第95章: ヴァロム教官との初授業――芽生えが試される時

アリラは髪をきつくポニーテールに結んだ。乱れた巻き毛は訓練の邪魔になるだけだ。顔にかからないようにしておく必要があった。

伝説的な教官ヴァロムとの最初の授業が始まろうとしている。集中こそがすべてだ。彼は古風で容赦がないと噂されており、かつてイザベルを訓練したことがあると女子の一人がささやいていた。二人は特別な絆を持っていたらしく、一時期イザベルが彼のお気に入りの生徒だったとも言われていた。

ヴァロムの個人的な指導は、長年でほんの一握りにしか与えられていない。もし自分にその視線が向けられたら、すべてが変わるだろう。

午前中のタニアとの訓練で腕はうずき、持ち上げるだけで顔をしかめるほどだった。初日が理論や瞑想で終わることを祈るしかない。ヴァロムはチャクラを通じてエネルギーを導く達人であり、多くの授業は絶対的な沈黙の中で行われた。生徒たちは呼吸と集中だけを課されたのだ。

更衣室はざわめきに包まれていた。少女たちは冗談を言い、噂をし、声をひそめてとげとげしい言葉を交わしていた。隅々まで会話で満ちていたが、アリラはその中に入っていなかった。

せいぜい、視線を向けられたり、指をさされたり、手のひらで隠すようなささやきを浴びるだけ。

自分はいつか受け入れられるのだろうか。もしかしたら忍耐が必要なのかもしれない。あるいは、まず自分を証明しなければならないのか。信頼が芽吹く前に。

アリラは肩を回し、腕を伸ばして筋肉の痛みをほぐそうとした。

そのとき、更衣室の扉が勢いよく開き、少女たちは一斉にジムへ駆けだした。アリラは身を引いて道を譲った。

一人が立ち止まり、彼女の前に立った。

【ミレル】「あなたも来るの？」

アリラは弱々しく笑った。

【アリラ】「あ、や、やあ……すぐ行くよ。」

ミレルはにっこりと笑った。だが瞳は冷ややかだった。

【ミレル】「遅れないで。芽生え(スプラウト)は一緒にいなきゃ。」

アリラは軽くうなずいた。ミレルが自分を思い出すのは週に一度くらいだ。それが「一緒にいる」ということらしい。まあ、むしろその方が楽かもしれない。彼女は信心深すぎて自分には合わない。

【アリラ】「じゃあ、いつ苗(シードリング)に昇格するか、見込みある？」

――そうなれば、そんな決まり文句もやめるかもしれない。

ミレルは肩をすくめた。

【ミレル】「さあね。ヴァロム次第よ。今日が最初の授業だし。恐ろしい人だって聞いたわ。」

【アリラ】「……大丈夫。学院で最高の教官の一人なんでしょ？　イザベルを訓練したこともあるんだって。きっとすごい人よ。」

ミレルの笑みは崩れなかったが、瞳に温かみはなかった。

【ミレル】「あなたがそう思うなら。」

【アリラ】「じゃ、行こ。初日からヴァロムを怒らせるのは嫌でしょ。」

ミレルはうなずき、駆け足で仲間に合流した。

アリラも急いでその後を追い、扉を押し開けてジムに入った。

そこは記憶どおりの場所だったが、なぜか以前より狭く感じられた。

ヴァロムは広い床の中央に立っていた。背筋はまっすぐに伸び、顎は固く結ばれ、背後の板には黒い布が掛けられている。背は高く痩せ、短い白髪と鋼のような冷たい瞳をしていた。制服は教官用の正式な装いをさらに格式高く仕立て直したもので、金の徽章が縁取り、肩幅の広い肩には濃いマントがかかっていた。

少女たちはすでに彼の前に整列していた。彼の姿を見た瞬間、おしゃべりも笑い声も消えた。クラウディン教官の時と同じだ。ただし今回は、恐怖からではなく畏敬からの沈黙だった。

ヴァロムは列が完璧に整うまで、まったく動かなかった。

アリラはいつものように端に滑り込んだ。視線の真正面から外れるのは、このときばかりはありがたかった。

ジムには沈黙が満ちていた。

ヴァロムの視線が列の端から端へとゆっくりと掃いた。

満足そうに一度だけうなずいた。そして声を発した瞬間、空気は一層冷たくなった。

【ヴァロム】「おはよう、ノーヴィスたち。私を知らぬ者のために名乗ろう。私はシニア主任教官、ヴァロム・ベルサーだ。」

アリラは列の中で消えるように息を潜めた。呼吸を遅らせれば気づかれないのでは、とすら思った。だが彼の存在感は圧し掛かる重みとなり、何メートルも離れていても無視できなかった。

彼女は周囲を見回した。顔色を失った生徒は少なくなく、ミレルは今にも倒れそうだった。

自分だけじゃない――。唯一しっかりと立っていたのはタニアで、彼と挑むように視線を交わしていた。

ヴァロムはゆっくりと、重々しい足取りで近づいてきた。

最初、アリラは彼が訓練器具でも取りに行くのだと思い込もうとした。しかし、一歩ごとに、その進路はまっすぐ自分の立ち位置に向かっていた。

喉が締まり、耳に脈打つ音が響く。

歩みのたびに、その存在感は重さを増し、息を奪った。本能のすべてが「逃げろ」と叫んでいた。この男は強すぎて、危険すぎる。

一瞬、視線が交わった。

すぐに目を伏せたが、その鋭い凝視は消えず、足音ごとにさらに深く突き刺さった。

彼はアリラの目の前で立ち止まった。

胸が激しく高鳴り、彼女は必死に頭を上げた。

ヴァロムは頭からつま先までを観察し、その表情は石のように固まっていた。

脚は逃げ出したがっていた。それでも立ち続けた。エボンシェイドの怪物ですら、ここまで震えさせはしなかった。ヴァロムは敵ではなく、教官だ。それなのに、なぜ震えるのか。

やがて彼は通り過ぎた。

圧し潰すような重みは消え、アリラは自分が息を止めていたことに気づき、震える吐息を漏らした。

教官は一人ひとりの前に立ち止まり、数秒だけ観察しては進んでいった。

沈黙が支配する。

ミレルの前に来たとき、芽生え(スプラウト)の彼女は一歩後ずさりし、肩を震わせ、呼吸は乱れた。

アリラは息を詰めて聞いた。

ヴァロムはどれほど強いのだろう。もしかすると、ウリエラとすら互角に戦えるのかもしれない。

ヴァロムの眉がわずかに動いた。仮面のような表情の中での、ほんの小さな変化だった。

【ヴァロム】「列に戻れ。すぐにだ。」

【ミレル】「は、はい！」

ミレルの顔は真っ白になり、つまずくように列に戻った。

短い頷きだけを返し、ヴァロムは次へ進んだ。

ミレルは直立を保とうとしたが、肩の震えは止まらなかった。アリラの視界の端にもはっきり映っていた。

タニアの前に立ったとき、彼女は一歩も引かず、真正面から視線を受け止めた。肩を張り、顎を固く結び、胸は重みに押し潰されるように上下していたが、表情は揺らがなかった。

ヴァロムは首を傾け、一歩近づいた。タニアは最も背が高いが、それでも彼の顎には届かない。至近距離の彼は圧倒的で、タニアの胸は彼に触れそうなほどだった。呼吸は速いが制御され、まるで見えない相手と一騎打ちをしているかのようだ。

アリラはその様子を視界の端でとらえたが、顔を前に向け続けた。見なくても、ヴァロムの視線は気づく。

やがてヴァロムは小さく頷き、通り過ぎた。

列の端に到達するころ、アリラの鼓動はようやく落ち着き始めていた。そこに立つ少女の顔は見えなかったが、小さなすすり泣きがすべてを物語っていた。

全体から見れば、アリラはまだましな方だ。タニアは別格だが、他の多くと比べれば、完全な失敗ではない。

【ヴァロム】「よろしい。」

中央へ戻ると、彼は言った。

【ヴァロム】「今のは……興味深い試験だった。」

視線が生徒たちを冷たく横切る。

【ヴァロム】「最近入った者で、何が起きたか理解していない者に説明する。今感じたものは、私が教える規律の一部だ。警告なしに直接体験する――それが唯一の理解だ。」

彼は板の前に歩み寄り、布を引きはがした。そこには人の姿が描かれ、その全体を球が囲んでいた。体には七つの光点――両手に二つ、両足に二つ、頭、胸、腹に一つずつ――が示されていた。

【ヴァロム】「これが、オーラ球の投影図だ。」

【ヴァロム】「二人の《球体》の使い手がぶつかる時、互いのオーラを感知する。シーアがいない限り、その力を測る唯一の方法は戦闘だ。そして多くの場合、死に至る。」

その視線は鋭く、容赦がない。

誰も動かない。誰も声を発さない。

【ヴァロム】「段階を隠すことは、生き残りに直結する。敵が自分より弱いと知れば逃げる。仕留める機会を失う。逆に強いと知れば、攻め立ててお前を退却に追い込む。」

彼は再び図を指差した。

【ヴァロム】「お前たちのオーラは、身を包むエネルギーの球だ。ガラスに囲まれたろうそくの光のようにな。炎が明るければ光は遠くまで届き、離れればその光は薄れる。だが、ろうそくと違い、オーラはチャクラの束縛によって内側へ引き寄せられる。」

アリラは息を詰めて聞いた。始まったばかりなのに、すでにオルビサルの力を今まで以上に理解できていた。厳しいが、彼は確かに教師だった。

ヴァロムはチャクラの印を指で叩いた。

【ヴァロム】「チャクラは力を磁石のように定め、制御を失わないようにする。だが戦闘では反応し、外に解き放つ。オーラは繭のように体を包む。」

彼は両手で球を作り、重ね、指を組み合わせた。

【ヴァロム】「その瞬間――二つのオーラ球が衝突した時――力の差は本能的かつ明確に知覚される。それで理解できたか？」

視線が生徒たちを再び掃いた。

一人が手を挙げた。

ヴァロムは小さく頷いた。

【ヴァロム】「言え、タニア。」

茨(ソーン)の少女は冷静に、だが力強く答えた。

【タニア】「力の差は、どれくらいあればはっきり感知できるのでしょうか。」

【ヴァロム】「通常、一段階の差なら明確だ。鉄位（アイアン）の使い手が銅位（ブロンズ）と戦えば、一瞬で理解できる。より微妙な差は訓練でしか見抜けない。その訓練をここで受ける。」

【タニア】「ありがとうございます。」

ヴァロムは咳払いをした。

【ヴァロム】「この課程を越えた技を身につけない限り、段階を隠したまま戦うことはできない。ただし、戦わずにオーラを見せることは可能だ。」

【アリラ】「で、でも……隠すのが大事だって言ったばかりじゃ……」

口を押さえる前に言葉が出てしまった。頬に熱が広がる。手も挙げていなかった。

タニアの眉がわずかに上がり、嘲るような笑みを浮かべた。数人の生徒が笑いをこらえた。

ヴァロムはゆっくりと振り返り、冷たい視線を向けた。

【ヴァロム】「名を言え。会ったことはなかったな。」

心臓が跳ねた。なぜ黙っていられなかったのか。

【アリラ】「アリラ・グリーヴスです、教官。」

彼の片眉がわずかに上がった。

【ヴァロム】「ロスメアの名には聞こえんな。」

【アリラ】「わ、私はジャングルの出身です。」

【ヴァロム】「なるほど。では、エボンシェイドの生き残りか。ワーデン、イザベルに救われた者だな。」

【アリラ】「はい、教官！」

耳まで赤くなる。

【ヴァロム】「よろしい。だが忘れるな。授業で発言したければ、まず手を挙げろ。」

【アリラ】「はい、教官。すみません……もうしません。」

アリラは唾を飲み込んだ。最悪だ。これで「授業の作法も知らないジャングル娘」の烙印を押された。

【ヴァロム】「だが彼女の質問は、今日の核心に触れている。オーラを隠すことがそれほど重要なら、なぜ昇華者《アセンダント・オブ・オルビサル》がわざわざそれを明らかにするのか？」

彼は沈黙を引き延ばした。明らかに復習ではない。

誰も答えようとしなかった。

アリラだけが、今度は手を挙げた。

ヴァロムは冷たく顎を動かし、発言を許した。

すでに恥はかいた。今さら引いても意味はない。

【アリラ】「……戦いたくない相手を、怖がらせて追い払うためです。」

ヴァロムは顎をさすり、静かにうなずいた。

【ヴァロム】「正しい。理由は無数にある。今は語らない。後の授業で扱う。今日の課題は、命令でオーラを解放し、戦う前に相手に感じさせることだ。」

アリラの目が見開かれた。さっきの圧倒的な恐怖――逃げ出したい衝動――あれがオーラだった？

【ヴァロム】「察しているだろうが、さきほど感じたのは私のオーラのほんの一部だ。もし全力を解き放っていたら、大半は立っていられなかった。中には――」

彼の視線がミレルに突き刺さり、唇がわずかに歪んだ。

【ヴァロム】「立つことすらできなかった者もいる。」

ミレルは顔を青ざめさせ、身をこわばらせた。

視線がアリラに向かう。彼女はすぐに目を伏せた。……ミレルには「大丈夫」と言ったのに。

【ヴァロム】「よろしい。チャクラを感知する最初の訓練を始める。マットを持って横になれ。準備ができたら始める。」

生徒たちは列を崩し、隅のマットを取りに走った。空気は重く沈黙に満ちていた。

アリラも動こうとしたが、ヴァロムが二本の指を上げ、彼女を呼び寄せた。

腹の奥が硬くねじれた。今度は何？　仲間がマットを広げているのを横目に、両手を前で組み、鋼のような灰色の瞳と向き合った。

数人の生徒が彼女を指差して笑った。タニアだけが興味深そうに見つめていた。

【ヴァロム】「アリラ・グリーヴス。」

【アリラ】「はい、教官。」

【ヴァロム】「さきほどオーラを投射した時、どう感じた？」

喉がからからに乾き、声がかすれた。

【アリラ】「それは……怖かったです、教官。」

片眉がわずかに上がる。

【ヴァロム】「それだけか。『怖い』だけか？」

なぜ自分だけを狙うの？　どう答えればいい？

【アリラ】「ええと……とても怖かったです。本当に逃げたかった。でも……立ち続けました。」

ヴァロムは顎をさすり、目を細めて彼女を射抜いた。

【ヴァロム】「お前はまだ芽生え(スプラウト)。そして、これは初めての試験だったな。」

彼女は慌ててうなずいた。

ヴァロムは一歩近づき、声を低くした。

【ヴァロム】「だが他の者にしたように抑えはしなかった。お前に向けた水準は、彼女らを即座に気絶させる力だ。」

アリラは息をのんだ。どういう意味？

氷の刃のような視線が突き刺さる。

【ヴァロム】「一部が効かぬと見て、全てを解き放った。それでも無事だった。お前は『少し怖かった』と言った。どうして初日の芽生え(スプラウト)が、それに耐えられた？」

【アリラ】「わ、わかりません、教官。たぶん……勘違いでは？」

ヴァロムの眉が寄り、顎が固く結ばれた。

【ヴァロム】「違う。私は間違えない。お前はこの課程を始める前に、シーアに調べてもらったことはあるか？」

アリラの胃が沈んだ。……シーア？　なぜ今それを？

【アリラ】「い、いいえ、教官。ただの芽生え(スプラウト)です。調べるほどのものは……ないかと。」

ヴァロムの口元が冷たく歪んだ。

【ヴァロム】「馬鹿げている。経験豊富なシーアをすぐに呼ぶ。明らかにクラウディン教官の見落としだ。話をしよう。」

彼は手を振り、彼女を退けた。

氷のような冷たさが胃を締めつけた。震える手で仲間の方へ戻る。今シーアに調べられたら……秘密はすぐに暴かれる。

デレクに知らせなきゃ。でも――前回あんな終わり方をして、彼はまだ助けてくれるだろうか？

脈は速く、指は震えた。学院に来て一日目にして、もうすべてが崩れ始めていた。

もしかしたら――もう一人。助けを求められる相手がいる。

理由があるから。

絶望が深まれば深まるほど、それは「正しい選択」に見えた。

そして今の彼女は、あまりにも絶望していた。

――シエレリスに頼むしかない。