母さんの所に行った ③
散々、母さんにフィナへの思いを聞かれた。答えないとしつこいし、フィナは俺がなんていうんだろうってわくわくした顔で見ているし、本当恥ずかしいけど口にしたらフィナに「ゼノ、大好き」って抱きつかれた。
母さんはその様子を見て、「仲良きことは良きことかな」などといってうんうんと頷いているし。
「あ、そうだ。母さん」
「ん? なんぞえ」
「フィナの婚姻衣装みたいし、折角だから結婚式あげられないかなと思っているんだけど」
「おお、それは良い!」
母さんは、俺の提案を聞いて目を輝かせた。
「でもお義母様、私かっこいいゼノを他の人に見せたくないのです」
「ほぉ、ではどうするのだ?」
「ですから、人型のゼノとではなく、今の姿のゼノと式を挙げたいのですわ。人型のゼノを見て、他の女性がゼノを好きになっても嫌ですもの。私には今のゼノも十分かっこいいと思うのですけど、ゼノの魔獣の姿だと何とも思わないのに、人型を見たら行動を起こすような方が居そうで私は嫌なのです」
「……ゼノラシアは本当に愛されておるのぉ。母としてそれは喜ばしいことだ。では、そのように取り計らおうぞ。よし、では早速カーライスに話をつけてくる」
母さんがそんなことをいう。
というか、カーライスって誰だ。って思ってたらフィナが答えをいった。
「お、お義母様、それはこの国の国王陛下のお名前では……」
「そうじゃ。我が義娘は博識じゃのぉ」
「結婚式で陛下に話をつけるというのは……」
「我が息子の式だからの。盛大にして何が悪いのか? それに、セラフィナよ、盛大な式にすれば、ゼノラシアがセラフィナのものだと世界に宣言することができるということである。それはセラフィナにとって喜ばしいことであろう?」
「ゼノが、私のものだって、宣言……!」
とりあえず俺はフィナの婚姻衣装見たいだけだから、と母さんとフィナの会話をただ聞いてた。
「魔獣の姿のままゼノラシアが結婚式に出るとなると、その場合の衣装をどうするべきかも考えねばならぬな。まさか、式だというのに男が何も着飾らないというのもアレであるし」
「ならば——」
「ふむふむ、そうか。それなら、そちらの衣装は——」
「私は——」
「招待客には——」
「私が呼びたいのは——」
俺はしばらく蚊帳の外であった。
それから母さんはこの国の王の元へと向かった。俺とフィナは王宮の客間に通された。
「ゼノのお母様、素敵ね」
「そうか?」
「うん。流石、ゼノのお母様って感じだわ」
フィナは、ベッドの上に寝そべる俺の身体に体をくっつけて、嬉しそうに言う。
魔獣の姿のままでも王宮の高級そうなベッドに身を沈めるのはなんか気持ち良い。
「ゼノ、結婚式では私、ゼノを悩殺できるような衣装を着るわ」
「……悩殺って」
「ふふ、ゼノがすぐ私を襲いたくなるような衣装にしたいってお義母様にも宣言したもの」
「そ、そうか」
なんともコメントに困る宣言をされた。でも……。
「他の雄も、悩殺されるのはちょっと困る」
と、そう思う。
うん、だってフィナは俺の番だから。綺麗に着飾ったフィナを俺はこの目で見たいけど、フィナが他の雄に見初められるのは困る。
「ふふ、大丈夫よ。ゼノ。私、ゼノを愛しているもの。ゼノのこと、ずっとずっと昔から大好きなんだもの。ゼノ以外見えないぐらい、私は貴方を、愛しているわ」
フィナが俺から身体を話して、そして、俺の目をまっすぐ見て、妖艶に笑う。
「俺も、……愛しているよ、フィナ」
自然と俺の口からもそんな言葉が出た。フィナは、嬉しそうに笑った。
「ふふ、嬉しい。ね、ゼノ、早く子供作ろうね」
「お、おう」
「ね、今日は私が変身するわ。だから、今から夫婦の営み、しましょ?」
「……フィナ、今昼間」
「関係ないわ。私はゼノから愛しているって聞けて、とってもしたいもの」
フィナに誘惑された。
その後、母さんに散々からかわれたのは別の話だ。




