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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第一章 廃墟から聖都ロスメアへ
39/102

第39章: 幻覚と現実の狭間で

本日もお読みいただきありがとうございます!

第39話では、ついに「幻覚スフィア」の正体が明らかに。

デレクとホログラムNOVAによる騙し合いバトル、ぜひお楽しみください!

クリーチャーの目に宿る紫の光が、頭上に掲げられた重たい斧の刃にぎらりと反射していた。


デレクは、ああ終わったなと思った。あんなもん、避けられるか。


だが、NOVAの戦術アルゴリズムは、本人が「ヤバい」と思うより先に、勝手に腕を上げていた。


鋭く跳ね上がった動きで、アーマーは攻撃者の手をはじき、分厚い刃はまるでバターに突き立てる熱いナイフのように地面へと沈み込む。


頭スレスレだった。デレクは即座に反撃の拳を突き出す――が、空振り。


相手の姿は、拳が届く直前にふっとかき消えた。


【デレク】「……どこ行った、クソ野郎」


ミニマップに目をやる。赤いブリップが――背後。


振り向いた瞬間、斧が再び振り下ろされる。

よろめいて避けたが、刃が胸の装甲をかすめ、縦に深く傷が刻まれた。


ギィィンッ……!


赤い火花が、まるで血のように飛び散る。


《装甲耐久値:90%》


デレクはプラズマブレードを展開、両手で突進。

だが斬撃が届く直前、またもや敵の姿は消えた。


【デレク】「……は? 今度はフェーズアウトかよ」


左の視界に、かすかな影。

反射でしゃがみ込むと、斧が頭のすぐ上を唸りながら通過していく。


カウンターで斬りつけるが――また空振り。


【デレク】「おい、ヴァンダ。なんなんだ、これ」


【ヴァンダ】「現在、データを解析中ですが、センサーは依然として機能不全です」


【デレク】「それは知ってんだよ! それ以外に何かないのかよ!」


――――


背後でガサリと音がする。

デレクは即座に、装甲の足で後ろ蹴りを放つ。


ドガッ


手応えあり。肉を蹴った感触と、鈍い呻き声。


振り返ると、地面に転がった男がこちらを睨み上げていた。

その目は、紫の炎のように燃え盛っている。


デレクはすかさず突撃。両腕のプラズマブレードで男を仕留めにかかる――が、またもや消える。


刃は地面に突き刺さり、蒸気がシュウッと噴き出す。


【デレク】「……マジで消えてるのかよ。幽霊プレイか?」


防戦一方。敵の動きに基づくNOVAの予測アルゴリズムも、すでにバグだらけ。


【デレク】「理屈じゃ通じねぇ相手ってこったな……」


顔を上げた瞬間――


ガンッ!


斧の柄がバイザーにヒット。首がのけ反り、金属音がヘルメットの中に響く。


次の瞬間、背中から地面に叩きつけられ、肺から空気が抜ける。


本能で横に転がり、なんとか次の一撃を回避。蹴りを返すも、空振り。


ミニマップを見る。反応はない。心臓の鼓動だけが、頭の中でガンガン鳴っていた。


【デレク】「どこだ……」


【ヴァンダ】「現在、敵の位置特定は――」


【デレク】「センサーは死んでるの知ってるっつってんだろ! 他に出せる情報はあるか!?」


【デレク】「戦法変更だ。NOVAの装甲強度、最大値まで。質量も全部乗せだ」


【ヴァンダ】「了解しました、デレク」


避けられないなら、受けて耐える。


――――


まばたきした、その刹那。


目の前に、あの木こりが出現。


斧が振り下ろされる!


デレクは両腕で防ごうと構える――が、


ドゴッ!!


斧はなぜか下から。

腹部に直撃。デレクの身体が半メートルほど浮き上がる。


肺が空っぽになり、思考が吹き飛んだ。


男は斧を引き抜こうとしたが、装甲に引っかかって抜けない。


視界が揺れ、デレクは膝をついた。片手で地面を支えるのがやっとだった。


ディスプレイに、ダメージレポートが次々に表示される。


斧はまだ胸に刺さったまま。男は怒声を上げ、狂ったように引っ張っていた。


デレクは柄に手を伸ばす。だが、そこには――何もない。


【デレク】「……また幻覚かよ」


心拍はさらに加速する。


これは戦いじゃない。ただの悪夢だ。


敵は、現れては攻撃し、また霧のように消える。それを繰り返す。


さっきの一撃――あれ、確かに上から来ると思った。


でも、当たったのは――下。


【デレク】「……まさか。斧ごとテレポートでもしてんのか?」


《装甲耐久値:50%》


さっきNOVAの装甲にスフィアを統合してなかったら……今ごろ、内臓が全部吹き飛んでた。


【デレク】「笑えねぇな……」


――――


男が、またもや隣に現れる。


デレクは反射でシャツを掴みにかかる。今度はつかんだ――と思った瞬間、斧が飛んできた。


すぐに横へ飛び退く。布が裂け、斧は空を切った。


デレクは即座にプラズマキャノンを引き抜き、発射。


だが、着弾点に奴の姿はない。


【デレク】「また逃げたか。クソ野郎……!」


デレクは破れた布を放り捨て、ブレードを起動。

シュウウッという音と共に、地面がオレンジ色に染まる。


十メートル先、男が再び出現。


斧を掲げて咆哮。目は紫の火花を散らしていた。


デレクはズームで奴を捉え――そして、地面に落ちている布の切れ端に目を向けた。


【デレク】「……そういうことか」


雷のようなひらめき。


【デレク】「ヴァンダ、ホログラム投影機、今すぐ起動!」


巨木へと走り、太い枝へと跳び上がる。数メートル上に身を引き上げる。


【ヴァンダ】「何を投影しますか?」


【デレク】「俺だ。「もう一体のNOVA」を。超リアルにな」


木の下、斧を持った男が顔をしかめてこちらを見上げている。明らかに諦めてないが――飛べる様子はない。


登ってくるしかない。……無理そうだな。

その目の狂気っぷりじゃな。


ふと、目に入った。


男の頭上――レベルインジケーター。


【ブロンズ6【


【デレク】「おいおい……マジかよ」


自分は【アイアン6【。つまり、こいつは一段上。

スフィアを吸収したばかりなのに、このレベル。


【デレク】「はいはい、チート野郎ですね了解」


【デレク】「ヴァンダ、ホログラム突っ込ませろ。こっちには作戦がある」


【ヴァンダ】「了解です」


NOVAのホログラムが、デレクの隣に出現する。


目は業火のように燃え、すでにターゲットにロックオンしている。


デレクは枝の上で身をかがめ、飛び降りる構えを取った。


ホログラムのNOVAが着地。足が土に沈むと同時に、ブレードを唸らせながら突撃開始。


だが敵は、またもや消えた。


デレクもすぐに降下し、ホログラムの隣に立つ。

二体のNOVAが、同じ武器を構えて並び立つ。


【デレク】「ヴァンダ、完全に同期しろ。動き、一つ違わずだ」


【ヴァンダ】「了解しました」


腕を上げる。ホログラムも、ぴたりと同じタイミングで動く。


【デレク】「さて。顔面にブレード刺されながら、どっちが本物か考えとけ」


木こりの姿はまた消えていたが――長くは隠れられない。


【ヴァンダ】「現在の行動意図は何ですか?」


【デレク】「さっきのシャツ。俺が破いたやつ、地面に落ちてるだろ?」


【ヴァンダ】「はい……それが?」


【デレク】「再出現した時、あいつのシャツは無傷だった。……ねえだろ、そんな都合のいい話」


【ヴァンダ】「つまり?」


【デレク】「イリュージョンだよ、ヴァンダ。奴はセンサーも、視覚もごまかしてる。リアルっぽく見える、偽物をな」


【ヴァンダ】「……「そこに木がある」と錯覚していた時のように?」


【デレク】「正解。ブロンズスフィア、属性はバイオレット。つまり幻覚系。今この空間、視覚情報がねじ曲げられてる。しかも、あのイカれた木こりが「演出家」ってオチだ」


【ヴァンダ】「なるほど。では、なぜホログラムを?」


【デレク】「だからだよ。今度は、あいつの番だ。「何が本物か分からねえ地獄」に付き合ってもらおうぜ」


――――


パキッと背後で枝が折れる音。


デレクとホログラム、ぴたりと同時に振り向く。


――誰もいない。


【ヴァンダ】「判断に迷っているようですね。彼も」


【デレク】「だろうな。俺も、だがな」


ゆっくりと回転しながら視界を走査。


【デレク】「あいつはいる。見てる。どっちを刺すか、選ぼうとしてる」


【ヴァンダ】「彼は分かっていません。どちらを狙うか。しかし私たちも、どこを攻撃すればいいか分からない状況です。どうやって位置を特定しますか?」


【デレク】「しねえよ」


デレクは両腕を広げ――


シュウウッ!!


プラズマキャノンが炸裂。


回転しながら、ジャングル全体にフルオートで掃射。


ブシュッ! バシュッ! パキン!


茂みが爆ぜ、枝が砕け、葉が空に舞い散る。

森が、怒涛のエネルギーでえぐり取られる。


ホログラムのNOVAも、完璧に同じ動きで乱舞。


左の視界――金属のきらめき。


斧が、ホログラムのNOVAの頭に叩き込まれる――そのまま、透過。


【デレク】「ハズレだ、バカが」


反射でターン。男が斧を空振りした瞬間――


プラズマブレードを、背中にぶち込んだ。


ジュッ


――手応えあり。今度は幻じゃない。


肉を焼く匂いが、NOVAのマスクの中まで入り込んできた。


男が吠える。痛みじゃない。怒りだ。


そして――素手で、デレクの胸を叩きつける。


ドガァン!!


パワーアーマーごと吹き飛び、視界が反転。

空と地面がぐるぐると入れ替わり――背中から地面に叩きつけられる。


ディスプレイが赤く染まる。アラームが鳴り響く。


《装甲耐久値:40%》


荒い息をつきながら身を起こす。


男は、すでに斧を拾おうとしていた。

背中の傷が、見る見るうちに塞がっていく。


焼け焦げた肉が、糸で縫われるように戻っていく。


【デレク】「クソッ……やっぱレベル差って残酷だな」


奴は再び斧を構えたまま――


フッ


消えた。


【デレク】「……もう分かってやがる。今度は、ホログラムなんか狙わねぇってな」


デレクはラタンの木の間を駆け抜ける。


【デレク】「ヴァンダ、ホログラム俺の隣に。さあ、また当てっこしようか」


【ヴァンダ】「了解しました、デレク!」


ホログラムが現れた瞬間、デレクは大木の裏に身を隠す。


そのNOVAは、目を業火のように赤く燃やし、まるで悪魔のようだった。


だがただの映像だ。本物の悪魔は――その中にいる。


――――


気配。

振り返る。


ザシュッ!!


斧が、すでに振り下ろされていた。


デレクは咄嗟にブレードを交差させ、受け止める。


ギンッ!!


赤熱した刃が交差し、斧と火花を散らす。


【デレク】「ヴァンダ、出力全開。腕に全部回せ!」


【ヴァンダ】「実行中」


だが、相手はブロンズランク。

こっちの出力じゃ、押し返すのがやっとだ。


キックを入れるが、男は踏ん張る。

顔が歪むも、びくともしない。


【デレク】「……化け物め」


ブレードが顔まで迫る。アクチュエーター限界寸前。


【デレク】「離れる!」


刃をシャットダウンし、跳躍。


ガリッ


斧が装甲に新たな溝を刻む。


【装甲耐久値:27%【


着地。よろめく。


男がまた斧を振り上げてくる。

【デレク】「同じ手しかねぇのか……助かるな」


キャノンを引き抜き、さっきの傷口に銃口を押し当て――


ボシュゥウ!!


至近距離で直撃。


男の身体が吹き飛び、血と煙に包まれながら倒れる。


動かない。


ゆっくりと近づく。構えたまま。


ホログラムは消え、デレク一人。


ブーツで男を仰向けに転がす。


男の目の光が、もう消えかけていた。


【ヴァンダ】「バイタルサイン、不安定です」


【???】「……な、にが……おきて……」


【デレク】「……おい。お前、言葉……通じるのか?」


【???】「ああ……かぞくは……どこ……?」


【デレク】「……は?」


【???】「妻と……こどもが……俺を待ってて……」


デレクは膝をつき、男の手を握った。

【デレク】「……彼らは、スフィアが落ちた時……外にいたのか?」


【???】「いや……俺は……戻る途中で……あいつらは……無事……家にいる……」


【ヴァンダ】「デレク、外部から――」


【デレク】「黙れッ!!」


【デレク】「……お前の他に、誰かいたのか? 一緒に?」


男は口を開きかけて――


目が見開き、紫の光がぶわっと燃え上がる。


【ヴァンダ】「デレク、後ろッ!」


男の手が首に食らいつく。


【デレク】「ヴァンダ! 出力120%に!」


【ヴァンダ】「出力上昇中!」


【警告:リアクター温度 臨界【

【アクチュエーター過負荷【


引き剥がせない。

合金装甲が、潰される……!


拳を叩き込む。何発も、何発も――


【デレク】「ヴァンダ、ガントレットの質量増加!」


【ヴァンダ】「完了しました!」


連打。顔が血で染まる。が、離さない。


【デレク】「……帰れよ。家族のとこに帰れ……!」


泡を吹き、暴れる男。


【デレク】「ちっ……出力、100%に戻せ!」


【ヴァンダ】「戻しました! なぜ――」


デレクはキャノンを抜き――


至近距離で、頭を撃ち抜く。


光線は――通過。


幻だった。


男の姿は、霧のように消えた。


――――


デレクは立ち上がる。ブレードを再展開。


手が震える。


【デレク】「……回復、してなかった。あれも幻か」


【デレク】「……本当に、家族なんていたのか?」


考えるな。まだ終わってない。


奴は、生きている。

スフィアも、まだ封じていない。


他の生物も、もう変わり始めてるかもしれない。


そして次は――ロスメアだ。


――――


アオオオオオォォォォン……!


森に響く咆哮。続いて、ぞっとするような笑い声。


NOVAの内部が、氷水で満たされたように冷たくなる。


胃がきゅっと縮む。


ラウンド2、開始だ。


【デレク】「ケリをつけようぜ」


最後までお読みいただき感謝です!

今回のバトルは、技術と心理のぶつかり合い。

次回、さらなる脅威が待ち受ける「ラウンド2」が始まります……!


次回更新予定:第40話 → 6月2日 21:00(JST)

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