総長戦記 0082話 宣戦布告
【筆者からの一言】
日本じゃないよ。
1941年 『アメリカ ワシントンDC 議会議事堂』
ルーズベルト大統領が議会の演壇に杖を片手に立っていた。
これより重要な演説が始まる予定だ。
この模様はニュースカメラに収録され、ラジオでは生放送が行われる。
ルーズベルト大統領は一度、場内を見回すと徐に演説を開始した。
「副大統領兼上院議長、下院議長、並びに上院、下院の議員諸氏。
私は本日、実に残念であり、また悲しく、そして恐るべき事を、怒りを胸にしながらお伝えしなければなりません。
1941年8月25日に突如として起こり、多くのアメリカ市民の命と財産を奪い、今なお多くのアメリカ市民を苦しめている「ニューヨークの惨劇」は人為的に起こされたものでありました。
我が国の信頼厚い司法機関の捜査によると、この悲劇はドイツの開発した特殊爆弾によるものと判明致しました。
これは上下両院の特別調査委員会においても同様の結論が出ております。
アメリカはかの国とは平和的状態にあり戦争状態にはありませんでした。
しかし、アメリカは何の予告も無しにドイツにより卑劣な攻撃を突如受けたのであります。
そして多大なる犠牲を強いられたのであります。
これは許し難い犯罪行為です。
この残虐行為を断じて許してはなりません。
アメリカ陸海軍の最高指揮官として私は、全軍に対し我が国の防衛の為、あらゆる防衛措置を講じるよう指示を出しました。
そして、どれほどの時がかかろうとも「ニューヨークの惨劇」について、必ずや正義の裁きを、報いを受けさせ、また正義の勝利を勝ち取る事を大統領としてこの国に誓いました。
私はここに宣言いたします。
アメリカ合衆国とドイツは戦争状態にある事を。
そして、軍とアメリカ市民の固い意思により必ずや勝利を得るだろうと!
主よこの国に祝福を!」
万雷の拍手が沸き起こった。
場内にいた全員が立ち上がり拍手していた。
前もってルーズベルト政権と民主党、共和党の両党上層部とは話しがついており根回しは終えている。
両党ともに上層部はドイツとの戦争には賛成だ。
超党派で組織された上下両院の特別調査委員会においてもドイツが犯人との結果が出ているのだ。今更、政府の調査結果を疑いはしない。
本来、この演説は大統領が上下両院にドイツへの宣戦布告の認可を要請する為のものである。
しかし、ルーズベルト大統領の演説は要請ではなく通達といった趣になっている。
だが、それを指摘する者は皆無である。
そもそも大統領が何を言うかも事前に演説のコピーが配られているため全議員が知っていた。
故に驚きはない。その段階はとうに過ぎている。
今、多くの議員達の胸にあるものはドイツに対する怒りだけである。
この後、上院、下院においてそれぞれ
「アメリカ、ドイツの両国間に戦争状態が存在することを公式に布告する決議」についての投票が行われる。
上院、賛成82票、反対0票。可決。
下院、賛成388票、反対1票。可決。
可決された決議は文書となりホワイトハウスに届けられる。
これにルーズベルト大統領が署名しドイツへの宣戦布告は公式なものとなった。
時に1941年9月25日午後15時の事である。
これによりアメリカは公式にドイツとの戦争に突入した。
東洋の島国にいるある軍人の思惑通りに……
【筆者からの一言】
そんなわけでアメリカがとうとう宣戦布告しました。
さぁ殺し合うがよいっ! くっくっくっ




