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Messiah of Steel:異世界で最強科学装備無双!  作者: DrakeSteel
第二章 聖都の影と覚醒の機構
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第100章: 死がデレクの中にいる

ギャラスはヨリンの死体の上に立っていた。死骸は捨てられた殻のように床に横たわっている。彼の鋭い視線は部屋の隅のイザベルを射抜いた。彼女の手には紫のクリスタルが震えていた。


息が止まった。冷気が背筋を走り、血管の奥まで広がる。彼が去るのを確かに見た。自分の目で見届けた。それなのに――今ここにいる。まるで世界そのものがねじれ、彼を引き戻したかのように。


瞬きをしても、何も変わらなかった。重苦しい裁きの光を宿した視線はそのままだ。


どう説明できる? 自分がここにいること、足元の死体、握りしめたクリスタル。どれも疑いを晴らす答えにはならない。光景のすべてが彼女を告発していた。


【イザベル】「ギャラス……どうして……戻ってきたのです?」


言葉は空虚だった。血で汚れた部屋で、必死に取り繕った理屈にすぎない。


ギャラスの顎がこわばった。彼も動揺しているようだった。低く、語尾を切る調子で答えた。

【ギャラス】「外で声を聞いた。お前の声に似ていたが確信できなかった。だから戻った。扉の外で聞き耳を立てたが、中は静まり返っていた。鍵もかかっていなかったので中に入った。」


イザベルは唾を飲み込んだ。冷静さだけが盾になる。

【イザベル】「そう……」

視線はヨリンに向いた。

【イザベル】「私が来たときにはすでにこの状態でした。」


ギャラスの眉が寄る。

【ギャラス】「じゃあ、お前は……」


イザベルの声は鋼のように冷たく澄んでいた。

【イザベル】「私が、オルビサルに命を賭して守ると誓ったこの都市の中心で、罪なき者を斬ったとでも? どうお考えです?」


彼の目は鋭く彼女を観察し、短い沈黙のあと肩がわずかに緩んだ。

【ギャラス】「ヨリンの喉は切られていた。お前は白いチュニックを着ているが、血は一滴もついていない。」


イザベルは安堵の息を吐いた。オルビサルに感謝を。少なくとも尋問官としての目は確かだ。

【イザベル】「その通りです。誰かがナイフで容赦なく殺しました。」


ギャラスの視線は彼女の手の紫のクリスタルに移った。

【ギャラス】「それは? 何のためのものだ?」


イザベルはそれを少し持ち上げた。持ち続ければヨリンを殺して盗んだと思われる。唯一の道は証拠として渡すことだった。彼女は差し出した。


彼は慎重にそれを受け取り、表面をなぞった。


【イザベル】「ヨリンはこれで依頼人の名前を記録していたと思います。」


ギャラスの眉が曇る。

【ギャラス】「それがなぜお前にとって重要だ?」


【イザベル】「殺した者は、私と同じように依頼のためにここへ来たはずです。」


【ギャラス】「依頼人の一人を疑っているのか?」


イザベルはうなずいた。


彼の視線が鋭くなる。

【ギャラス】「ではお前は何を依頼しようとした?」


イザベルの目が細まり、声は刀の刃のように研ぎ澄まされた。

【イザベル】「おそらく、あなたと同じことを。尋問官殿。」

ポケットからコインを取り出し、親指で弾いて投げた。


ギャラスは空中でそれを掴んだ。手に重みを感じ、開いたときには険しい皺が刻まれていた。

【ギャラス】「このコインは……?」


イザベルは静かにうなずいた。

【イザベル】「そうです。カシュナールを襲った者が落としたコインの一つ。私はその持ち主を突き止めようとしました。」


ギャラスの手が腰袋に触れた。中には他のコインがある。彼は渋々うなずいた。

【ギャラス】「どうやら同じ考えだったようだな。もっとも、俺から勝手に持ち出すべきではなかった。それは正式な証拠だ。」


イザベルの視線は鋭くなった。

【イザベル】「私はこの件の管轄を持ちません。だから非公式の手段を用いました。それが理由です。あなたは? 異端審問官付きの予言者に、このコインを読ませれば済んだはずでしょう?」


ギャラスの肩がわずかに動いた。視線はヨリンの死体へ。

【ギャラス】「ここで話すことじゃない。」


イザベルは彼を見つめ、その言葉を測った。自らの組織の予言者すら信じられないのなら、事態は想像以上に深刻だ。

【イザベル】「これからどうします? 私たちはどちらもここにいてはいけません。」


ギャラスは顎を固めた。

【ギャラス】「お前は去れ。俺が物音を聞いて調べに入ったと言う。」


【イザベル】「本当に?」


彼は短くうなずいた。

【ギャラス】「お前が殺していないのは明らかだ。」

クリスタルを回し、その光を見つめる。

【ギャラス】「むしろ、しっかりした予備調査をした。これが真犯人に繋がるかもしれん。」


イザベルは目を見開いた。ギャラスが――彼がそう言うとは。今まで彼をウリエラの道具としか思っていなかった。だがここにいるのは、かつて兵士だった男だった。

【イザベル】「この都市で何が起きているのか、教えていただけますか?」


彼は扉を指した。

【ギャラス】「行け。早く。誰かに見つかる前に。説明は時が来ればする。」


イザベルは深く頭を下げ、彼の肩に手を置いた。


彼も短くうなずいて応えた。


ワーデンはヨリンの家――かつての住まいであり工房でもあった死の館を後にした。


イザベルはデレクの部屋の前に立ち止まった。ごく普通の木の扉で、聖なるカシュナールが住んでいるとは思えない。


こんな場所に彼が住んでいるのは不思議だった。だがデレクのことだ、特別扱いを拒んだのだろう。いや、そうとも限らない。部屋の割り当てを決めるのはエラスマスで、彼のデレクへの嫌悪は隠されてもいなかった。これが「すぐにでも出て行け」という無言の圧力かもしれない。


以前なら、カシュナールがこんな扱いを受けていることを気にしただろう。だが今は――そんな余裕はなかった。


重い息を吐いた。前回の面会は最悪だった。今回がどうなるかまったく分からない。彼は自分とアリラを危険に晒したことに激怒していた。彼女は理解してほしかった。彼を救うことは全員を救うことだと。だが彼は聞こうとしなかった。


それでも今、彼の扉の前に立っている。


顎を固く結んだ。義務――それが理由だ。教会と部族の戦争を招きかねない事件を調べ、カシュナールに報告する。その誓いが、二人の間に残るわだかまりより優先される。


ノックしようと手を上げたが、拳は空中で止まった。


中から声が響いた。

【デレク】「どうした? ノックの仕方も忘れたか? 聞こえるくらいでいい、でも扉は壊すなよ。見習い課程で教わらなかったのか?」


イザベルは首を振った。ヴァンダが彼に知らせたのだろう。NOVAは離れた場所の気配すら察知し、内蔵の人工知能が逐一彼に伝えていた。それが彼女をいつも不安にさせた。取っ手を掴み、中へ入った。


二つの金属製の円筒――エール樽ほどの大きさ――が彼女の前に滑り出て、道を塞いだ。光るロッドを突き出し、胸に狙いを定めている。


【デレク】「落ち着け、坊主ども。彼女は俺と一緒だ。下がれ。」


浮遊する機械は武器を引っ込め、低いうなりを残して床に降りた。だが先端の赤い光はまだ点滅していた。警告のように。


イザベルは目を見開いた。

【イザベル】「これは……何ですか?」


デレクがその背後から現れた。

【デレク】「リペアボットだ。忘れたか?」


イザベルの視線は彼と機械を行き来した。

【イザベル】「以前はこんなに大きくありませんでした。それに、なぜ武装しているのです?」


デレクは気軽に肩をすくめた。

【デレク】「俺の安全を気にしてたらしい。NOVAが復旧するまでの間に、こいつらが自律的に自分たちを強化したんだ。」


【イザベル】「アーマーはまだ動かないのですか?」


デレクは両腕を広げた。

【デレク】「バラバラだ。直すこと自体は難しくない。問題は《球体》から吸収した死のエネルギーだ。強力だが不安定だ。」

顎の髭を撫でる。

【デレク】「イサラとヴァンダが二交代で、修理中の漏出を抑えてる。厄介な仕事だ。」


イザベルの胸に冷たいものが走った。

【イザベル】「漏出……? つまり、死の《球体》のエネルギーがアーマーから漏れるかもしれないということですか?」


デレクはうなずいた。

【デレク】「専門家じゃないが、イサラは相当怯えてたな。」


イザベルはベルトを握り、息を鋭く吸った。

【イザベル】「怯えるのも当然です! そのエネルギーがもし――」


【デレク】「わかってるって。」ため息を吐き、彼女を遮った。

【デレク】「全部死ぬんだろ? はいはい……。安心しろ。イサラが安定させる方法を見つけたそうだ。」


【イザベル】「では、あなたは? なぜ一緒に作業せず、ここにこもっているのです?」


表情が暗くなり、軽さは消えた。

【デレク】「今は他にやることがある。」


イザベルは冷静さを保って手を下ろした。何かがおかしい。彼の態度も声も。NOVAについて怒ったことはあっても、今の反応は違っていた。

【イザベル】「NOVAより優先することがあるとでも?」


デレクは背を向け、机に散らばる書類に視線を落とした。

【デレク】「要件を言え。忙しい。」


イザベルの目が細まる。

【イザベル】「何を調べているのです? その書類は……」


彼は鋭く振り返り、短く答えた。

【デレク】「お前の関知するところじゃない。カシュナールに関わることだ。で、何の用だ?」


イザベルは一歩引きかけたが、踏みとどまった。

【イザベル】「カトーに不利な証拠が判明しました。」


デレクは何も言わず、ただ見つめた。


【イザベル】「短剣です。柄が部族の意匠でした。」


デレクの手が脇腹の傷跡に触れた。

【デレク】「あの短剣のことは覚えている。――十分な証拠だな。お前の敬愛するウリエラは、ついに望みどおりの戦争を手に入れるってわけだ。俺の“心からの祝福”も伝えておけ。」


イザベルの顎が固くなり、歯を食いしばった。やはり彼はすべての責任をウリエラに押し付ける。驚くことではない。だが、戦争をまるで祝祭の招待状のように語るとは――彼女の知るデレクなら、そんな言い方はしなかった。


【イザベル】「それだけではありません。コインも見つかったのです。教会の鋳造でした。」


デレクは義務的に視線を向けただけだった。

【デレク】「それで?」


【イザベル】「部族は貨幣を使いません。誰かが渡したはずです。」


デレクは一度うなずき、冷たく言った。

【デレク】「なるほど。俺を殺すために雇われた。そして支払いは教会の金、ってわけか。」


イザベルの鼓動が速まった。本当にこれがデレクなのか? 怒りも焦りもない。視線は机の書類に釘付けだ。

【イザベル】「そうです。教会に繋がる誰かが暗殺を命じたのかもしれません。もし証明できれば、戦争を止められるのです!」


誓いを果たす機会。彼にとっても意味があるはずだ。今こそ反応を示すべき――。


だがデレクはただ長い息を吐き、再び書類へ視線を戻した。


【イザベル】「それで? 何かお考えは?」


彼は考えから引き戻されたように目を上げた。

【デレク】「ん? ああ……よくやったな。」


拳が震える。

【イザベル】「戦争が起きても構わないのですか?」


デレクは目を天井に向けた。

【デレク】「もちろん気にしてるさ。お前のやってることは立派だ。拍手でもしてやるよ。だが俺は忙しい。」


再び背を向けた。


胸に熱がこみ上げる。許せない。

【イザベル】「何にそんなに忙しいのです? その書類は?」


デレクはぞんざいに手をひらひらと振った。だがその仕草は不自然に滑らかすぎた。

【デレク】「大したことじゃない。ここに来てからずっと追い求めていた答えが全部載ってる地図だ。この惑星――エリンドラと呼ばれているらしい――のな。お前も知ってただろ?」


イザベルの目が見開かれる。

【イザベル】「答え……ですか?」


【デレク】「ああ。俺にまつわる予言が必ず現実になる理由とか、なぜ《球体》が空から落ち続けるのかとか。小さな疑問だよ。」


イザベルの視線が書類から彼へ移る。

【イザベル】「それは……驚くべきことです。でも戦争は――」


【デレク】「戦争なんて」鋭く遮った。

【デレク】「俺の問題じゃない。出て行け。扉は閉めろ。」


背を向け、肩を固める。


イザベルの呼吸が止まった。皮肉も機知もない。残っていたのは冷たく空虚な闇だけ。


胸が締めつけられる。どうしてそんな言葉を? 避難民ですら「自分の問題じゃない」と言いながら彼は助けた。アリラもそうだった。それでも気にかけていたではないか。


あの地図が、本当に戦争で失われる数千の命よりも重要なのか?


「……違う。」


石のように低い声が響いた。


イザベルは振り向いた。


ツンガ・ンカタが戸口に立っていた。杖を握り締め、危険な怒りを眉間に刻んでいた。


【イザベル】「ツンガ! 戻ったのですね! な――」


【ツンガ】「違う!」

杖を床に叩きつけ、重い音が鳴り響いた。


ワーデンは眉をひそめた。

【イザベル】「どうしたのです?」


シャーマンは指をデレクに突きつけた。

【ツンガ】「死が奴の中にいる!」


デレクの眉間の皺が深まった。

【デレク】「何を言ってる、じいさん?」


ツンガはさらに近づいた。一歩ごとに杖が床を叩き、重い音を響かせた。

【ツンガ】「感じる。死が奴の中でとぐろを巻く。だから戦争を気にしない。」


イザベルはデレクを見た。


彼は肩をすくめただけだった。


本当なのだろうか? 彼の冷たさ、無関心――それは本当に彼自身の選択なのか? それともNOVAから滲み出す死の毒が彼を侵しているのか?


ツンガの声は獣の唸りのように低く響いた。歯を剥き出しにして。

【ツンガ】「こうして始まる……」


イザベルは唾を飲み込み、心臓が激しく打った。

【イザベル】「何が始まるのです、ツンガ? 何を言っているのです?」


彼は彼女を見なかった。視線はデレクに釘付けのまま、杖に火が走った。

【ツンガ】「感じる。血の中の蛇。木の中の腐り。人はこうして悪魔になる。こうしてお前は――シャイタニになる!」


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