立つと、懐かしい気持ちが込み上げてくる。


「怜遠ホームラン打ってよ!」


「流石に厳しいと思うけど頑張るよ」


 俺はそう言って、まずはバットに当てようと、軽く振った。


カン!


「お、当たるな」


「怜遠いいね」


「まあ昔やってたし」


「昔って一年前でしょ」


 まあ実際は十年ぶりくらいだけれど。俺はその言葉を心にしまって、再びバッティングに集中した。


 すると、横のブースが空いたらしく、一輝が入って準備をしていた。古い記憶だから微かにしか覚えていないが、彼は守備がうまかったイメージがある。バッティングはどうだったか覚えていない。


 俺は出てきた白球を打ちながら、彼のバッティングを見ていた。やっぱり経験者ということもあってそこそこうまかった。


「久々にやると楽しいね」


「だね。本当に懐かしいわ……」


「一年ぶりでそこまでなるの?」


 そう言って彼は微笑んだ。この笑顔を俺は守りたい。


 それから二人でバッティングを楽しんでいると、大田さんたちが、俺らの様子を見にやってきた。


「楽しそうだね。私もやってみたい」


「でも、難しそう……」


 大田さんが、笑顔で言うと、伊藤さんは首を縦に振りながら、そう嘆いた。


「じゃあ、俺が軽く打ち方教えるよ」


 そして俺は大田さんにバットを渡し、打ち方を丁寧に教え始めた。伊藤さんも横で真似をしている。


「右足から左足に体重を移動させ、腰をひねるように振ってみて」


 そして大田さんはバッターボックスに立つと、最初は空振りをしていたものの、だんだんとコツを掴んできて、ボールにしっかり当て始めた。


「やった!当たった!」


 大田さんは嬉しそうに叫んだので、俺も微笑みながら頷いた。


「次は伊藤さんがやってみたら?」


 一輝が伊藤さんに勧めたが、彼女は少し戸惑っている様子だった。


「え、私、そんな……上手くできるかな?」


「大丈夫だよ、大田さんだって初めてなんだし」


 俺がそうフォローすると、伊藤さんもバットを握って、恐る恐るスイングをし始めた。


 そして、ボールに向かって振ったものの、空振りをしていた。


「やっぱり難しい……」


「伊藤さん、もう少しバットを短くもって、手と手を近づけてみて、そしたら良くなるはず」


「うん。わかった」


 そう言って彼女が持ち方を治すと、やがてボールに当てることができた。


「いいね、伊藤さん」


「ありがとう森君」


 それから二人はしばらくバッティングをした後、再びテニスをやりに戻っていった。


 そして俺らはバッティングを楽しんでいると、突然、騒がしい声が聞こえてきた。


「やめてください!」


 俺はその声を聞いて、ふと声のする方を見てみると、テニスコートで、大田さんたちが二人の男に絡まれているのを発見した。みる限り、大田さんが伊藤さんを庇うようにして立っている。


「やばい、大田さんたちが絡まれてる。俺行ってくるわ」


 そう言って、向かおうとすると、


「僕も行くよ。友人が困っているのに見過ごせない」


 俺はその言葉を聞いて、余計に自分が滑稽に思えてきた。彼はしっかり勇気を持っている人間なんだ。中途半端な俺とは違う。


 しかし、俺はこのことを心の中にしまって、まずは今起きている問題の解決に集中することにした。


「了解。向かおう」


 俺は状況を把握しながら、彼らに近づいた。伊藤さんは手が震えているので、相当怖がっているのだろう。大田さんは伊藤さんを守るようにしているが、男たちから近い距離で寄られている。


「彼女達、嫌がってますよ?」


「自分達の連れに何か用ですか?」


 俺らがそういうと、二人の男たちは舌打ちをして、


「チッ……。男いるのかよ」


 そして急に態度を変えて、その場を立ち去っていった。


「なんだったんだろう。あの人たち」


 一輝が眉をひそめながら呟いた。


「わからない。でも俺らに話しかけられた途端に態度を変えて、立ち去っていったな」


 恐らく、大きな騒ぎは起こしたくなかったんだと思うが、それにしてもダサいなと思いながら彼らの背中を見送って、再び大田さん達の方を見た。


「大丈夫だった?」


 俺がそう二人に尋ねると、大田さんが、少し不安そうに頷いた。


「うん、大丈夫。神里くんたちが来てくれたから、すぐどっか行っちゃった」


「ありがとう、神里君、森君」


 伊藤さんも少し怯えた表情で感謝の言葉を口にした。


「まあ、何もなくてよかったよ」


「ね」


 俺と一輝は軽く笑って、二人を安心させた。


 その後、気を取り直して俺らは再びテニスに戻って、汗を流しながら楽しく打ち合いを続けた。みんな、最終的にはある程度楽しめるくらいにまではできるようになり、伊藤さんもラケットをボールに当てることができるようになっていた。


 そして、テニスを充分楽しんで、俺らは帰宅した。


「なんだかんだで、楽しい一日だったな」


 俺はふと振り返りながら、今日の出来事を思い出していた。

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― 新着の感想 ―
最高です!!63話を待っています、どうか書いてください。
2025/05/15 01:27 やまちゃん
久しぶりに読みいってしまって全部読ませてもらいました。続き期待してます!
2025/05/15 01:22 ティーネージャーハウス
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