20:ポセイドンなアクアパッツァ
アクアパッツァを五人前買い、パラソルの所にもどった。
「ん」
ウィルが手をパラソルに向けてスイッと動かすと、お洒落めの丸テーブルとイスがドーンと出てきた。テーブルの真ん中にはさっきまで地面に刺していたパラソルが立てられている。
仕事が早すぎるというか、浜辺で急にハイソサエティ感満載のガゼボみたいな雰囲気が出来上がってしまった。物凄く違和感があるけど、これは深く考えたら駄目だろうなと、目を瞑った。
「「いただきます」」
まずはクラーケン串にがぶり。完全なるいか焼きだった。しかも醤油味とガーリックペッパー味とあってどっちも美味しい。
「問題はアクアパッツァよね」
「アクアパッツァ?」
「あ、ポセイドン煮ね!」
ウィルが、アクアパッツァの中に浮いていた海ぶどうみたいなものを掬い、これがポセイドンだと教えてくれた。
「海藻なんだ?」
「ん。ほら」
あーんするような仕草だったので、口をパカリと開けると、クスリと笑われた。
「ん? ん! んふふふっ」
なんだろうか、前世の駄菓子でパチパチと口の中で弾ける砕いた飴みたいなものがあったのだけれど、ポセイドンはそんな感じの食感だった。そして、ふわりと鼻から抜けていく山椒のような香り。
不思議な食感と風味だけど、美味しかった。
刺激は、辛いじゃなくてパチパチだったのかと驚きつつ、煮込まれていた白身魚を食べてみる。鰆を食べているような、ふわふわホロホロした身だった。
魚と一緒にポセイドンを食べると、更に不思議食感になる。それなのに、めちゃくちゃ美味しいのだ。
「パチパチする!」
フォン・ダン・ショコラたちは、パチパチ食感のポセイドンがとても気に入ったらしい。
ちょっと買いすぎたかなと思っていたけど、全部ペロリと食べ終えてしまった。
フォン・ダン・ショコラたちはまだ遊びたいと言っていたものの、かなり体力を消耗しているし、ご飯の途中で三人ともちょっと眠そうにしていた。
まだまだここに滞在するんだから、明日も来ればいいじゃないの。それに私もちょっと疲れたし、今日は一旦お義父さんのお屋敷でお昼寝しない? と提案すると、三人とも仕方ないなぁといったい雰囲気で、了承してくれた。
「るゔぃちゃんは、にんげんだから、しょこらたちと、たいりょくがちがう?」
「そういうこと!」
「ルヴィちゃんは、ボクたちがまもるんだよ」
「ふーん。ごしゅじん、オレらよりつよいきがするけどな?」
なにか言ったかね? とダンを睨むと、尻尾を股の間に挟んで「なんでもない! オレがまもるぞ!」と元気よく答えてくれた。
うむ、よろしく頼むよ。





