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eleven  小さな約束

ずいぶん久しぶりですが、一応これが最終話になります。

完結していないのは、なんとなく続編というかその後の短編とか書きたくなった時のためですので、本編は完全終了になります。読んでいただきありがとうございました。

 カランコロン……


「早瀬さん!」


 俺は急いで走ってきた勢いのままローズガーデンに飛び入り、早瀬さんの名前を叫ぶ。しかし、反応がない。


 軽く店内を見渡しても、早瀬さんの姿はない、となると残りは……


「カウンターか!」


 急いでカウンターに駆け寄り、中を覗き込む。


「……っ、………!」「早瀬さん!!」


 読みは外れず、カウンターには早瀬さんが倒れていた。


「大丈夫ですかっ! いったい何があったんです!?」


 早瀬さんを抱きかかえ、衝撃をあまり与えないように体を揺らす。


「ぁ……京、也……君?」


「大丈夫ですか!?」


 早瀬さんは目を覚ましたようだが、何かの後遺的な症状か、うまく身動きが取れていない。


「京也君……春香ちゃんは?」


 なぜここで春香の名前が出るのかよくわからない。


「春香なら家に……」


大丈夫・・・なの!?」「大丈夫……だと思う」


 一体、『大丈夫』がどういう意味で言われたのかはよくわからないが、なんにせよ春香はもう……大丈夫だ。


「そう……よかった、それならいいの」


「早瀬さんこそ、大丈夫なんですか?」


 春香も確かに心配ではあるが、今は早瀬さんの体のほうが心配だ。


「うん、ちょっと体が痺れてる感じがするけど、大丈夫!」


 それは大丈夫なんだろうか? まあ、本人が大丈夫って言ってるんだから大丈夫か。


「ところで早瀬さん、俺、早瀬さんに言わなくちゃいけないことがあるんです」


「……急にどうしたの?」


 春香さんは怪訝な表情で俺を見ている、いきなりだから状況がつかめていんだろう。


「早瀬さん……いや、亜美、俺は貴女が好きです、だから……付き合ってください!」


 俺は秘めていた思いを亜美に打ち明けた、春香が俺に好きだといってくれたように。


「え……、あ、あははっ! いきなりだね、京也君っ!」


 亜美は、照れているのか顔を赤く染めながら笑って目を泳がせている。


「そうですね、いきなりですね、でもよかったらいま答えをくれませんか?」


 あまりに強引で、普段と違う俺の様子に驚いているようだ。


「ぇ……いやでもっ、京也君には春香ちゃんが……」


 亜美は春香を引き合いに出して何とか問答を逃れようとする。


「春香は関係ない、亜美の素直な気持ちが聞きたいんです。好きですか? 俺の事」


 だけど……俺は今、答えを聞きたい。


「私……私は……京也君の事が好き」



 ―――――っ!!



「きゃぁっ!」


 咄嗟とっさ。咄嗟に反応してしまった。


「俺も……好きです!」


 亜美の口から好きという言葉が漏れた瞬間、俺は抱き締めてしまった。


「い、痛いよっ! 京也君!」「あ、ごめっ!」


 咄嗟の事で制御が付かず、亜美の小さな体が潰れるんじゃないかと思うくらい強く抱いてしまっている。


「ゴメン、力加減を考えられなくて……」「謝らなくていいよっ! その、私も……嬉しかったし」


 とりあえず俺は密着している体を離し、亜美の顔を見つめる。


「それで、その……さっきの続きなんだけど」「続き?」


「うん、私は京也君が好き、だけど付き合うのはまだ……、できたらもうちょっとこのままの関係でいさせて」


 なぜ、そんなことを言うんだろう。


「どうして?」


「私、怖いの」


「怖い?」


「そう、今、京也君と付き合うと……幸せだけど、幸せすぎて、この店の事が中途半端になりそうで怖いの。喫茶店は……子供のころからの夢だったから」


 子供のころからの夢、やっと実現したそれを、自分が恋に溺れて中途半端に終わらせてしまうことが怖い、ということなんだろうか。


「だからね、この店がある程度お客さん来るようになったら、もう一度、今度は私からお願いしてもいいかな?」


「もちろん。待ってるよ、なるべくこの店にも顔を出すようにする、お客も、宣伝とかいろいろ手伝うよ。だからその時はっ、よろしく……で、いいのかな」


「うん!」


 亜美は、花が咲き誇っているかのような愛らしい笑みを浮かべて頷いた。





「バイバイ! また明日!!」


「分かった、また明日」



そうして俺と亜美の恋は一旦の終結を迎えた――







 



 



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