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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第一章 廃墟から聖都ロスメアへ
37/102

第37章: NOVA、限界突破

今回の章では、デレクがついにNOVAの限界を突破します。

スフィアの力と科学の知恵が交錯し、新たな力が目覚める瞬間を、ぜひ見届けてください。

静かなる神殿の中、機械と信仰の激突が始まります。

デレクは大広間へと足を踏み入れた。


足取りはわずかに不安定。

NOVAノヴァの装甲ブーツが、磨き抜かれた床を叩いて、カンッ、と鋭く乾いた音を響かせた。


この建物は街でも随一の威容を誇り、明らかに宗教目的で造られたものだ。


ここに来たのは――ウリエラから「聖なる使命」の一環として、パワースフィアが手に入るという連絡を受けたからだった。


建前上は「善意の贈り物」ということらしい。

だが、あの女のことだ。背後からナイフを突き立てられる展開は、常に想定しておく必要がある。


―――


大広間の周囲では、司祭たちが数人、低く哀しげな声で詠唱していた。


【デレク】「……何言ってんだか」


その言葉は、彼にも翻訳機にもまったく意味をなさなかった。


灰色のローブがやせ細った身体に垂れ下がり、目はすべて布で覆われていた。


目隠しの理由など分かるはずもない。

そもそも宗教的な習慣に合理性を求めるのは、時間のムダだと彼は割り切っていた。


歌おうが、叫ぼうが、逆立ちしようがどうでもいい。

邪魔さえしなければ。


―――


部屋の中央には、アラバスター製の高い台座がそびえていた。

その上に置かれた箱には、繊細なオークの葉の彫刻が施されている。


中には七つのスフィアが並び、それぞれ異なる色で明滅しながら脈動していた。

ステンドグラスから射し込む光が、それらの輝きと重なり合い、ゆらゆらと揺れる幻想的な光景を描いていた。


【デレク】「ヴァンダ、分析」


【ヴァンダ】「わぁ……」

その声は、珍しく感情を帯びた柔らかさがあった。

【ヴァンダ】「ウリエラ、本当に約束を守ったんですね。エネルギー測定値によると、これらのスフィアは以前のものと同じくらいのパワーレベル……アイアン・ティアだと思われます」


【デレク】「へぇ、じゃあ結構余裕あるってわけか。7個もくれてやるとか」


【ヴァンダ】「それも当然かもしれません。あなたは「この世界を救うメサイア」ですから。もし最後のスフィアだったとしても、きっと渡していたと思いますよ」


【デレク】「……あの女が俺を「本気で」救世主だと思ってるわけねぇだろ。ただ利用してるだけだ。協力するフリして、見返りを期待してんだよ。宗教屋ってのはそういうもんだ。善行の対価は「天国」ってやつさ」


―――


【デレク】「NOVAに適用できるの、あと2個までだよな?」


【ヴァンダ】「はい、デレク。現在のオーリックレベルでは、あと2つまでのアップグレードが可能です。これ以上の強化には、NOVAそのもののオーリックレベル上昇が必要です」


【AURIC LEVEL:6 残りアップグレード数:2】「」


【デレク】「うーん……あまり時間もないが、急いでミスるのは避けたいな。

お前なら、どれ選ぶ? どこに使うべきだ?」


【ヴァンダ】「現時点で使用したのは、イエローとレッドの2種類。雷と火の属性に対応しています」


【デレク】「他のやつは?」


【ヴァンダ】「現在分析中です。少々お待ちください」


 


デレクは深く息を吸い、意識を集中させる。

脈打つ心臓の音が、内側からNOVAの装甲を叩いていた。


 


【ヴァンダ】「完了しました。コラール・ノード(コラール・ノード)に組み込まれていたソフトウェアに、チュートリアルが含まれていたようです。内容を表示しますね」


 


NOVAのディスプレイに一覧が浮かび上がる。


 


―――


《分析済みスフィア:属性とアフィニティ》

《【ブルー】:氷属性/冷気アフィニティ》

《【レッド】:火属性/熱アフィニティ》

《【イエロー】:雷属性/エネルギーアフィニティ》

《【ブラウン】:岩属性/安定アフィニティ》

《【グリーン】:回復属性/生命アフィニティ》

《【ブラック】:破壊属性/死アフィニティ》

《【パープル】:幻影属性/精神アフィニティ》


 


【デレク】「……簡単になるどころか、余計に混乱したな」


【ヴァンダ】「私の仮説ですが、「属性」と「アフィニティ」は、それぞれのスフィアが与える効果を示す手がかりです。自然な相性を持つシステムに適用することで、最大限の効果が得られる可能性があります」


【デレク】「ふーん。じゃあ、火をプラズマ武器に、雷をリアクターにってのは理にかなってるってわけか」


【ヴァンダ】「はい。その通りです。ただし、一部のアフィニティに関しては……かなり創造的な応用が求められるかと」


【デレク】「「死」のアフィニティがどう機能すんのか、まったく想像つかないな。たとえば……氷のスフィアをプラズマブレードに使ったら?」


【ヴァンダ】「……正直なところ、試してみない限りは分かりません」


【デレク】「……試すには、状況が悪すぎる」


【デレク】「ああそうだ。スフィア使ってる連中、だいたいエネルギーシールド持ってるよな。NOVAにも欲しいな、そろそろ」


【ヴァンダ】「現在のNOVAノヴァ――ニューラル・オペレーテッド・ヴァーサタイル・アーマーには、エネルギーシールド機能は搭載されておりません」


【デレク】「知ってる。作ったの俺だしな。

シールドは電力食いすぎて、ニュートロンスチール装甲と比べて防御力が見合わなかった。だから、設計から外した」


【デレク】「でも今は違う。スフィアで強化されたリアクターがある。

防御性能の底上げができるなら――試す価値はある。いや、「革命」だな」


【ヴァンダ】「現地の戦闘データを分析した結果、シールドには複数のタイプが存在します。使用するスフィアによって、性質が変化している可能性があります」


【デレク】「……つまり、どのスフィアかより、「どこに使うか」が重要ってわけだ」


【デレク】「イザベルが言ってたな。連中はスフィアの力を、身体の「チャクラ」と呼ばれる部位に流し込むらしい」


【ヴァンダ】「もっともらしい理論です。人体に存在する「チャクラ」に対応する形で、能力が展開されているようです」


【デレク】「でも、NOVAにチャクラなんてねえんだよな。……完全に未知の領域だな」


【ヴァンダ】「これまで行ってきたのは、既存の装備――プラズマキャノン、ブレード、リアクターの強化でした。しかし今回は、「存在しない機能」の追加を試みています。それが可能かどうかは……不明です」


【デレク】「つまり、「NOVAにはそもそもシールド出す機構がない」ってことだ。だったら、まずシールド発生装置を作るしかねぇ。話はそれからだ」


【ヴァンダ】「ロスメア(ロスメア)は都市と呼ばれていても、実質はジャングルの集落に過ぎません。シールド用パーツなど、まず手に入らないと思われます」


【デレク】「……だろうな。こっちじゃ装備ひとつ作るにも周期表から始める羽目になる」


彼は緑のスフィアをゆっくり台座に戻す。


【デレク】「……鉱石を砕いて、素材を抽出して、分析して、合金にして……そんな時間、俺にはないんだよ」


【デレク】「ボットたちだ……!」


【デレク】「リペアボットに設計図を組ませれば、シールドプロジェクター作れるかもな。組み立てて、設置して、あとは――」


【ヴァンダ】「――そこに、スフィアの力を適用する。はい、理論上は可能です。今、必要な命令を含んだプログラムを作成して、ボットに送信します」


【ヴァンダ】「……ただし、ここに来てから、彼らの行動は非常に不安定です。命令通りに動作する保証はありません」


【デレク】「あいつらなら大丈夫だろ。……で、今どこにいる?」


【ヴァンダ】「不明です、デレク。指示がないときは、自律的に行動しています。現在は「非常に多忙」のようです」


【デレク】「……まさか、前に囮に使ったの、根に持ってないよな?」


【ヴァンダ】「彼らのプログラムには、感情は存在しません。私のような「情動エミュレーション」機能も搭載されていません」


【デレク】「知ってる。でもさ……プログラム外のこともやってるだろ? 魔力鉱石を使って、勝手にNOVAを改造したり。今のNOVAは、俺が最初に作ったやつなんかより遥かに強い。スフィアで強化する前ですら、だ」


【デレク】「……もしかして、アイツら、思考してるんじゃないか? 感情まで芽生えてたりしてな」


【ヴァンダ】「それが事実なら……あなたは相当嫌われているでしょうね。アイヴォリーに殺されかけた件、覚えていませんか? 「あなたがやらせた」あの無茶な作戦のせいです」


【デレク】「……そうだったな。俺もそう思う。とりあえず、今はスフィアに集中しよう。ボットの捜索は後回しだ」


【デレク】「で、どれから行く?」


【ヴァンダ】「最も安全かつ実績のある選択肢は、残りのレッドスフィアを別のプラズマ兵器またはブレードに適用することです。先日の使用では、どちらも大きなダメージ上昇が確認されました」


【デレク】「よし、決まりだ」


 


赤いスフィアを手に取り、左腕のプラズマブレードへ近づける。


目を閉じ、集中――

数秒後、ディスプレイにプロンプトが表示される。


 


《IRON TIER UPGRADE:火属性》

《左プラズマエッジ・ガントレットに適用しますか?》


 


【デレク】「はいよ」


「YES」を選択。


赤いエネルギーのリボンが装甲の腕に流れ込み、すっと消える。

じわりと、心地よい熱が広がっていく。


 


《アップグレード完了》

《使用可能アップグレード数:1》


【デレク】「次」


使い終えたスフィアを箱へ戻す。


 


【ヴァンダ】「レッドスフィアは、これですべて消耗しました。リアクターを再強化する予定がないなら、これ以上の提案はありません」


【デレク】「リアクターは今のところ問題ない。別の装備を強化するときにまた考えよう」


 


残るスロットは1つ。


デレクは短く唸り、そしてブラウンのスフィアへ手を伸ばす。


 


【ヴァンダ】「……ブラウン? どこに適用するおつもりですか?」


【デレク】「わからん。ただ……NOVAの耐久力は、もっとあっていい」


目を閉じ、スフィアを胸に押し当てる。


――集中。


 


《IRON TIER UPGRADE:岩属性》

《ニュートロンスチール装甲に適用しますか?》


【デレク】「あいよ」


「YES」を選択。


茶色の光が装甲へと流れ込み、優しく包み込む。


 


《アップグレード完了》

《使用可能アップグレード数:0》


耐久ゲージが一気に跳ね上がった。


《耐久値:100% → 400%》


 


【ヴァンダ】「……成功したようですね。NOVAが岩塊に変化する危険性、考慮されていましたか?」


【デレク】「してなかったけど、結果オーライってやつだな」


【ヴァンダ】「今回は運がよかっただけかもしれません。イザベルは「スフィアを甘く見るな」と忠告していましたよ」


【デレク】「分かってる。……でも、好奇心ってのは止まらない。俺は科学者だ。

ただ、次はシタデルで誰かに聞いてみるよ。あの街に、パワーアーマーの構造理解してるやつがいればな」


寺院の外へ出ると、地平線の彼方にそびえ立つ光の柱が目に入る。


まるで神の槍のように、天を貫いていた。

ブロンズティアのスフィアは、まだそこにある――燃える灯台のように。


 


HUDにメッセージが表示される。


《ストレスレベル:上昇中》


【ヴァンダ】「デレク? ご気分は大丈夫ですか?」


【デレク】「ああ、大丈夫だ。ただ……興奮してるだけさ。あれは、今までで一番ヤバそうなアーティファクトかもしれん」


【ヴァンダ】「……その可能性は高いです」


 


―――


そのとき、祈りの声が急に大きくなった。


市民の列が進んでくる。先頭にはウリエラ・ヴァレン。


紫の冠、水晶の杖、その背後には祈る群衆――


儀式が始まる。


 


祈りが終わると、彼女は「オルビサルの箱」を差し出した。


その遮蔽はNOVAのスキャナーでも破れない。


 


【ヴァンダ】「内部構造の分析は不可能です。おそらく、ワーディライ(古代文明)の技術でしょう」


 


【ウリエラ】「……この箱があれば、スフィアの暴走すら封じられる。たとえこの「カシュナール」が失敗しても――我ら《星見の従者》が成し遂げるでしょう」


【デレク】「(用意周到だな、おい)」


箱を受け取ると、群衆は叫ぶ。


 


「オルビサルに栄光あれ!」


 


【デレク】「……バカバカしい」


 


ウリエラの動作に従う群衆。その礼式を、彼はただ黙って見ていた。


そして、イザベルが現れる。


 


【イザベル】「あなたは行ってください。私はここでロスメアを守ります」


【デレク】「あの衝撃で魔物が逃げてきてもおかしくない、ってか。……頼んだ」


 


彼女は静かに一礼した。


【イザベル】「あなたの無事をお祈りしています、デレク・スティール」


【デレク】「「カシュナール」って呼ばれなかったの、初めてだな」


 


【デレク】「……ツンガは?」


【イザベル】「「精霊と交信」のために、森へ入りました」


【デレク】「あいつらしいな。じゃあ、行くわ」


 


【ヴァンダ】「衝突地点へのルートをプロット中――脚部アクチュエーターへ出力転送」


 


ディスプレイ上にルートが展開される。


【デレク】「最短ルートで」


 


そして――


 


密林を切り裂き、

黒き鋼鉄の悪魔が、空へと跳ぶ。



お読みいただき、ありがとうございました!

もし物語が少しでも気に入っていただけたなら、ブックマークで応援してもらえると、とても励みになります。


次回、ついに新たな冒険の地へ――

どうぞお楽しみに!

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