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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第二章 聖都の影と覚醒の機構
48/102

第48章: 市場、幻術、そして毒蛇の砦へ

第48話をお届けします!

今回は市場の喧騒の中で、デレクたちの次なる目的地「砦」への道が描かれます。そして再び現れるあの女……。

静かに忍び寄る陰謀と、新たな試練の始まりをどうぞお楽しみください!

市場には汗や香辛料、そして……言葉では言い表せない何かの匂いが漂っていた。


木製の屋台が狭い通りを埋め尽くし、果物や布地、焼けた肉が積み上げられている。その合間には、水晶や瓶詰めの稲妻、瞬きをするたびに色が変わる粉などが、微かに光を放ちながら並んでいた。


デレクはこれまでに数多くの異星バザールを見てきたが、これはまるで歴史再現イベント、ファンタジーの祭典、そして暴走したテクノロジー展示会が混ざり合ったような光景だった。


いくつかの品は、実際に彼の興味を引いた。もし商人が目を離したら、研究目的で「借りて」しまいたくなるほどに。


特に目を引いたのは、水晶だった。洞窟で見つけたものよりもはるかに澄み切っており、鮮やかだった。まるで小さな嵐が中に閉じ込められているように、色彩が脈打ち、うねり、今にも解き放たれそうだった。触れると暖かく、まるで鼓動があるかのようだった。


「ご覧になりますか?」


しゃがれた声にデレクは驚いて身を引いた。顔を上げると、ずんぐりとした汗だくの男が落ち着きなく指を動かしていた。


明らかに緊張している。だが理由は不明だ。慎重にいくべきだろう。


【デレク】「ん? ああ、大丈夫だよ」


彼は軽く笑ってみせた。



【デレク】「今は金がないんだ。でもこの光る石、なかなか興味深いね。いずれ金を手に入れたら――――」


「い、いえ! もしカシュナール様のお役に立てるのであれば、この石はどうぞお持ちください!」


【デレク】(チョロいな……)


彼はさらに笑みを深めた。やってらんねえ。メシアごっこも悪くないかもしれない。


【デレク】「じゃあ、ありがたく受け取っておくよ。ちょっと研究に使うだけ。オルビサルのご加護を。」


男は光り輝く表情で深々と頭を下げた。まるで聖剣でも授かったような勢いだった。


数個の石をポーチに滑り込ませると、デレクは満足げに人混みに紛れた。


【ヴァンダ】「『オルビサルのご加護を』……それ、あなたの口から出たの?」


【デレク】「思い出せ。俺の専門分野は未知の技術の剽窃。しかも今回はプラズマキャノンの出番すらない。楽勝だろ?」


【ヴァンダ】「それ、ただの盗みじゃないの?」


【デレク】「命がけでスフィア追いかけたんだぜ? 殺人植物、狂信者、処刑寸前。これは hazard pay(危険手当)だ。」



【ヴァンダ】「せめて、何に使うのかくらい教えてくれてもいいでしょう?」


【デレク】「分析する。純度が高いし、地元の使い方がわかれば、応用の余地もある。アーマーの強化だって視野に入る。」


【ヴァンダ】「商人に聞けばよかったのでは?」


【デレク】「無理だろ。あいつ、緊張で泡吹きそうだった。質問は砦に着いてからだな。そこには学者が集まってるらしい。」


【ヴァンダ】「また魅了する気ね。評議会でやったみたいに。」


【デレク】(うっ……やめろ、その話は今はまだ無理だ)


彼はしかめっ面で返事を濁した。


「デレク!」


鋭い声に振り返ると、イザベルがこちらを睨んでいた。白銀の鎧、背中に背負った大剣、そして胸に輝くオルビサルの聖印。貴婦人というより戦場の騎士。貫禄すらある。


【イザベル】「探していました。鎧も装備せず、私も連れずに……危険すぎます。」


【デレク】「今や俺は「メシア様」。熱心な信者が刺してくる確率も減ったし、ヴァンダが上空から監視中。目立たないように動いてる。」


【イザベル】「それで? 評議会で何があったのか、説明してください。ユリエラ様があそこまで取り乱していたのは初めてです。誰も口を開こうとしない。」


【デレク】(うーん、あれは……)


彼は肩をすくめた。


【デレク】「よくわからんが、冒涜とか言って俺を処刑しようとしてた。頭おかしいだろ。」


【イザベル】「…………」


彼女の無言が逆に痛い。


【デレク】「だから緊急プロトコル3を発動した。できれば使いたくなかったが。プロトコル1と2に「天井ぶち破って突入」はなかったしな。」


【イザベル】「……プロトコル3? 何の話か分かりませんが、説明してもらえますか?」


【デレク】「ヴァンダと一緒に非常時シナリオを用意しておいたんだ。選択肢その4は、「ミサイルぶち込んでダッシュで逃走」だった。」


【イザベル】「……」


【デレク】「なってないだけマシだろ?」


【イザベル】「あなた、評議会全体に恥をかかせました。敵を増やしただけです。誰もが、あなたが偽者だと証明したくて仕方ないのです。」


【デレク】(芝居がかった動きで胸に手を当て)

「信仰に駆られる群衆……美しいじゃないか。感動したよ。」


【デレク】「だがな、敵には変わりなかったろ。俺が信用できるのは――――お前と、意外にもツンガだけだ。」


【イザベル】「それでも砦に行くおつもりですか?」


【デレク】「もちろん。議場壊してまで来ない理由があるか?」


【イザベル】「知識と奇跡が眠る場所……でも、陰謀と闇も渦巻いています。ジャングルより安全だなんて思わないで。」


【デレク】「てっきりホコリかぶった書棚と古文書のオタクばかりかと。」


【イザベル】「そこは、禁術の研究も行われている秘密の場所。スフィアを分解し、組み合わせ、新しい力を創っているの。」


【デレク】「要するに研究所だな。興味出てきた。」


【デレク】「……待てよ、スフィアっていじっちゃダメなんじゃ?」


【イザベル】「そう。でも彼らは特別。神聖宰相の許可を得ているのです。」


【デレク】「新しい組み合わせ、か。面白くなってきたな。」



【イザベル】「何を企んでいるか分かりませんが、言っておきます。あなたは学者ではない。勝手な実験は許されません。」


【デレク】「俺は「カシュナール様」だ。ちょっとくらい大目に見てくれるさ。」


【イザベル】「……あり得る話ね。彼ら、銅級スフィアに目の色を変えてたもの。」


【デレク】「それもいいが、異世界製のアーマーの方が目を引くかもな。しかもスフィアを吸収したやつ。」


【イザベル】「まさか……アーマーを解析させる気?」


【デレク】「は? そんなわけないだろ。自分で調べるに決まってる。こっちにまともなツールがあるとは思えんけど、何かは掴めるかもな。」


【イザベル】「私、あなたの話の半分も理解できていません。」


【デレク】「半分? 上出来だ。大抵の奴は一割も理解できてないと思って喋ってるからな。」


彼は彼女の肩を軽く叩いた。


【デレク】「半分理解できるなんて、たいしたもんだ。ブラボー。」


【イザベル】(ため息)「……やれやれ。」


【デレク】「で、俺が砦に行ってる間、お前はどうするんだ? ジャングル戻ってモンスター狩り? 村救ってウォーデン様ごっこでもやるのか?」


【イザベル】(ギリッ)「違います。あなたが行くなら、私も行きます。」


【デレク】「……本気かよ。次はトイレまでついて来る気か?」


【デレク】「意味わからん。あそこにボディガードなんて要らないだろ。」


【イザベル】「私の話、聞いていませんね? 砦の危険はジャングル以上です。あそこは……毒蛇の巣。」


【デレク】「知れば知るほど、信仰の人間が好きになるよ。面白すぎだろ。」


【イザベル】「中には善人もいます。でも見極めが必要です。あなたに、それができますか?」


【デレク】「だからヴァンダがいる。」


【ヴァンダ】「いい加減、私の言うこと聞いてください!」

(イヤーピースから叫ぶ)


【デレク】(顔をしかめ、ため息)「……わかったよ。ついて来い。だが退屈でも文句言うなよ。」


【デレク】「よう、ツンガ」

「いたのか。で、獣の精霊とおしゃべりはどうだった?」


【ツンガ】「…………ダメだった。」


デレクとイザベルは顔を見合わせた。


【イザベル】「どういう意味?」


【ツンガ】(低くうなるように)「……獣の精霊……沈黙した。」


【デレク】「なるほどな。まあ、霊にもスケジュールってもんがあるんだろ。忙しいんじゃね?」


【ツンガ】(さらに低い唸り声)


【デレク】(……野生化が進行してるな、こいつ)


イザベルはそっと近づき、ツンガの肩に手を置いた。


【イザベル】「気にしないで。きっと戻ってくるわ、精霊は。」


【デレク】(小声で)「……完全に置いてけぼりなんだけど。」


【ツンガ】「……おかしい。いつも来た。今は……何もない。」


【デレク】「なあ……誰か俺にも分かるように説明してくれない? 精霊ザルが電話出なかっただけだろ? そんなにヤバいことか?」


【イザベル】(真剣な表情で振り返る)

「ニキシ族では、精霊が沈黙するのは加護を失った証。それはつまり――――シャーマンではいられなくなるということ。」


【デレク】「……そんなに深刻なのか?」


【イザベル】「精霊が見捨てるのは、許されざる行いをした時だけ。部族を傷つけたり、罪なき者を殺したり……。そうなれば、精霊は縁を切る。そして部族はそのシャーマンを……永久追放する。」


(デレクは重い沈黙に包まれた)


【デレク】(こいつは命を賭けて仲間を救った。俺の命すら助けた。そんな奴が見捨てられるなら、誰が許されるってんだ……)


彼はツンガの隣に立ち、肩に手を置いた。


【デレク】「気の毒に思うよ。でもな、お前を見捨てる猿神様の方が狂ってる。」


【ツンガ】(うなる)「……俺が……やったこと……やらなかったこと……」


【デレク】(やらなかったこと? まさか、俺を殺さなかったことが原因か!?)


ツンガは黙って杖を握りしめ、視線を落とした。


【ツンガ】「……それなら……精霊、間違ってる。」


「カシュナール様!」


若い声が響いた。


デレクが振り向くと、そこには例の予言者の少女がいた。冷静な表情のまま、じっと彼を見ている。


(……なぜここに? 神殿から出ることはないはずだろ)


【デレク】「えーっと……やあ、予言者さん。そういや自己紹介もしてなかったな。俺は――――」


突然、腕をつかまれて後ろに引き戻された。イザベルだった。すでに剣を抜き、彼と少女の間に割って入っていた。


【イザベル】「下がって、デレク。この女は予言者じゃない。予言者が市場を出歩くなんてありえない。」


その「予言者」は突如、頭を後ろに反らして高らかに笑い出した。


【デレク】(……なんだこれ)


【ヴァンダ】(イヤーピースから)「近距離に微弱なエネルギー反応を検出。それと、あなたの心拍数が急上昇しています。状況は?」


【デレク】「わからん、ヴァンダ。待機しとけ。」


【イザベル】「お前は誰だ!」(剣の切っ先を突きつける)


【ツンガ】(低く唸る)「……幻術……」


その言葉を皮切りに、少女の姿が揺らぎ出す。輪郭がぼやけ、水に映る影のように滲み、混ざり、崩れ――――そして新たな姿を形作った。


通行人は誰も気づかない。世界は歪んでいる。


【デレク】(これは……手品なんてレベルじゃねえぞ)


そして姿が定まった。

褐色の肌、鋭い頬、エメラルドグリーンの瞳。


【デレク】「……シエレリス……? まさか、評議会のあれも……お前だったのか?」


【シエレリス】(にっこりと微笑み)「ええ、最初から最後まで見てたわ。面白い劇だった。」


デレクは反射的に周囲を確認する。


【シエレリス】「安心して。今は幻術で空間をいじってる。周りの人には、ただの雑談にしか見えない。」


【デレク】「それにしても、なぜそんなことを? 評議会で……」


【シエレリス】「私の任務は、あなたが「本当に」カシュナールかどうかを見極めること。そのための舞台だったのよ。」


【デレク】「じゃあ……「予言者」としてスフィアを認定したのは……お前?」


【シエレリス】「ええ。信じられないくらい簡単だった。あんな偽物、ちゃんと見れば誰にでもわかる。ユリエラも気づいてたわ。でも、「予言者が支持した」って実績ができた時点で、何も言えなくなったのよ。」


【デレク】「……でも、なんで助けた? 俺、お前を牢にぶち込んだはずだが。」


【シエレリス】(肩をすくめて笑う)「別に閉じ込められてたわけじゃない。あそこにいたのは気分よ、気分。あなたのおかげで、ユリエラの立場がぐらついた。それだけで十分。」


【デレク】「……でもなぜ今、正体を明かす? こっちは3人、お前は1人。そしてウォーデンの前で全部ぶっちゃけるってのは――――どういうつもりだ?」


【シエレリス】「ふふ、それは簡単よ。私は「ここにいない」。これも幻影。もし捕まえようとしたら――――あの会議の真相を全部暴露するわよ。偽スフィアの件もね。ユリエラ様、きっと喜んで聞いてくれると思う。」


【デレク】(小声で)「つまり……借りを作っちまったってわけか。」


彼女の笑みは鋭さを増した。ネズミを仕留めた猫のような目をしていた。


【デレク】(ヤバい女だ……でも、学ぶことはありそうだ)


【デレク】「で、これからどうする気だ?」


【シエレリス】「私の任務はまだ終わってない。あなたが「何者なのか」、まだ見えてこない。父のもとに戻るのは、それが分かってからよ。」


【イザベル】「次こそ捕まえてみせる……!」


【シエレリス】(優雅に一礼)「期待してるわ、ウォーデン。でも――――今はこれで。」


彼女は片目をつぶり、紫煙に包まれて姿を消した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

市場での出会い、そして幻術の女との再会……今後の展開にご期待ください。

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