78:久しぶりの魔王魔王しい魔王。
魔王に抱きしめられたまま眠って、朝を迎えて、腕の中から抜け出そうとするけど、がっちりホールド!
――――監獄か!
「何をモゾモゾやってる」
「あ、おは。トイレ行きたい……」
「……ん」
現実とはこんなもん。朝起きたら尿意は感じるもの。仕方ない。
魔王はするっと監獄の手を緩めてくれた。
トイレから戻って、着替えようとしていたのに、ベッドに戻ってと言われた。何故に。
「今日まで休みにしてるんだろ?」
「してるけど?」
「俺も休みだ」
「知ってるけど?」
スルーっと着替えようとしたのに、大股で近づいてきた魔王に抱き上げられ、ベッドにポイッと戻された。
「ちょっ?」
「久しぶりなんだ。もっとベッドで過ごしたい」
「ほむん」
「それは、どういう返事だ」
魔王ってわりと、ベターッとくっついてのんびりするの好きよね。
抱きしめながら寝るのも好きらしい。魔王より先に寝ているときってわりとあったんだけど、朝起きたら今朝みたいにギチギチホールド監獄になってるのが基本。
暑苦しいと文句を言うと、物理的にというか魔法的にというか、室温をグッと下げられる。
気軽に苦情を言ってはいけないタイプの男である。完璧に私の退路が断たれるから。
「魔王って、ほんと魔王魔王しいよね」
「……褒められているのか良く分からんな」
「私も分からん!」
「ブハッ!」
魔王が声を出し、お腹を抱えるほどに笑い出した。珍しい。
「ルヴィは本当に打てば響くというか。話していて楽しい」
「お褒めに与り光栄です?」
魔王って、立場的にあんまり馬鹿話とか出来なさそうだから、私みたいな珍妙な生物を愛でているだけではなかろうかという気分になる。
「自分で『珍妙』言うな。……珍妙だが」
「やっぱり! 思ってんじゃん!」
「まぁ、少ないが馬鹿な話をする相手くらいはいる」
いるんだぁ。……あ、ヤツか!
「ヒヨルド?」
「ん」
正解だった。
前にヒヨルドをしょうもないことで殺そうとした、とか言ってたし。まぁ、そういう相手なんだろうなとは思っていたけど。
実際のところ、何があってあのひょろモヤシくんは、長官とかいう高い地位になってるのやら。
「ん? あいつは二〇〇年前に拾った」
――――拾った? 二〇〇年前!?
予想外すぎる単語がポロポロと出てきすぎだ。
そしてあんなに幼い顔の白ウサ耳ひょろモヤシなのに、ガリゴリの歳上。
人間に換算すると十分の一と考えても、いや何か違う感。だって、どのみち二〇〇年は生きてるんだから。
「なんであんなに幼いふりしてんの!?」
「ん? モテるんだと」
「煩悩まみれウサギ!?」
「ん。あいつは全欲望の塊だ」
魔王、まさかの全肯定でヒヨルドディスり。
だけどフォローも忘れない。
魔力が多く、炎系の攻撃魔法はかなり得意で、瞬発力も良い。軍隊側を勧めたが、戦闘は嫌いだと言ったらしい。魔具で遊ぶのは好きらしいので魔具庁にいれたら、メキメキと頭角を現し、貯蔵庫の改良などかなり大掛かりな仕事もやってのけているらしい。
「ヒヨルド、有能な子だったのね……」
「ん。だが細かい作業はカスだ。氷魔法はもっとカスだ」
でも、やっぱりディスるらしい。
デはまた夕方に!





