表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/98

総長戦記 0047話 放たれたもの

【筆者からの一言】


 さぁ行け!◯◯◯◯◯達よ……

1941年8月 『アメリカ』


 かつてアメリカには「ラム・ランナー」と呼ばれた男達がいた。

 禁酒法の時代だ。

 1920年から1933年までアメリカでは酒の製造も販売も法律により違法とされた。


 だが、禁止されても酒を飲む者は大勢いる。

 アメリカ国内で多くの酒の密造所が造られ大量の酒が密造された。

 だが、酒は足りない。需要は多い。


 そこで外国から海路、酒が密輸された。

 海路での密輸手段は幾つもあった。


 その中の一つがアメリカ沿岸に近い公海上の貨物船から夜間、小型艇にて密かに酒を陸地に運ぶという手段だ。

 アメリカの沿岸警備隊も取り締まりはしていた。

 しかし、アメリカの海岸線は広い。全てを取り締まる事はできなかった。

 時には沿岸警備隊の者が買収され密輸を見逃してもいた。

 だが、買収すると金がかかり儲けも減る。 

 警備の目が甘く都市へ酒を運ぶのに丁度よい便利な海岸を密輸業者達は次々と探し出し密輸ポイントとして使用した。


 そしてアメリカには海より多くの酒が運びこまれた。

 この時、小型艇で酒を運んだ密輸人達を人はいつしか「ラム・ランナー」と呼ぶようになった。


 1933年に禁酒法が廃止されると「ラム・ランナー」もその存在意義を失い歴史の狭間に消えていった。




 それから数年の歳月が流れた。


 アメリカ東海岸に点在する主要都市、ボストン、フィラデルフィア、チャールストン、ジャクソンヴィル、メキシコ湾岸のニューオリンズ、西海岸のサンフランシスコ、シアトルといった大都市で、かつて「ラム・ランナー」として腕を鳴らしていた者達の姿が何人か消えた。

 既に密輸だけでなく裏稼業からも足を洗い、酒場で「ラム・ランナー」時代や悪い事をしていた頃の自慢話をしていたような老人や中年の男達だ。

 だが、そういう男達が突然姿を見せなくなるのは珍しくもない。

 他所に流れたか、どかで美味い話にでもありついたのか、それとも裏稼業時代に恨みを買って報復で殺害されたか……

 裏社会に一度は身を置いた者の消息を本気で心配するのは、家族と親しい友人以外は皆無だった。


 アメリカ人は誰も知らない。

 男達が消える前に、その周辺には見慣れぬよそ者の白人がいた事を。

 アメリカ人は誰も知らない。

 そのよそ者の白人の裏の裏の更に裏には、ある国の存在がある事を。

 アメリカ人は誰も知らない。

 消えた元ラム・ランナー達は、ある情報を喋らされた後に処分され既に生きていない事を……




 そして更に数年の歳月が流れ時は1941年8月を刻んだ。

 消えた元ラム・ランナーの事を覚えている者は殆どいない。 


 ある日のある夜。

 ボストン市に近い小さな港町近くの海岸に、沖合から沿岸警備隊の目を掻い潜り密かにボートがやってきた。

 そして海岸につくと男達が箱を幾つも降ろす。

 海岸近くには車で待機していた者達がおり、その箱を受け取ると自動車に載せ走り去った。


 自動車で箱を運んだ男達は目的地に着くと人目の無い事を確認してから箱を降ろし、その蓋を開ける。

 箱に入っていたものは生き物だった。

 それも小さな生き物だった。

 四つ足の生き物だ。

 それが箱の中で無数に蠢いている。 


 その小さな生き物が開けられた箱から飛び出してゆく。

 外に向かって次々と駆け出して行く。

 解放されたのを喜ぶように全力で駆け出して行く。


 そして箱の中は空になった。

 全ての箱が空になった後、男達は箱を回収して夜の闇に消えた。


 同じ日、同様な事がボストン以外にもフィラデルフィア、チャールストン、ジャクソンヴィル、ニューオリンズの付近でも行われていた。


 この出来事を見ている者は頭上に輝く星の他は誰もいなかった……


【to be continued】

【筆者からの一言】


密かに破滅の足音がアメリカに忍び寄る……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ