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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第二章 聖都の影と覚醒の機構
84/102

第84章: 腐肉の巨獣、そして死の教団

お待たせしました! 今回はド派手なバトル回です。

そして戦いの後、まさかの新キャラたちが登場……物語が大きく動きます!

化け物はイザベル、ツンガ、アリラを無視し、まっすぐデレクへ襲いかかってきた。


それはただの怪物ではない。肉が悲鳴を上げるように震え、骨が不自然な角度で突き出し、腱が濡れた音を立てて弾ける。歩むたびに地面はぐちゃりと揺れ、吐き気を誘う悪臭があたりを覆った。血の鉄臭と腐敗臭が漂っていた。まるで死そのものが回収しに現れたかのようだ。


胸が締め付けられ、息が詰まる。損傷したNOVAでは、一撃すら耐えきれない。


HUDは黄色と赤に染まり、無数の警告が積み重なって一語にぼやけた。


――「走れ」。


だがNOVAは、もう走ることすらできなかった。デレクは唸り、腕に融合した黒い歪な刃を持ち上げ、正面から化け物へ飛びかかる。


脚は重く鈍い。一歩踏み出すだけで精一杯。このままでは泥に倒れ込むだろう。


その時――白い閃光が横を駆け抜けた。


イザベルだ。巨大な剣を槍のように構え、刃先を肉塊の中心へ突き立てる。そこにまだ心臓があると信じるかのように。


蹄が稲妻のように振り上げられた。イザベルは突きを捻って受け流すが、その衝撃で地面に叩きつけられ、仰向けに倒れる。


隙を見たツンガが火炎を放った。いつもより小さく遅い炎だが、確かに命中した。肉が焼け、煙が立ち上る――だが怪物は微動だにしない。


だが次の瞬間、呻きとも溜息ともつかぬ声をあげた。


痛み、なのか?


デレクは目を細めた。奇妙だ。イザベルの剣も、ツンガの炎も効かなかった。それなのに――。


視線を下げ、答えを見た。


アリラが脇腹にしがみつき、小さな拳で殴り続けていたのだ。一撃ごとに腐った灰色の肉が沈み込み、まるで腐敗したクリームを叩くように沈む。おぞましいが、柔らかい。


イザベルとツンガの攻撃が、彼女に潜り込む隙を与えたのだ。だが、なぜ彼女だけが効いている……?


化け物は群れた眼球を振り回し、痛みの源を探す。ツンガの火球は決定打にならずとも、奴を眩ませ混乱させた。


デレクは接近し、不格好な大鎌を振り下ろした。狙いは中心部。刃に紫光が走り、命中の瞬間、閃いた。


武器は肉を無視するように滑り込み、肉塊は反応する。刃の周囲が膨れ、濡れた音を立てて裂け、黒い膿が噴水のように吹き出した。地面に落ちると蒸気を上げる。怪物はよろめき、眼を怒りでぎらつかせた。


イザベルが戻り、剣を突き立てて電撃を解き放つ。怪物は痙攣し、四肢を狂ったように震わせた。


デレクは刃を引き抜き、再び突き立てた。


電撃が途切れる。


化け物は衝撃を振り払い、残った鉤爪でデレクを掴んだ。


NOVAが軋み、HUDには赤い花のようにエラーが咲き広がる。


――構造強度がさらに一〇ポイント低下。もう限界だ。あと一秒で装甲は崩壊する。


その瞬間、鋭い叫び。


アリラが歪んだ腕に飛びつき、両手でしがみつく。指が深く食い込み、黒い液体が彼女の腕を伝った。


怪物は咆哮し、デレクを解放する。


デレクはためらわず刃を振り上げ、一撃で腕を切断した。黒い体液が飛び散る。


アリラは直前で手を離し、よろめきながら後退した。半身は黒い泥にまみれ、白く残ったのは瞳だけ。


デレクは再び斬った。再生が止まった理由はわからない――だが考える必要はない。腕を潰した。次は脚だ。


彼は膝に見える関節を狙い、刃を振り下ろした。


化け物は咆哮したが避けられない。脚が折れ、巨体は前に崩れ落ちた。唸りではなく、泣き声のように。


デレクはさらに斬る。NOVAのアクチュエーターが過負荷警告を出すが、無視した。イザベルもツンガも加わり、斬撃と爆炎を浴びせる。


アリラは立ち尽くし、自分の手を見つめていた。


デレクに考える余裕はない。ただ切り裂く。終わりのない肉体を、顔も眼も角も、次々に現れては斬り払った。


時間は血と肉と死に溺れる夢のように溶けていく。以前もこれを殺した。だが蘇った。だが今回は違う。記憶すら消えるまで止まらない。


だから斬った。


そして斬り続けた。


イザベルも隣で剣を光で弾けさせ、捻じ曲がった四肢や頭を斬り裂く。二人は一撃ごとに鋼と怒りのリズムを刻み続けた。


――やがて、斬るものはなくなった。


隣でイザベルは剣を静かに下ろした。刃の輝きは消え、顔は血の気を失い、これまでに見たことがないほど蒼白だった。彼女は片膝をつき、剣に体を預けてようやく立っていた。

デレクはイザベルを見た。


【デレク】「エリアスはどうだ? まだ厄介事を起こしてるのか?」


イザベルは首を振った。


――オルビサルのウォーデンが、自らの同胞を――しかも司祭を――斬らねばならなかったのだ。


【イザベル】「エリアスの心配はいりません。」


デレクも動きを止めた。胸は洪水のように荒れ狂い、戦いが終わってもなお収まらない。兜の内側で息がざらつき、鍛冶場のふいごのように響く。


HUDが点滅し、エラーメッセージに埋もれながら新たな通知がちらついた。


――《オーリックレベル上昇。》


《ブロンズレベル3達成。利用可能なアップグレード:1。》


さらに。


――《オーリックレベル上昇。》


《ブロンズレベル4達成。利用可能なアップグレード:2。》


さらに。


――《オーリックレベル上昇。》


《ブロンズレベル5達成。利用可能なアップグレード:3。》


三段階も一度に上がるとは……。これほど短時間で上昇したのは初めてだ。


あの怪物は一体どれほど強大だったのか。あるいは、エボンシェイドで斬り倒したアンデッド一体一体まで計算に入っていたのかもしれない。


巨大な黒刃は、鎖が墓石を引きずるような音を立てて収縮し、NOVAの腕は元の大きさに戻った。


ツンガは地面に座り込み、杖を膝に置いた。イザベルはまだ息を荒げながら剣を泥に落とし、足を引きずってアリラに近づいた。


少女は口を開けたまま、ただ見つめていた。


【イザベル】「気分はどう?」


アリラは答えられず、呆然と目を見開いたままだった。腕はだらりと垂れ下がり、力が抜けている。


イザベルは肩を掴み、視線を合わせ、強く抱きしめた。


その様子を見て、デレクは喉に結び目を感じた。まるで宇宙そのものが、この子を狙っているかのようだ。


だがアリラは反応しない。抱き返すこともなく、気づいている様子すらない。


【???】「デレク?」


――脈が止まった。ユキ?


違う……。【デレク】「話せ、ヴァンダ。」


【ヴァンダ】「……終わりました。あの存在を支えていたエネルギーフィールドは完全に消散しました。」


【デレク】「よし。ずいぶんかかったな。」

だがヴァンダの声はいつもの冷静さを欠いていた。


【デレク】「……隠してることがあるな?」


【ヴァンダ】「一団が接近しています。エネルギー反応から判断すると、先ほど破壊した存在と何らかの関連があるようです。」


デレクはミニマップを開く。北から赤い点が七つ。寺院の方角だ。その先は密林しかない。胃が重く締め付けられる。


【デレク】「まさか……またアンデッドじゃないだろうな?」


【ヴァンダ】「否定。体温は正常です。」


イザベルが隣に来た。

【イザベル】「どうしました?」


――今度は心まで読めるってのか?


デレクはヘルメットを開いた。熱気と腐臭が流れ込み、吐き気が込み上げる。酸を飲み下し、顔をしかめた。


【デレク】「仲間が来る。今度は生きてる連中だ。」


イザベルはロスメアへ続く道を南に見やる。

【イザベル】「聖なる守護兵……ですか?」


デレクは首を振った。

【デレク】「北からだ。」


イザベルは眉を上げる。

【イザベル】「北? でもそこには――」


【ツンガ】「密林だ。」低く言い放つ。「ナコリ住まぬ。強き獣隠れる。空から強き《球体》落ちる。昔、シルバーも落ちた。」


デレクは眉を上げた。

【デレク】「シルバーか……。じゃあ、来てる連中は地獄を抜けてきたわけだ。」


七つの人影が寺院の背後から現れた。百メートル先。黒い外套に身を包み、フードを深くかぶっている。寺院を過ぎると横一列に広がり、完璧な歩調で前進した。兵士の行進か、儀式の信者の列か――。


デレクたちは横一列に並び、待ち受けた。


その時、何かが彼の装甲の手に触れる。センサーが伝える。小さく冷たい手。アリラだった。彼女は隣に立ち、接近する影を見つめている。


――もう恐怖に縋るだけの子供ではなかった。地獄を歩いた後で、再び足を踏み入れる覚悟すら宿しているように見えた。


その手は守られるためではなく、むしろ彼を守ろうとしているかのように感じられた。


七人は十メートル手前で止まった。首には黄金のペンダント。黒と紫で逆さに描かれた砂時計の印が刻まれている。


それはオルビサルの紋章ではなかった。黄金の円も放射光もどこにもない。


デレクは息を吐いた。また狂信集団か。この世界には狂信者ばかりだ。


――これ以上「メサイア」と呼ばれないことを願う。


中央の人物が一歩前へ出た。広い肩、フードの下に暗い髭の影。彼は手を上げた。


デレクも真似て手を上げ、鼻で笑う。

【デレク】「ヴァンダ、こいつら何者だ?」


【ヴァンダ】「スキャン中。危険なエネルギー反応は検出されません。ただ……愚か者と呼び続ければ変わるかもしれません。」


【???】「我らのゴーレムを破壊したのはお前たちか?」

声は強く、威厳があった。


デレクは散らばった残骸を指差す。

【デレク】「これがお前らのか? はは。あの辺に散らばってる残骸を見りゃ、地元の司祭が杖で呼び出したもんだと思ってたぜ。」


【???】「司祭は我らの支配下にあった。生命のエネルギーが精神を圧倒した後、我らは介入せざるを得なかった……抑えるために。」


デレクは顎髭をさすり、ゆっくり頷いた。

【デレク】「つまり、お前らが全部仕組んだってわけか。」


男は一瞬逡巡し、首を振った。

【???】「死の教団は我らより前から存在する。この土地は聖域。土は生命に満ち、作物は実り、死者は生者と共に歩く。」


――死の教団、か。


【???】「その司祭は生と死の均衡を乱した。我らはそれを感じ、秩序を正すために来たのだ。」


デレクは拳を握った。

【デレク】「で、その解決策があの化け物か? 助けるどころか村を潰したんだな。」


【???】「ゴーレムは罰だ。オルビサルの教会が死を冒涜した、その報いだ。」

男は壊れた家々を指す。

【???】「使命は村を滅ぼし、次にロスメアへ進軍することだった。大司祭ウリエラ自身にその力を示すために。そうすれば彼女も干渉をやめるだろう。」


イザベルが一歩踏み出した。

【イザベル】「狂っている……。ただ言いたいことを通すために、虐殺を正当化するなど。」


男は彼女に向き直り、冷たい声で告げた。

【???】「ウォーデンよ、その言葉を上官に伝えろ。我らはただ愛する者と共に、死者も生者も平穏に暮らしたいだけだ。だが、それを弱さと誤解するな。」

そして吐き捨てるように言った。

【???】「ここで戦った怪物など、取るに足らぬ。」


デレクは鼻で笑った。

【デレク】「ああ、十分に敬意は伝わったよ。エボンシェイドの市民をまとめて一つの腐った肉人形に詰め込みやがってな。芸術的だ。」


【ヴァンダ】「デレク……。強がれる状態ではありません。」


彼は無視した。

【デレク】「それに家畜まで混ぜたろ。人間の頭に牛の頭をつけた傑作。悪夢を通り越して笑えたぜ。」

胸を軽く叩き、皮肉を込めて言った。

【デレク】「心に響いたよ。」


男の表情は動かない。

【???】「死は常に美しいとは限らぬ。時に醜悪である。だが、そうでなければ命はこれほど輝かぬ。」


デレクは鼻を鳴らした。やっぱりな。この世界の狂信者は、みんな自分の残虐を美辞麗句で飾り立てやがる。

【デレク】「結局は命を壊すんだろ。特に自分らの都合がいいときにな。」


男は当然のように頷いた。

【???】「その通りだ。生と死――同じ硬貨の裏表。片方からもう片方へ移ることに意味はない……それがいつ起きるかを決めることにも。」


デレクは首を振った。無駄だ。狂信者と議論するのは鳩とチェスをするようなもの。いくら論理で駒を進めても、鳩は盤をひっくり返して台無しにするだけだ。


【???】「伝えるべきことは伝えた。」

フードの男は声を硬くし、アリラを指差した。

【???】「我らは行こう。だがその前に――少女だ。彼女は我らのものだ。」

ここまで読んでいただきありがとうございます!

ついに怪物を倒しましたが、新たな敵勢力が姿を現しました。

次回もどうぞお楽しみに。

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