第52章: 制御不能な天才と危険な実験
第52話、投稿します。
今回の主役は、完全にイサラです。
「制御不能な天才」がNOVAにかじりついて、危険な検証が始まります。
そして後半では、またしてもガラスが冷気と共に登場。
言葉より拳が出そうな展開に、デレクの我慢ゲージもそろそろ限界です。
最後に、イザベルの「ため息」が何を意味するのか──
それは読んでからのお楽しみ。
ブックマークや評価、いつも本当に励みになっています!
デレクは、NOVAの周囲をぐるぐる回っているイサラを三十分以上も眺めていた。
彼女はあまりに集中しすぎて、床に散乱したケーブルや工具につまずきそうになっていた。まるで地雷原の中で踊ってるみたいに。
今朝、研究室に着いて、正式にNOVAの調査許可を与えて以来――イサラは一秒たりともアーマーから目を離していなかった。
彼女は魔法の拷問器具みたいな妙な装置を手にして近づいたり離れたり、ぶつぶつ呟きながら、何度も道具を落としたり、拾った場所と全然違う所に放り出したりしていた。
それらの装置はどれも、埋め込まれたクリスタルやルーンが淡く光っていた。
デレクは、散らかったやつらと働いた経験がある。そういう人間には、独自の秩序、いわゆる「制御されたカオス」ってやつが存在していたりする。
……でも、イサラは違った。
彼女は、ただのカオスだった。
しかも、ハイパーで、制御不能な。
彼は、自分が見た「天才」が本物であることを願うしかなかった。でなきゃ、ただの残念な夢想家に高価な実験機材を与えたバカになるだけだ。
部屋そのものは、研究施設というより、古代と魔術がぶつかって化学反応を起こしたみたいな空間だった。
薄暗くて、壁際の石製の作業台には謎の装置が山積み。天井にはアーチ状のパイプとクリスタルが縦横無尽に這い回り、時折パルスのように光を走らせていた。
中央の大理石の台座の上に、NOVAが立っていた。
魔法石の光を受けて、その黒い装甲は微かに光を返していた。
イサラは時折立ち止まってゴーグルを直し、装甲の細部をじっと見つめては、また何かを呟きながら動き出していた。
デレクは腕を組み、じっと彼女の言葉を待っていた。
彼女はたぶん、彼の存在を完全に忘れていた。いや、もう確定だろう。
イサラはNOVAから一歩引き、木の容器から奇妙な黄色い石を取り出した。
それをアーマーに近づけた瞬間、クリスタルが光を放ち――金属のパネルに反射して、関節の溝や胸部の細かい紋様が浮かび上がった。
彼女は眉をひそめて、やっとデレクの方を見た。
【イサラ】「ねえ、このアーマー、どれくらいのエネルギー吸ってるの?」
デレクは肩をすくめた。
【デレク】「言っただろ。鉄ランクの《球体》を数個と、銅ランクがひとつ。」
イサラは首を振りながら、眉をしかめた。
【イサラ】「ううん、それじゃ説明がつかない。この反応、もっとずっと強いはず。」
【ヴァンダ】「おそらく、コラールノードのエネルギー反応も検出しているのだと思われます。」
イサラはビクッと跳ねて数歩後退し、パイプにつまずきそうになりながら壁に手をついた。
目を見開いたまま、デレクとNOVAを交互に凝視する。
まるで、空からドラゴンでも降ってきたかのように。
【イサラ】「ヴ、ヴァンダ!? いたの!?」
【ヴァンダ】「はい、イサラ。最初からずっとここにいます。お困りですか?」
イサラはバツの悪そうな顔で首を振る。
【イサラ】「い、いや、アーマー止まってたし……てっきりスリープ状態かと……黙ってたし!」
【ヴァンダ】「あなたの作業を観察していました。ただ、私にはやや理解しづらかっただけです。ところで、その黄色い石は、何でしょうか?」
イサラは石を持ち上げ、デレクに向けて見せた。
【イサラ】「ただのクリスタル。黄色の《球体》からエネルギーを吸い取ったやつ。今はもう空っぽだけど、強い魔力に近づけると、残留エネルギーに反応してちょっとだけ光るの。」
彼女は石を見つめながら眉を寄せた。
【イサラ】「でも、ここまで強く光ったのは初めて……あなたのアーマーにだけ、こんな反応するなんて。」
デレクはうなずいた。
【デレク】「NOVAはこの星に来た直後、異星のアーティファクト――「コラールノード」のエネルギーを吸収した。普段は沈黙してるが、最近の戦闘で作動して、リアクターが吹っ飛びかけた。」
イサラはギョッとした顔で息をのんだ。
【イサラ】「え、それって……爆発するかもしれないってこと!?」
デレクは真っ直ぐ彼女を見て、静かに答えた。
【デレク】「ああ。たぶん、君が思ってるよりヤバい。」
【デレク】「……だから最初に言っておくべきだったかもな。これは安全な仕事じゃない。俺にとっては日常でも、君にはそうじゃない。」
【デレク】「降りるなら、今がその時だ。」
イサラは一瞬だけ黙り、再びNOVAを見つめた。目には畏れと興奮が入り混じっていた。
【イサラ】「……プロジェクトって呼ぶなら、そういうことにしとこう。でも、これは価値があると思う。リスクを取るだけの。」
【イサラ】「もし本当に……あなたが「カシュナール」なら――」
【デレク】「やめとけ。」
言い切る前に、彼の声が鋭く切った。
【デレク】「救世主とか、オルビサルの使いとか、そういう話で俺を巻き込むな。」
イサラは口を半開きにしたまま、デレクを見つめた。
けれど、すぐに肩から力が抜けて、ふっと息をついた。
【イサラ】「……そう言うと思った。でも、私は《砦》にいるけど、信仰心があって来たわけじゃないの。私がここにいられるのは、《球体》の研究で成果を出したから。」
【イサラ】「私はただ、こういうのが――好きなの。人生、全部かけても惜しくないって思えるくらい。」
彼女は一歩前に出て、そっとNOVAの胸に手を添えた。
【イサラ】「こんな魔法、人生で一度あるかないか……そんなレベルの奇跡よ。」
デレクは薄く笑った。
【デレク】「……そうか。それなら、始めよう。」
―――――
彼はNOVAの背後に回り、小さなスイッチを押した。
金属的なカチッという音とともに、ミサイルランチャーの脇から長方形の物体がせり出す。
デレクはそれを引き抜き、イサラに向けて掲げた。
【デレク】「これが俺の武器のマガジンだ。高威力のマイクロミサイルを発射する。今はほぼ空だがな。」
【デレク】「石を使って新しいミサイルを作れないかと思ってる。魔力を応用して、性質を変えてやるんだ。」
イサラは、まるでドラゴンの卵でも渡されたかのように慎重な手つきでマガジンを受け取った。
指先で金属の滑らかな表面をなぞりながら、刻まれた線や継ぎ目をじっくりと追っていく。
【イサラ】「うわ……この造形、ほとんど完璧。で、この印……これ、ルーン?」
【デレク】「ただのシリアルナンバーだ。」
口元に皮肉めいた笑みを浮かべる。
【デレク】「量産品ってやつさ。」
イサラは無意識にうなずきながら、マガジンの縁に指を這わせた。
カチッという音とともに、小さなミサイルを一本引き出し、手の中でゆっくり回転させる。
デレクは思わず息を止めた。
――それ、手榴弾十発分の火力あるんだぞ。
……渡す前に言うべきだったな。
イサラの眉が跳ね上がる。
【イサラ】「底部に小さな開口部が……それと導管? この部分、スライドで開閉するの? ここから装填する仕様なの?」
彼女は顔を上げて、期待に満ちた目でデレクを見る。
【デレク】「ああ、正解。」
彼はさりげなく、彼女の手をそっと取って制止した。
それ以上いじられたら、冗談抜きで危ない。
イサラはピクッと反応し、一歩素早く後ずさる。
デレクは落ち着かせるように軽く笑った。
【デレク】「このマガジンを量産したいんだ。理想を言えば、クリスタルを使ってエネルギーを注入し、それぞれに特性を持たせる。状況に応じて使い分けられるようにしてな。」
彼は研究室をぐるりと見回した。
【デレク】「ただ……ここでやるのはオススメしない。暴発したら、俺たち粉々じゃ済まない。」
イサラは背筋をピンと伸ばし、丁寧な手つきでミサイルをマガジンに戻した。
【イサラ】「了解。でも、魔法を扱うなら、その仕組みを完全に理解する必要があるわ。「何ができるか」より、「なぜできるのか」の方が重要なの。」
デレクは顎に手を当て、マガジンを見ながらうなずいた。
【デレク】「その通りだな。どっか安全に爆破できる場所が要る。《砦》の中じゃ無理だし……イザベルにまた怒鳴られるのはゴメンだ。」
イサラの目がぱっと輝いた。
【イサラ】「あっ、あるよ! シミュレーター室!」
【デレク】「……シミュレーター室?」
【イサラ】「そう、《球体》の魔法をテストするための特別施設! 幻影の魔物を召喚して、魔法の反応を観察できるの!」
【デレク】「ふーん。で、それはどう動くんだ?」
【イサラ】「えーと、まず幻影魔法で映像を作って、それに岩の魔法で物理的な質量を持たせて、さらに属性魔法で機能を再現する感じ! 超複雑だけど、高性能な防御フィールドが張られてて、銅ランクまでの攻撃ならほとんど耐えられるの!」
デレクは眉をひそめる。
【デレク】「俺のミサイルが、その「ほとんど」に入るかは怪しいがな。」
イサラも一瞬だけ黙ったが、すぐに警戒するように訊き返した。
【イサラ】「……でも、あなたのミサイル、普通のじゃないでしょ?」
【デレク】「まあな。鉄ランクのバリアをぶち抜いたことはある。だが、クリスタルとルーンで強化したやつは……正直、やってみないと分からん。」
【イサラ】「なら決まりねっ!」
そう言って、イサラは勢いよく踵を返した――が、出口の前でぴたりと止まる。
デレクもつられて顔を向ける。
入口に、ガラスが立っていた。
暗がりに縁取られたその姿は、まるで冷たい彫像のように微動だにしない。
彼の視線は、デレクとイサラの間をゆっくりと往復していた。
デレクは眉をひとつ上げ、顎で軽く示す。
【デレク】「おや、尋問官様じゃないか。わざわざ出張ご苦労さん。俺を取り調べに来たのか?」
ガラスは無言で部屋へ一歩踏み出す。
その足音は、規則的で無駄がなかった。
その声は、まるで冷気のように平坦だった。
【ガラス】「君が私のもとに来ると予想していた。昨日までは療養中だったとしても、今日は違う。にもかかわらず、襲撃を指示した者については、驚くほど無関心なようだな。」
【ガラス】「今回は、もう少し協力的であることを期待しよう。」
―――――
デレクは、彼を無視していれば状況が勝手に収まるかもしれないと、甘く考えていた。
だが、ガラスという男は――そういうタイプではなかった。
彼は肩をすくめ、表情一つ変えずに返す。
【デレク】「見りゃ分かるだろ。「カシュナール」を殺したがってる奴がいる。それだけの話だ。」
【デレク】「……それと、「デレク」って呼べ。肩書きは好きじゃない。」
――さて、今度は何を探ってやがる。
まさかもう、カトが黒幕だったって証拠でも掴んだか?
ガラスはわずかに首を傾け、鋭い目つきでデレクを見た。
【ガラス】「それは明白だ。では、君の死によって利益を得る者に、心当たりはあるか?」
デレクは口の端を引き上げた。
【デレク】「ああ、あるさ。整理してやろうか?」
【デレク】「異端者。教会内の敵対派閥。隣国の宗教勢力。それと……」
言葉をわざと切って、まっすぐガラスを見た。
【ガラス】「それと?」
【デレク】「「カシュナール」の登場で一番都合が悪くなったやつだよ。ロスミアの上層部の誰か、ってところだろうな。」
ガラスの顎がほんの僅かに動いた。
【ガラス】「評議会の人間を疑っているのか?」
【ガラス】「目撃者の証言では、ナコリ族の者が魔物に乗って襲撃したとある。君自身、現場で確認しているはずだ。」
【デレク】「ああ、その通りだ。だからって、ナコリが単独で動いたとは限らない。」
【デレク】「あいつら、ジャングルで静かに暮らしてる連中だ。全面戦争になれば滅ぶと分かってる。だが、それを望む奴がどこかにいたとしたら?」
【デレク】「ほんの一言の情報だけで、連中を動かすには十分だ。」
―――――
カトは、自分の部族に命じられたと言っていた。
けれど、あの場所とタイミングを正確に把握していたのは、明らかに《砦》側の誰かが情報を流したからだ。
【デレク】「偶然あのタイミングで、あの橋を渡ってる俺に襲いかかるなんて……そんなの、できすぎてる。」
【デレク】「下手すりゃ――お前自身が仕組んだ可能性もある。」
ガラスの顔が硬直し、眉間に深い皺が刻まれた。
【ガラス】「……君の言葉には、極めて危険な示唆が含まれている、デレク。」
【ガラス】「今後も《砦》に滞在するつもりなら、発言には気をつけるべきだ。」
―――――
その言い草に、デレクの内側で何かがカチリと外れた。
たった一日でこれか。やっぱり、こうなるよな。
【デレク】「俺が言葉を選ぶ人間に見えるか?」
【デレク】「今さら口をつぐむ気はねえよ。でも、いいか――」
一歩、ガラスに詰め寄る。
【デレク】「お前が俺の周りで政治ごっこやるつもりなら、黙って見てるとは思うなよ。」
尋問官はまったく動じない。
その目は、氷を思わせる鋼のように冷たく研ぎ澄まされていた。
デレクは拳を握った。
【デレク】「田舎の狂信者どもになんて、最初から興味ねえよ。研究が終われば、さっさと消える。」
【デレク】「最初からいなかったことにしてくれて構わねえ。」
そして、ピンと指を立ててガラスの胸元を示す。
【デレク】「だが邪魔するなら――割れるのは評議会の窓だけじゃ済まねえぞ。」
―――――
ガラスが背を向け、部屋を出ようとしたその瞬間――
ツンガが、いつの間にか目の前に立っていた。
シャーマンは唇をめくり、黄色く尖った歯をむき出しにして唸った。
まるで喉笛を狙う獣のように、肩を震わせている。
ガラスは一歩退き、視線をデレクとツンガの間でさまよわせた。
【デレク】「落ち着け、ツンガ。」
デレクはわずかに口角を上げた。
【デレク】「尋問官はちょうど帰るところだ。」
ガラスは無言のまま身を正し、浅く一礼して足早に部屋を去っていった。
―――――
デレクは息を吐き、背中にまとわりついていた緊張の重さを振り払う。
ガラスが橋の襲撃事件を追っていることは、ツンガも察していた。
ジャングルに報復が及ぶかもしれないという恐れは、彼の感覚を研ぎ澄ませていた。
……ここにいる間は、あの「狂犬」の首輪も握っておかないとな。
イサラの咳払いが、場に微かな音を戻す。
【イサラ】「えっと……テスト、やるんだよね?」
遠慮がちだが、はっきりとした声だった。
【デレク】「ああ、もちろん。」
デレクはにっこりと笑った。
【デレク】「先に行っててくれ。すぐに追いかける。」
イサラはうなずき、音を立てずに部屋を出ていった。
お守りのチャームが、首元でカチャカチャと揺れていた。
その音が遠ざかるのを待って、デレクはツンガの方へ向き直った。
【デレク】「気持ちは分かる。でも、落ち着け。ここはジャングルじゃない。」
【ツンガ】「お前……わかってない。」
ツンガは低く唸った。
【ツンガ】「村に何かあれば、俺の責任。俺はシャーマン。精霊の声を聞き、民を守る。でも今、精霊は黙ってる。俺は命令を……無視した。」
デレクは苦く笑った。
【デレク】「つまり――あのテレパシーゴリラ、最初から俺を殺せって言ってたわけか。」
【ツンガ】「そうだ。最初から、それが望みだった。」
【ツンガ】「俺は「違う」と伝えた。でも、精霊は理解しなかった。だから――お前はシャイタニ。精霊は、お前の未来に破滅を見た。でも、それ以上は見えない。ただ、「お前を生かしておくのは危険」と考えた。」
【デレク】「つまり、「精霊の意図を探る」とか言ってたのは全部嘘だったんだな。」
【デレク】「お前はちゃんと分かってた。けど、命令に背いた。俺を殺すのを拒んだ。精霊が気を変えるかもしれないって、期待してた。でも結局……待ちきれなかったんだ。だから別のやつに命じた。」
ツンガはうなずいた。
【ツンガ】「まさか、カトとは……思わなかった。あいつは俺の友。幼い頃から、ずっと一緒だった。」
【ツンガ】「あえて選ばせたんだ。俺を、苦しめるために。あいつの死も……俺のせいだ。」
彼の視線が、床に落ちる。
―――――
その言葉は、拳で腹を殴られたような衝撃だった。
【デレク】「……違う。」
【デレク】「それはクソみたいな自己弁護だ。」
【デレク】「誰が殺したか、分かってる。言い訳したって変わらない。」
【デレク】「あの鳥を撃ち落とした瞬間、何が起きるか分かってた。俺なら落ちても生き残る。でも、カトは違う。」
【デレク】「……あいつが死んだとき、俺は嬉しかった。心のどこかで。」
その記憶が、腹の奥で冷たくよじれた。
【ツンガ】「強き敵に勝った。それだけのこと。恥じる必要、ない。」
―――――
重たい足音が廊下に響き、部屋の扉が静かに開いた。
イザベル・ブラックウッドが入ってきた。
白銀の装甲が壁の光を柔らかく反射し、ポニーテールに束ねた金髪が背中で揺れる。
灰色の目がまっすぐデレクを射抜いた。額には、わずかに皺が寄っていた。
【イザベル】「イサラから伝言。準備が整ったそうです。」
【イザベル】「『何の準備か?』と尋ねたけれど、彼女は答えませんでした。」
【イザベル】「……デレク。一体、何をするつもりですか?」
―――――
イサラが口をつぐんだのは正解だった。
どれだけ用意周到でも、《砦》の中で高威力の兵器を爆発させる計画は、聞こえだけでアウトだ。
しかも、評議会のホールに穴を開けたばかり。まだ、たったの二日。
また怒鳴られるのは、さすがに避けたい。
デレクは軽く手を振った。
【デレク】「ちょっとNOVAの初期テストをな。……彼女が答えなかったのは、まあ、あの性格だろ。知ってるはずだ。」
こめかみに指をくるくると回してみせる。
イザベルは無表情で睨んだ。
【イザベル】「高位学者イサラ・ミレスには、敬意を払ってください。」
【イザベル】「彼女の研究は砦内でも高く評価されています。だからこそ……あの奇癖も、許されているのです。」
【デレク】「……ああ。俺にしては珍しいが、イサラには本当に感謝してる。」
【デレク】「あいつが手を貸してくれるのは、正直ありがたいと思ってる。」
イザベルは意外そうに眉をひそめた。
【イザベル】「……意外ですね。あなたが、そう言うなんて。」
デレクは無精髭を撫でながら、ぽつりと漏らす。
【デレク】「イサラは……この星に来てから初めて出会った、「知的生命体」かもしれないな。」
イザベルは表情を変えず、じっと彼を見つめていた。
デレクは肩をすくめて出口に向かう。
【デレク】「じゃ、行くか。」
イザベルは黙って道を開けた。
廊下の途中で、彼女の声が背後から飛んできた。
【イザベル】「それと……言っておきますけど。」
【イザベル】「あなたたちが何か企んでいるのは分かっています。お願いですから、《砦》を吹き飛ばすような真似だけは、やめてください。」
デレクは振り返らなかった。
その代わり、口元に悪戯な笑みを浮かべた。
読んでいただきありがとうございます!
魔法 vs テクノロジーの融合に挑むデレクとイサラのコンビ、
今回はいよいよ本格始動です。
でもその裏では、ガラスとツンガの対立もじわじわ加速。
火薬と導火線がどんどん並んでいくような回になりました。
イザベルの「お願い」が通じるかどうか……次回をお楽しみに。
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