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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第二章 聖都の影と覚醒の機構
53/102

第53章: 異世界技術と“神の力”の交差点

第53話では、ノヴァの新たな機能がついに実戦テストされます。

暴走する魔炎、幻影の囮、未完成の黒ミサイル――

そして現れるガラス直属の使者、モルシャント。

《砦》に集まり始める権力者たちの影とともに、物語は次の段階へ。

デーモンが鋭い鉤爪で襲いかかってきた。

だが、戦術情報中継装置が軌道を先読みしていた。


【デレク】「甘いな」


デレクはあっさりとかわし、重ブーツをデーモンの腹に叩き込む。

魔法で強化されたアクチュエーターが加わり、衝撃は凄まじかった。


ゴギャッ!


乾いた音とともに、クリーチャーは吹き飛ばされ、数メートル先の床に転がった。


デレクは眉ひとつ動かさずディスプレイを操作し、ロックオンして即座に発射。

肩のポッドから真紅のマイクロミサイルが複数発射され、アーチを描いて標的へ向かう。


着弾と同時に、炎柱が爆ぜる。


グワァァァアア――!!


クリーチャーの咆哮は、怒りと苦痛で満ちていた。


炎は一向に消える気配を見せない。

イサラがミサイルの赤いクリスタルに注いだ魔力――

そして、焼かれることで逆流するデーモン自身の魔力が、逆に炎を加速させていた。


自己燃焼する魔炎。


【デレク】「……いいね」


小さく呟き、次弾を準備。今度は紫色に輝く弾頭だった。


発射と同時に、着弾点を中心にノヴァの幻影が十数体出現。

クリーチャーをぐるりと取り囲んだ。


イサラの理屈では、吸収したブロンズ級《《球体》》の力を使えば、幻影の性能を上げられるはずだった。


……が、起動方法がさっぱり分からない。


精神操作? HUDのプロンプト? 神経フィードバック?

どれも反応なし。


イサラもお手上げだった。

《《球体》》の力は通常、チャクラと融合させたアセンデントが「本能的」に扱えるものらしい。


当然、デレクにそんな仕組みはない。


炎が消えると、クリーチャーは混乱したように頭を振り、周囲を見渡した。

その肉体は、筋肉と骨の装甲が不気味に融合し、背中からは赤く光る棘が突き出していた。


目は、細く長い赤い裂け目。

その光に、冷たい殺意が宿っていた。


(再現度、高すぎんだろ……)


シミュレーターであることは分かっている。

危険はないとイサラは言っていた。

だが、あの化け物に触られたくはない。それだけは確かだ。


クリーチャーが幻影の一体に突っ込み――

接触と同時に像は霧のように消える。


ガルァア!!


咆哮を上げてさらに二体へ突進――

結果は同じ。


【デレク】「ふっ……バカめ」


次は、黄色い先端のミサイルを装填。


発射。


ビシュッ!


ミサイルは一直線にクリーチャーへ飛び、胸部に命中――

眩い閃光が弾け、部屋全体が真昼のように明るくなった。


キィィィィィッ!!


甲高い悲鳴に、思わず顔をしかめる。


【デレク】「音、リアルすぎだろ……」


ぼそっと毒づく。


さて、そろそろトドメだ。

黒い弾頭を選択。


(こいつは何してくれるかな……)


思わず口元が歪む。


その瞬間――


【イサラ】「それはダメぇぇぇっ!!」


後方から、パニックそのものの声が飛んできた。


【デレク】「は? なんで? ここってそういう試験する場所だろ?」


眉を上げつつ問い返すと、イサラが唐突に視界に現れた。


(転送能力でも持ってんのか……?)


否。制御室にいるはずの彼女がここにいるわけがない。

これは――幻影。


【イサラ】「あれね! あの黒いの、破壊エネルギー入りなの! まだちゃんと制御できないの!

現地用なの! シミュレーターで使ったら、えっと、ヤバいの! ごめんねっ!!」


【デレク】「そりゃまた……面白そうだな」


肩をすくめつつ言った。


【デレク】「まあ、吹き飛ばす寸前だったけどな」


にやりと笑う。


【イサラ】「ちょ、ほんとごめんってば! だって、ダメなの常識だし……

あなたが知らないって、すっかり……わ、私、完全に……」

【イサラ】「しかもっ、さっき弾倉から抜いたと思ったのにっ!」


【デレク】「落ち着けって。分かってる」


【デレク】「異世界の男と、こんなクレイジーな武器いじってんだ。

そりゃ何かしら抜けるだろ。……でもな」


【デレク】「本番で初めて使う武器ってのは――

たいてい死に直結する」


【イサラ】「……うん。ほんと、そのとおり」


【イサラ】「だから、それは非常用扱い! テストなんて絶対ダメ! 緊急時限定! フィールド限定! 分かった!?」


【デレク】「ああ、了解」


シミュレーター内のデーモンは、まだ床を這いながら立ち上がろうとしていた。

骨の棘が石をこすり、煙が全身から立ち上っている。


腕の一部はすでに吹き飛んで、遠くに転がっていた。


それでも、まだ動こうとしている。


【デレク】「しぶといな……」


デレクはプラズマ砲を展開。


チャージ完了――


ドン!


二発の黄色いボルトが一直線に放たれ、デーモンの頭部を撃ち抜いた。


バギャッ!!


苦しげな叫びを上げ、光の粒に砕け――

やがて、すべてが消えた。


通知なし。

レベルアップも、報酬もなし。


【デレク】「……はい、解散。クソつまんねぇ」


背後で拍手が起こった。


【イサラ】「わーっ! やっぱりすごいっ!

ノヴァの機動性も火力も、《《球体》》から得られるエネルギーを完全に超えてるよ!

もう、次元が違うって感じ!」


【デレク】「まあな」


肩を回しながら言った。


【デレク】「ノヴァは魔法オンリーじゃねぇ。

プラズマ技術と、そっちの「魔力」のハイブリッドだ」


【デレク】「それに――お前のクリスタルとルーン、

それを俺のリペアボットが組んだミサイル。

あれ、もう実戦で通用してる」


【イサラ】「うわあ……ほんと!? 嬉しいっ!

ただ、まだ不安定な成分が混ざってて、たとえば一つでもバランス崩れたら、えっと……」


【デレク】「ドッカーン、だな」


【イサラ】「そ、そう、それそれっ!」


ガチャ、カシャン。


ノヴァが静かに展開し、花が開くように部位が解放されていく。

デレクは軽やかに飛び降りた。


【イサラ】「うひゃあ〜〜! やっぱすごいっ!

ここ《砦》で初めてクリスタルいじったとき以来の興奮かもっ!」


胸の前で手を握りしめ、ぴょんと跳ねる。


【デレク】「……感謝すべきは、むしろ俺のほうだな。

お前がいなきゃ、ここまで来るのに数年はかかってた」


【イサラ】「でもでも、私一人じゃ絶対無理だったもん!

あの爆発頭なんて、どうやって作ればいいかすら分かんなかったし!」


灰青の瞳が、きらきらと揺れている。


イサラが一歩近づき、頬を赤く染めていた。

息が少しだけ荒い。


(……風邪か?)


【???】「カシュナ」


滑らかな声が響き、空気が凍った。


シミュレーターの入り口に立っていたのは――

エラスマス・モルシャント。


その顔には、すでに観察済みであることが滲んでいた。


まっすぐな背筋。威圧感皆無のくせに、なぜか重たい空気。

その硬さは、着ている過剰に装飾されたローブと完全に一致していた。


ノヴァを警戒するように見やりながら室内へ入り、デレクへ向き直る。


【エラスマス】「《砦》でのご研究の進捗、いかがでしょうか」


【デレク】「おかげさまで、最高だな」


にこにこと笑いながら返す。


【デレク】「イサラは超優秀だ。ロスミアにしては、もったいないくらいだぞ?」


【エラスマス】「……ご評価、光栄です。

我々は、彼女の「独創的な取り組み」を支援するよう、上層部から強く……「推奨」を受けております」


【エラスマス】「同時に、彼女の活動内容については《評議会》への詳細報告が義務付けられております。

特に、例えば――《砦》内で何らかの「爆発」が確認された場合には、なおさらです」


(言い方がもう完全に嫌味だな)


【デレク】「ほぉ、それは是非とも伝えてくれ」


にやり。


【デレク】「ユリエラにもさ。俺の新型ミサイル、かなり「詳細」あるからな」


ぽん、と男の肩を叩く。


グラッ。


わずかに、よろけた。


【イサラ】「……っ」


声を出せないまま、息を飲み込む。


エラスマスは目を細め、表情を整えて咳払い。


【エラスマス】「それと、もう一点。

《橋》での事件に関して、あなたが期待されたほど協力的でないと伺っております」


【エラスマス】「ご研究を最優先とされるのは理解いたしますが、同様の事態の再発を防ぐためにも、捜査協力は不可欠かと」


【デレク】「うーん……でもなぁ。

もう一回やってくれてもいいかなって、正直思ってる」


視線がぶつかる。


笑っていない。


【デレク】「今度は、新型ミサイルの“実戦データ”がたっぷり取れるからな」


【エラスマス】「……なぜ、常に話を複雑にされるのですか」


【エラスマス】「結果がどうであれ、あなたの……ご研究には一切干渉いたしません」


最後の「ご研究」に込められた皮肉がすごい。


【デレク】「それは安心だ」


笑みが戻る――が、刺さるほどに鋭い。


【デレク】「こっちが難しくしてるわけじゃねえ。

この腐った世界がそうしてるだけだ」


ぽん、とまた肩を叩く。


【デレク】「ギャラスにもよろしくな。他にまだあるか?」


【エラスマス】「……実はございます」


鼻から息を抜きつつ、わざとらしく言った。


【エラスマス】「お忙しいとは思いますが――

神聖大宰相ルシエル・オスラン閣下より、あなたに謁見を希望する旨のご伝言が届いております」


【デレク】「……お前、正しかったな。珍しいけど」


肩を回しながらぼそっと言う。


【デレク】「残念ながら、今の俺は忙しすぎてな。

政治家と遊ぶ時間なんて、どこにもねぇよ」


エラスマスが目を瞬かせ、口を半開きに固まる。


(かわいそうなくらい固まってるな、こいつ)


【エラスマス】「し、しかし……閣下はこの大陸で最も――!」


【デレク】「分かってるよ」


【デレク】「会うさ。「できるだけ早く」な。

あと、「めちゃくちゃ楽しみにしてる」って、あっち風の社交辞令で伝えてくれ」


【エラスマス】「……かしこまりました」


ローブの裾を引きずりながら、彼は無言で退室した。


【イサラ】「か、神聖大宰相が……ロスミアに?」

【イサラ】「ありえないよ……ここ、ただの辺境なのに……!」


【デレク】「それだけ、「話題」になってるってことだろ」


【デレク】(クソッ……権力者どもが、続々と穴から這い出してきやがる)


ノヴァの装甲が静かに展開し、花のように解放されていく。

デレクは足元に軽く着地した。


【イサラ】「それにしても、すごい……!

あれだけのパフォーマンスを引き出せるなんて……

やっぱり、あなたのアーマー、ただの融合体じゃない。

本当に、「次の段階」に進んでる気がする」


【デレク】「問題は――」

【デレク】「《《球体》》の力を、どうやって引き出すかだ」


【デレク】「剣から火、棒から雷。そんな芸当、ノヴァにできないわけがない。

でも、やり方がさっぱり分からねえ」


【イサラ】「うーん、それは……難題だね」


顎に手を当て、首をかしげる。


【デレク】「理由は?」


【イサラ】「魔法って、術者の「意思」で発動するの。

チャクラに《《球体》》を埋めて、体を通して、武器とかに流すんだよ」


【デレク】「でも、俺は「体を通してない」。

エネルギーは、ノヴァの中にある」


【イサラ】「……でしょ? だから、普通は無理なの」


【イサラ】「でももし、ノヴァと一体になるくらいの深い繋がりを持てたら――」


バチッ!


まるで回路が繋がったように、デレクの脳内に電撃が走った。


【デレク】「……お前、天才か」


【イサラ】「えっ!? な、何か言ったっけ私っ!?」


デレクは思わず彼女の腕を掴む。


【デレク】「ノヴァの操作は、神経インターフェースだ。

脳から直接指令を送ってる。

しかも、スーツからの感覚も、俺の脳に返ってくる。

「感じる」んだ。ノヴァの感触を、俺自身のものとして」


【イサラ】「え、えええ……すごっ……神経接続って……

そんなの、初めて聞いた……!」


【デレク】「だから、理論上は《《球体》》の力も――

「繋がれば」扱えるかもしれない」


【イサラ】「そ、それ……やってみようよ!

やばい、やばい! 本当にいけるかも! あ、でも、でもでも、もし脳が焼けたら――」


【デレク】「まあ、燃えるかもしれんな」

【デレク】「だが、試す価値はある」


【イサラ】「……だよね」


イサラは照れたように肩に手を置いたが、すぐ「あっ」と言って引っ込めた。


【デレク】「それじゃ、手順を教えてくれ」

【デレク】「この世界の奴らがどうやって《《球体》》の力を使ってるのか、細かくな」


もう、後手に回るのは終わりだ。

今度は、こっちから攻める番。


この世界が、俺のことを「読み切った」つもりなら――


【デレク】(思い知らせてやる)


――本当のショーは、まだ始まってすらいない。


―――


少し時間が経ち、イサラがメモを取っていると、デレクがふと口を開いた。


【デレク】「なあ……さっきのアレ。

あのデーモン。……実在するのか?」


イサラの手が止まり、しばし沈黙。


【イサラ】「……するよ。

長時間、未制御の魔力にさらされた生命体は、まず精神が壊れて、

次に体が歪むの」


【イサラ】「最後には、もう「何か」ですらなくなる。

痛みと本能だけで動く、名もなき怪物。

あれは……そのなれの果て」


【デレク】「ジャングルじゃ、見たことないな」


【イサラ】「シャーマンが見張ってるから。

「精霊」の導きで、完全に変異する前に処理される」

【イサラ】「場合によっては、殺される。

場合によっては、縛られて――使われる」


(使う? あんなもんを?)


【デレク】「で、ああいうの……どこに出る?」


【イサラ】「……「死地」。

《《球体》》の汚染で、土地ごと腐った場所。

動物も植物もいない。音もない。

そこにあるのは……腐敗、沈黙、そして「それ」だけ」


【デレク】「数は?」


【イサラ】「……多すぎて、把握できないくらい。

それに、年々増えてる」


【イサラ】「高位の《《球体》》が落ちた場所では、変異が速いの。

強い力ほど、壊すのも速い」


【デレク】「……人間も、そうなるのか?」


もう答えは分かっている。

でも、言わせたかった。


イサラはゆっくり、力なく――うなずいた。


腹の奥が、ひどく冷えた。

顔が、かっと熱くなる。


【デレク】(このシステムを作った奴ら……全員デーモンになって地獄で焼かれてろ)


パタン。


イサラが手帳を閉じる音に、思わず肩が跳ねる。


【イサラ】「ひゃっ!? ご、ごめん! 驚かせるつもりじゃ――」


【デレク】「いや、平気だ。ちょっと気が立ってただけだ」

【デレク】「次に進もう。パワーアーマーのアップグレードが必要だ。大幅にな」


【イサラ】「了解! で、何するの?」


【デレク】「《《球体》》の能力を使う方法を探る」

【デレク】「こっちは科学だ。仕組みさえ分かれば、応用はできる。

「使えるかどうか」じゃない。

「どうやって使うか」だ」


【イサラ】「わ、分かった! じゃあ、一から一緒に考えよっ!」


【デレク】「……よし」

【デレク】(覚悟しとけよ、このクソ世界)


お読みいただき、ありがとうございました!

ノヴァとイサラの連携がどんどん進化していく一方で、

デレクを取り巻く政治の圧力も激化していきます。

“次の段階”に進むためには、覚悟が試される――


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引き続きよろしくお願いします!

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