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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第二章 聖都の影と覚醒の機構
55/102

第55章: 覚醒する機神:NOVA・アセンダント

※ご閲覧ありがとうございます!


今回の章では、ついにNOVAが“進化”を遂げます。

異世界と科学の融合が、どんな結末をもたらすのか――どうぞお楽しみください。


デレクは全速力でイサラの研究室に飛び込んだ。


イサラは振り向き、目を大きく見開いた。顔は青ざめ、巻き髪は完全に暴走中だった。


【イサラ・ミレス】「デ、デレク!? ちがっ……違うのよ、私そんなつもりじゃ――!」


【デレク】「何が起きた」

息が荒く、声には刃が混じっていた。


部屋の中央、石の台の上にNOVAが展開されていた。

基盤に刻まれた複雑な模様が、青く柔らかく脈動している。


修理用のボットたちがアーマーの周囲を浮遊し、光るツールを手に静かに作業していた。

だが、その内容は謎だった。


【デレク】「ヴァンダ、聞こえるか」

何度も呼びかけている。だが――沈黙。


イサラが一歩近づき、目が飛び出しそうな勢いで叫んだ。


【イサラ・ミレス】「さっきまでヴァンダと話してたの! 神経インターフェースのテスト中で、普通だったのよ! でも急に途中で黙って……それっきり。返答なし。完全に沈黙……!」


彼女は両手を胸に押し当て、震えていた。


【デレク】(説明してる暇はねぇな。AIに脳卒中なんて起きるわけないし、風邪ひくわけでもない)


無言になったってことは、バグった。

シンプルな話だ。


通信系の障害ってだけかもしれない。

ヴァンダ自体は問題なく動いてるかもしれん。


【デレク】(神経接続に直接アクセスできりゃ、直せる)


そのままNOVAへ飛び込む。


脚部、腕部、胸部モジュールが一気に装着され、最後にヘルメットが密閉。

目の前にディスプレイが灯った。


一見すると、正常そうに見えた。


だが――いつもの表示類が、全て消えていた。


代わりに、中央に浮かぶのは文字とも呼べぬ奇怪な記号。


 ⟪ṨⱤȔⱤ∆ØṰḢḠ⟫


背筋を冷気が走り、耳の中で鼓動が鳴った。


【デレク】(このメッセージ……)


前回、これが表示されたとき、NOVAはコラールノードの力に接続し、主融合炉が暴発寸前になった。


今回も同じなら……ただの爆発じゃすまない。

《砦》ごと吹き飛ぶ。


ロスメアの街にも瓦礫が降ってくるだろう。


【デレク】(「テストしてただけ」でこうなるわけがない)


歯を食いしばる。


【デレク】(ちくしょう、俺が離れてたのはたった三十分だぞ)


スーツ内で拳を握ろうとしたが、手のアクチュエーターは反応なし。

生命維持も動いていない。


【デレク】(全部ロックされてる……まるで俺が自分のアーマーから締め出されてるみたいだな)


リアクターの状態も「不明」。


【デレク】(すでにメルトダウン中かもな)


今は目立った異常はない。

でも、だからって爆発しない保証にはならない。


【デレク】(急げ。何が起きてるのか突き止める)


彼は手動で緊急脱出し、アーマーから飛び出した。


心臓が野獣のように暴れている。


汗まみれの髪をかき上げ、まるで自分の家が燃えてるのを見てるような目でアーマーを睨みつけた。


その瞬間、ヴァンダの声が脳内に響いた。


【ヴァンダ】「デレク。……今なら、聞こえますか?」


【デレク】「ヴァンダ!? お前、無事か? 何が起きた! 融合炉は? 爆発するのか!? ……何をやったんだ?」


【ヴァンダ】「それが問題です。「何もしていない」状態で、現在は制御系が完全に無反応です。これは――深刻な事態かもしれません。システムのステータスにも、アクセスできません」


【デレク】「「深刻」ってのは、どの程度だ?」


【ヴァンダ】「私は診断を実行していました。イサラさんは……彼女の「魔法プラットフォーム」を用いて、私には理解できないエネルギーを観測していました」


【イサラ・ミレス】「あ、えっと! 魔力フィールドの安定性をチェックしてたの! だってこのアーマー、エネルギー量が常軌を逸してるでしょ!? だから、改造中はちゃんと見てないとマズいのよ!? で、暴走したら……もう、《砦》が消し飛ぶレベルでヤバいっていうか……!」


【デレク】「つまり、お前ら二人揃って「見てただけ」ってことだな?」


歯ぎしり混じりにうなりながら言い放つ。


【デレク】「で、何も分からないと。原因も対処法もな」


【ヴァンダ】「結果としては、はい……。ボットたちが急に起動して、現在使用中の光る棒を取り出しました」


【デレク】「あれか。……何だ、あれ?」


【イサラ・ミレス】「さ、さぁ……どんなゴーレムかは分からないけど……あなたが来る前には見たことないタイプよ……!」


【デレク】「ゴーレムじゃねぇ。あれは俺の世界の「テック」だ。まあ、全部ってわけじゃねぇけどな。問題は――あの棒で何をしてるのかが分からないってことだ」


【イサラ・ミレス】「えっと、えっと……見た感じ、「魔力フラックス安定装置」に似てるかも……? 魔力をゴーレムの内部で適切に流すための道具よ! 脚を動かしたり、腕で物を持ったり、それから――」


【デレク】「魔法を撃たせたり、か?」


【イサラ・ミレス】「あ、そうそうそう! たとえば「火の魔法」を撃たせたい時は、「火石」を魔力源にして、特定部位にエネルギーを流すの。で、安定させてからルーンを刻むと、その部位が呪文を撃てるようになるの!」


【デレク】「……なるほどな。こっちの魔法ってのも、構造は俺の世界の兵器システムと変わらねぇじゃねぇか」


【デレク】「理屈は分かった。けど、それができるのか?」


【イサラ・ミレス】「無理無理無理。今言ったのは基本原理よ? 実際の手順は超複雑なの! 私、何年も研究してて、やっと完成したのがあのカエルゴーレムだったのに……あれ、壊されたし……」


【ヴァンダ】「あ……それは、本当にすみません、イサラさん……」


【デレク】(人工ゴーレム? じゃあ、天然モノもあるのか……? いや、考えるだけムダだな)


【デレク】「で、仮にそのプロセスを、うちのボットたちがNOVAに対して実行してるとしたら?」


【イサラ・ミレス】「……私が数年間かけてできなかったことを、あの子たちがやってるなら……それは、もう……奇跡、よ」


【デレク】「あー、はいはい。「奇跡」ね。合理的な思考はどこ行ったんだよ」


ボットたちはNOVAの周囲をくるくる回りながら、まるで儀式でもしているように動いていた。

見えない糸をノードからノードへと繋ぐように、サブシステムを再配線していく。


【デレク】(誰が命令出した? 勝手に意思持ったのか? だとしたら……目的は?)


以前、奴らには助けられた。

信用したい気持ちはある。だが――


【デレク】(ボール状の魔法とプラズマの爆発に包まれて死ぬのは、ゴメンだ)


【デレク】「っざけんなよ。あれは俺のアーマーだ。俺の手で作ったんだ。黙って見てるだけとか……あり得ねぇ」


目を細めて、イサラに向き直る。


【デレク】「なぁ、イサラ。「奇跡」……奇跡ねぇ。言葉のチョイス間違ってんだろ。せめて現実的に考えてくれよ。あいつら、今何やってるのか見えるか? それと、NOVAが完全に沈黙してる理由は?」


【イサラ・ミレス】「え、えっと……とりあえず、計測してみる! たぶん、測定すれば何か分かるかも……!」


彼女はゴーグルを装着し、作業台からごちゃっとした木製の道具を手に取った。

上に光る石がくっついていて、取っ手はガタガタ。即席で作ったのがバレバレだった。


【デレク】「……お好きにどうぞ」


イサラがNOVAに近づき、石をヘルメット付近へかざすと、淡い青い光が点滅した。

彼女は石を下に移動させ、胸部から脚部までじっくりスキャンしていく。

再び上に戻り、今度は全体をなぞるように動かした。


途中、光が消えかけると、少し戻して位置を修正し、光がまた点くまで慎重に操作していく。

そのたびにノートに走り書きしていた。


ボットたちは依然としてNOVAの作業を続けていたが、イサラの動きにだけは軌道を調整して干渉しないようにしていた。


【デレク】(止めようと思えば止められた……けど、やめといて正解だったかもな)


【デレク】(何かが進んでる。そして、それが終わるまでは……NOVAは帰ってこない)


【デレク】(信じるしかねぇのか……ちくしょう)


イサラはNOVAの足元から立ち上がり、何かをぼそっと呟いた。

計測器をテーブルに置いて、ノートに最後の数行を書き足す。


彼女が顔を上げ、ようやくデレクの存在を思い出したようにまばたきした。


【デレク】「で? 結果は?」


【イサラ・ミレス】「うぅーん……魔力の流れは分かるの。でも、あなたの技術は私、何も知らないから……あの子たちが何してるかまでは解釈できないのよ。これ、スーツ内部のエネルギー流をスケッチしたんだけど、意味ある……?」


彼女はノートを手渡した。


そこには、NOVAの見取り図に魔力の流れを示す矢印やベクトルがびっしりと描かれていた。


【デレク】「……こりゃあ……パワーダクトのレイアウトそっくりだな。なぁ、ヴァンダ。どう見る?」


ノートをNOVAのセンサーにかざす。


【ヴァンダ】「一致率は97%です。――すごいですね、イサラさん。素晴らしい分析力と描画力です」


【デレク】「……なんか、お前ら仲良くなってんじゃねぇか」


【イサラ・ミレス】「パワーダクトって、なに?」


【デレク】「プラズマをサブシステムに送る「管」だ。動力の通り道ってやつだ」


【イサラ・ミレス】「……???」


【デレク】「つまりだな。魔法とか抜きでもアーマーが動くのは、プラズマを流す「配線」があるからだ。そこに魔力が流れてるってことは――」


【イサラ・ミレス】「あなたのゴーレムたちが、NOVAの「パワーダクト」に魔力を通してるってことね!」


【デレク】「だな。……で、そのためにプラズマの供給を止めたってワケか。干渉を避けるために」


【デレク】(……俺、今「魔力」って自然に言ったよな。終わったな)


イサラが目を見開いてロボットたちを見つめた。


そのとき、ちょうど彼らの作業が終わったらしく、静かに床へ降り立った。

光るツールはすでに体内へと格納され、音も出していない。


【ヴァンダ】「――作業は、完了したようです」


【デレク】「……完了? ……って、何が?」


【ヴァンダ】「お見せしたいものがあります」


【デレク】「……嫌な予感しかしねぇな」


【ヴァンダ】「中に入ってください。――ご自身の目で確認するのが一番です」


デレクはため息をつきながらNOVAに乗り込んだ。

モジュールが一つずつ閉じていき、最後にヘルメットが密閉される。


いつものように、ディスプレイが目の前に点灯する。


――あの異形の文字は、消えていた。


代わりに、さらに不穏なメッセージが表示されていた。



《プロセス完了》


《NOVA、修正完了》


《新たな指定名へのアップグレード、完了》


《NOVA・アセンダント 起動準備完了》


最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


この章が気に入っていただけたら、ぜひブックマークと評価をお願いします。

感想も大歓迎です!今後の展開にもご期待ください。


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