68:性別って調べられるらしい
「あいたたた」
「どうしたの!?」
急にシセルがお腹を押さえて痛がったので、何かあったのかと思ったら、シセルが興奮するとお腹の子も一緒に興奮するらしく、勢いよくお腹を蹴られたのだとか。
「お腹が横に広がってるから女の子だろうって言われてるけど、こんなに暴れるのならやはり男の子かしら?」
「ん? あ、そうか。調べられないんだよね」
「え? 魔界では調べられるのですか?」
「へ?」
前世ではエコーとか写真とかあったけど、魔界ではどうなんだろう?
ちらりとウィルを見ると、なぜ子どもの性別がわからないのかと聞かれて、私とシセルはさらに混乱した。
「あー、申し訳ございません。私から説明しても?」
低姿勢かつ丁寧に話すヒヨルドに驚いていたら、ギロッと睨まれてしまった。
ヒヨルドいわく、魔族はほぼ全員が魔力を感知できるから、胎内にいる子どもの魔力も当然わかる。その魔力で男女や姿形さえも把握できるのだとか。
なにそれ魔力ってそんなに便利なの!? 使えないのがちょっとだけ悔しいな、なんて思っていたら、シセルがヒヨルドにずずいっと近付いて両手を取ると、人間の子どもも確認できるのかと聞いていた。
「出来ますけど、俺……私は苦手なんで……ま、魔王っ!」
ヒヨルド、挙動不審になりすぎじゃない? と隣にいる魔王に聞いたら、ああいう天然のタイプはヒヨルドが苦手とする女性なのだと教えてくれた。ヒヨルドにも苦手なタイプとかいたのね。
「知りたいのか?」
「はいっ!」
「別に構わんが、王太子や国王は同席させなくていいのか?」
「あっ!」
ウィルに言われて気付いた。
確かにその二人は同席していたほうがいいわよねということで、性別確認はまた後で行うことになった。
シセルと侍女さんたちに控室に案内してもらい、式典のタイムスケジュールを教えてもらった。
ウィルと私は城内広場で行われる式典に参列。
フォン・ダン・ショコラとヒヨルドとアレハンドロさんは王城内の大広間で立食や、広場で式典の観覧など、好きに過ごしていいらしい。五人には二人ほど案内役の侍女をつけてくれるそうなので迷子の心配はなさそう。
「では、参りましょうか」
シセルに案内され、私たちは式典の会場へと移動した。
今日は王城の門が国民のために開かれており、お城の中でなければ自由に出入り出来るようになっている。
二階には大きなバルコニーのような場所があり、その下には王城広場がある。国民はその広場から式典を見ることが出来る。
「相変わらずうるさい顔だな」
「貴方に言われたくないわ」
バルコニーに着いた瞬間、王太子殿下に悪態を吐かれた。そして横を通り過ぎようとした私をジッと見て眉間にシワを寄せた。





