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マジカルゼラ!! ~紫の鏡が割れるとき~

(σ≧▽≦)σ マジカルゼラ、後半戦。またもや新たなバルーンアートが!


 マジカルゼラが両手でステッキを握り、突き出すように構える。ステッキからバチバチと火花が散る。


「らいらー! ど!」


 雷の鞭を束ね白い太い雷が横向きに走る。その先に立つ紫の髪のマジカルゼラシャドウは、受け止めるようぬ片手を前に出す。


「スイスイ! マ!」


 空間に現れた水が膨らみ半球のドーム状となりマジカルゼラシャドウを包む。白い雷は水の防御膜にぶつかり辺りに散る。


「チムッ!」


 マジカルゼラシャドウの周囲に浮く八つの光る球体。紫の瞳のような“蜘蛛の瞳(ウィドウアイ)”から紫の光線が伸びる。


「ちむっ!」


 その光線にぶつけるように、マジカルゼラの周囲に浮かぶ紫の光の球体からも光線が飛ぶ。宙でぶつかりあいいくつもの小爆発が起きる。


 マジカルゼラの魔法と同種同等の魔法を操るマジカルゼラシャドウ。互いに決め手に欠けるまま戦いは続く。


「ええいっ!」


 突撃するゼラがクルリと踊るように回る。突進する勢いを乗せた蜘蛛の脚がマジカルゼラシャドウを蹴りつける。左側の四本の脚を使った豪快な飛び回し蹴り。これぞアルケニー式フライングニールキック四連。

 しかし対するマジカルゼラシャドウもその場で跳び、蜘蛛の脚で受け止める。

 マジカルゼラが七本脚ならばマジカルゼラシャドウもまた七本脚。近接格闘においても両者は互角。


「もー、やりにくいっ!」


 マジカルゼラとマジカルゼラシャドウが互いに魔法を撃ち合い、糸を飛ばし、接近しては蹴りの応酬。このまま一対一の闘いであれば、勝負は決まりそうにない。だが、


「ハハハ! どうしたマジカルゼラ?」


 悪魔ピージョンが高く笑い、指をパチンと鳴らす。


「ブラックソード! シュート!」


 悪魔ピージョンが操る黒い剣が弾丸の速度でマジカルゼラを襲う。


「しゅぴっ!」


 宙を泳ぐように飛ぶ黒い剣を、手から伸ばす糸で絡め地に落とすマジカルゼラ。

 悪魔ピージョンはマジカルゼラシャドウを盾にするように動き、二人の闘いの隙を見ては魔法の黒い長剣でゼラを射つ。悪魔ピージョンがマジカルゼラシャドウに加勢することで、マジカルゼラはじわじわと追い詰められていく。


「ハハハハハ! なかなか粘るな! マジカルゼラ!」

「ピージョンの卑怯ものー!」

「作戦だ作戦! 存在が規格外のお前に正面から当たって勝てるか!」

「キカクガイって、なに? 悪魔はキカクガイじゃ無いの?」

「え? ええ? いや悪魔というのは、その、なんだ? えぇい! メタな話で気を逸らす手には乗らんぞ! ブラックソード! シュート!」


 襲いかかる黒い剣を蜘蛛の脚で蹴りつつ、マジカルゼラは後方に跳ぶ。追撃するマジカルゼラシャドウの飛ばす糸を氷の壁で受け止める。


「あう、これ、どうしよう?」

「ようやく魔力切れか? 勝てる! ついに勝てるぞ! よくもこれまでさんざん蹴っ飛ばしてくれたな!」

「魔神の復活なんて、させないから!」

「お前がいなければ誰も止められる者はいない!」


 勝利を確信した喜悦に酔う悪魔ピージョン。これまで何度も何度もマジカルゼラに邪魔されたことを思い出したのか、ようやく念願の叶うこのとき、目に涙がにじむ。

 だが、それを邪魔するように男の声が響く。


『ワシの居らんところで、魔獣王のタイトルを奪われそうになっているんじゃないわー! マジカルゼラー!』

「この声は?」

「ストーカーの骸骨さん?」


 姿は見えねど聞こえる声は、自称マジカルゼラの永遠のライバル、骸王龍ハイリュウの渋い声。遠隔地から魔法で声を届けているらしく、周りを見渡してもハイリュウの姿は無い。


『魔獣王のタイトルはワシのもの、それを木っ端悪魔の策に嵌まりおって。それとそこの雑魚悪魔! 真にチャンピオンを狙うなら下らん魔道具に頼るでは無いわ!』

「茶々を入れるな! 邪魔くさい骨ジジイが! お前はここには来られないハズ!」

『なんでワシが暴走寸前の謎の女神像の相手をしなきゃいかんのだ!? こっちはこっちで手が離せん! なので受けとれ! マジカルゼラ!』


 轟く声にゼラはキョトンと首を傾げる。


「受けとれって、何を?」


『おい、覚悟を決めろよ?』

『あぁ、頼む』

『いくぞ! 絶投! カダールカタパルト!』


 解説しよう、カダールカタパルトとは、ゼラが一心に愛する男カダールを、ハイリュウが全力で遠投する荒業である。

 遥か彼方より、一人の赤毛の男が風を切り裂き飛んで来る。


「ゼラー!」

「カダールー!」


 どこから飛んで来たのか長大な放物線を描き落ちてくるカダールを、マジカルゼラはジャンプして受け止める。


「ゼラ! 無事か?」

「ウン! だいじょぶ!」

「じゃ、いくぞ!」

「ウン!」


 空中で受け止めたカダールを抱いたまま着地するマジカルゼラ。カダールは素早くゼラの腕からゼラの蜘蛛の背へと移動する。

 マジカルゼラシャドウと悪魔ピージョンを見据えた二人は声を合わせて叫ぶ。


「「騎乗合身アルケニーナイト!」」


 解説しよう、騎乗合身アルケニーナイトとは。マジカルゼラが心から愛する男カダールをその蜘蛛の背に乗せるとき、『カダールが側にいるとなんだか負ける気がしない』という気持ちが高まり無限の魔力が湧き上がる。

 それがマジカルゼラの究極形態アルティメットフォーム、騎乗合身アルケニーナイトだ。

 マジカルゼラの持つマジカルステッキが無尽の魔力を注がれ黄金の光を放つ。


「相変わらず非常識な奴め! だが!」


 悪魔ピージョンは気を取り直しパキンと指を鳴らす。


「紫影鏡! アルケニーナイトの姿を写し取れ!」


 悪魔ピージョンの声に応えて邪悪なオーラを纏う不気味な鏡が、ゼラとカダールの姿を写す。

 しかし鏡からは何も現れない。鏡の表面にいくつもの波紋が立ち、大きな鏡はヴヴヴという振動音を立てて震える。

 

「なに? 紫影鏡が?」


 驚愕する悪魔ピージョン。鏡の震えは大きくなりその表面にピシリとヒビが入る。

 ゼラの蜘蛛の背に立つカダールが言う。


「九官鳥のクインの受け売りだが、魔神の復活が完全では無い今、魔神装具もまた完全では無いらしい」

「バカな! 紫影鏡の許容量を越える程の魔力だというのか!? デタラメな奴等だ!」


 頼みの綱の紫影鏡に入るヒビが大きくなる。紫の髪のマジカルゼラシャドウは動きを止め、顔が青ざめる悪魔ピージョン。

 ゼラの構える黄金のマジカルステッキがまばゆい光を放つ。


「じゃ、いくよー! めっさつ!」

「うわあ!? て、撤退ー!」


 慌てて影に姿を消す悪魔ピージョンとその配下達。カダールは手を伸ばしマジカルステッキを持つゼラの手に手を重ねる。


「魔神装具なんてものは、この世から消してしまおう、ゼラ」

「ウン! カダール!」

「「灰塵の滅光でぃすいんてぐれーたー!!」


 真っ白な光の柱が横向きに走り、魔神装具、紫影鏡を飲み込む。滅光の暴力が迸るとき、光に包まれたものは灰に帰る。

 邪悪な力を持つ紫影鏡は白い光の中で、粉々に砕けて消え失せていく。


「ふー、カダールが来てくれて、助かった」

「あとでパン屋のアルバイトの骸骨さんに、お礼を言わないといけないな」

「ア、そう言えば骸骨さんは?」

「ヒドラとかライトニングドラゴンとか総出で、みんなで力を合わせて、なんだかバリバリ言ってる女神像を封印しようとしてたみたいなんだが、あれは何があったんだろう?」

「なんだか、たいへんそう?」

「ところでゼラ、これはどうする?」


 カダールが指差すのは彫像のように動きを止めたマジカルゼラシャドウ。指でツンとつついても石のように硬くピクリとも動かない。


「ゼラそっくりのものを、このままここに置いておくのも……」

「ンー、持って帰って、何処に置こう?」


 紫の髪のマジカルゼラそっくりの彫像と化したマジカルゼラシャドウ。あまりにもゼラにそっくり過ぎて、カダールには壊すことも捨てることもできずに悩むことになる。


「骸骨さん、ストーカーだから欲しがるかな?」

「いやその、ゼラのストーカーにゼラそっくりの彫像を渡すのも、ちょっと嫌だ」


 マジカルゼラの活躍により魔神装具のひとつは破壊された。

 しかし悪魔ピージョンはまだ魔神ケージョンの復活を諦めてはいない。


「くっそー! マジカルゼラめ。ええい、他に使える魔神装具は無いか? 赤血短衣(レッドチュニック)? もっと強そうなのは……」


挿絵(By みてみん)


設定考案

K John・Smith様

加瀬優妃様


バルーンアート

K John・Smith様


m(_ _)m ありがとうございます



♪(´▽`;K

「このゼラも某所にて展示中ー♪」

(2019年10月)


(* ̄∇ ̄)ノ

「うわお、受付嬢以外にもあちこちメジャーデビュー? バルーンアートが気になる方はK様の活動報告、または、みてみん、の方も見てみてね」


( ̄▽ ̄;) なんか、ちっちゃいハイリュウもいる?



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