8:荷物の準備とケンカ
ウィルのお父さんに会いに行く予定の三日前になり、トランクに荷物を詰めることにした。
「下着と服はこれでオッケーね」
「水着」
「ちゃんと入れたわよ!」
何気にウィルが一番楽しみなんじゃないの? ってくらいに、人の荷造りの手伝いをしていた。
「フォン・ダン・ショコラたちの着替も入れたし大丈夫。ウィルは自分のストレージでしょ?」
「ん」
ウィルは好きなときにストレージから出せるからいいけど、私たちはウィルと別行動になった瞬間に詰むから、旅行用のトランクは必須なのだ。
肩下げのポシェットには、ハンカチや簡易の化粧ポーチとお財布など、必要最低限のものをいれた。
「あとはフォン・ダン・ショコラたちのリュックよね」
自分たちでやると言っていたので放置していたけど、ちゃんと出来ているんだろうか。ウィルとこっそり部屋を覗きに行くと、部屋の床がゴチャッと散らかっていた。
そして、ダンが何やらよくわからない武器みたいなものを入れようとしているのをフォンが止め、ショコラがぬいぐるみを入れようとしているのをフォンが止め、なんだかフォンが一人だけ大変そうだった。
「これもだめー?」
「だめ! えほんはじゃまになるよ」
「これくらいいいだろ」
「よくないよ! メリケンサックは、ぜったいにいらないから!」
ダンは、メリケンサックを何に使う気なんだ……というか、どうやって手に入れたんだ。お小遣いで買ったのかな?
「「ちぇーっ」」
「もぉ、ボクのいったものはいれたの!?」
「「まだー」」
「っ、なんで! ふたりのバカッ!」
――――あちゃぁ。
フォンが涙目になって怒鳴って部屋から飛び出そうとしたので、慌てて掴まえて抱きしめた。
「ルヴィちゃんっ……」
「よしよし、頑張ったね」
フォンの背中をそっと撫でると、更にわんわんと泣いてしまった。フォンがこんなに泣くのは、出会ってから初めてだ。
なんでこんなに感情的になっているんだろうか。いやまあ、自由奔放なダンとショコラ相手だと、真面目なフォンには負担が大きいんだろうけど。
「な……なかなくてもいいだろ……」
「ふぉん……おこった…………」
ダンはちょっと焦って、ショコラはつられて泣きそうになりながら、それぞれがごめんねと謝ってきた。
フォンはまだ心が落ち着いていないようで、私の胸に縋り付いてグスグスと鼻を鳴らしている。
「ダン、ショコラ、とりあえずお部屋を片付けてくれる? それから話し合いましょ?」
「「うん」」
「…………っ、ボクもでづだゔ」
まだまだ涙は止まらないものの、フォンは二人に片付けさせて自分は見ているだけというのは、出来ない性質らしい。もう一度フォンの背中を撫で、行っておいでと言うと、コクリと頷いて部屋に入って行った。
何と何と、この話で100話目らしいヽ(=´▽`=)ノ





