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魔獣に転生した俺と、彼女の話。  作者: 池中織奈
後日談とか番外編とか
15/19

母さんの所に行った ①

 フィナの祖国を飛び出して、早数か月。フィナは二つ名ついているし、有名人になっている。俺を連れているっていうのも有名になる理由の一つである。

 フィナと並んで街中を歩きながら、それにしても俺がこんな風に人の居る街を歩くなんてフィナと出会うまでは想像さえもしなかったと本当に思う。それにであった頃なんて、フィナと番になるとかそんなこと欠片も考えてもいなかった。

 そんな俺がこうしてフィナと番になって、母さんの所に挨拶に行こうとしているなんて本当自分でびっくりだ。

 フィナと契約したのなんて俺の気まぐれだった。その気まぐれの結果こうなるんだから、人生って本当分からない。いや、俺は魔獣だから獣生っていうべきか? 

 「ねぇ、ゼノ、ゼノのお母さん、此処にいるの?」

 「ああ」

 母さんはフィナの祖国からそれなりに離れた国にある。とはいえ、同じ雷虎の噂は母さんの耳にも入っているだろう。そういえば、あの国は高位魔獣と契約したフィナを連れ戻したいらしくて色々追手がきた。帰らないけどな。

 というかさ、俺と番なの知らないとはいえ、王子の婚約者にするから戻ってこいとかほざいているのは馬鹿かと思った。というか、その王子あのフィナの義妹の婚約者だった奴だし。何考えているんだ?

 それもあって母さんの所へ早く来ようと思ったんだよ。母さんの所で何かしら対策できそうだったから。本当はもう少しゆっくりしていてもよかったんだけどな。

 「ゼノでも、ここ王宮だよ? めちゃくちゃ見られているけど、大丈夫?」

 「問題は……まぁ、あるかもだけど、大丈夫だろ」

 王宮の正面では、中に入るための手続きをする人が何人か並んでいる。その中で魔獣を連れているのはフィナだけだし、凄い見られている。俺がここに最後に来たのって大分前だしなぁと思っていたら、俺達の番が来た。

 「どのような御用でしょうか?」

 「母さんに会いに来た。ゼノラシアが来たって、伝えてもらえるか?」

 俺が口を開けば、

 「……お母様、ですか?」

 と門番は疑問を口にする。

 「ああ。ラフィネアシアっていうのが俺の母さんの名前だ。いるだろ?」

 「……ラフィネアシア様のご子息ですか!? 確認してきます!!」

 ラフィネアシアの名前を出せば、門番は慌ててかけていった。

 「……ゼノ、ラフィネアシアって、この国の」

 「ああ、母さんここで王族と契約しているから」

 「……なんで言わなかったの」

 「驚かせた方がいいかなって思ったし、それに別に母さんが誰と契約してようが関係ないだろうし」

 母さんは、この国王族と契約をしている。というか、代々契約しているみたいな感じで、俺が生まれた時からずっとそうだった。とはいえ、その母さんの子供である俺や兄妹たちは全然人とかかわりもせず、マイペースに生きていたわけだが。

 何時来たかも覚えてないけど前にここに来た事あるしな、俺。

 母さんに会うのも本当に久しぶりだから楽しみだ。でも番が出来たってフィナを紹介するのは少し恥ずかしいかもしれない。今までそんなもの全然興味がなかったから。

 

 で、俺とフィナはとりあえず王宮の中へ通された。


 まぁ、まだ母さんと本当に血のつながりがあるかとか、確認段階だから王宮の警備の人間が俺達の事見張っているけど。

 母さんに会うまでもちょっと面倒でやだなぁと思ったりもする。母さんに会いに来ても手続きとかめんどくさいからあんまり会いに来てなかったから本当に久しぶりだ。

 「……ラフィネアシア様のご子息か、確かに以前見た面影があるが」

 通された部屋で待ってたら、それなりに年齢がいった偉そうな男が出てきた。俺は記憶にないが、前来た時に俺を見た事があったらしい。

 「それで、その少女は?」

 「ああ……俺の契約者で、俺の番。母さんに報告しに来たっていうか、そんな感じだ」

 そういったら、男は「番、ですか」と驚いた顔をしていった。魔獣と人での番って例がないわけじゃないけれど、あんまりないしなぁとその反応を見ながら思う。ちなみに俺と兄妹の父さんは、気まぐれな人で時々しか母さんの元へ来ないし、俺も数回しか会ったことないから正直ほとんど覚えていない。

 「……ある国から貴方たちに似た風貌の者を連れ戻したいという話が来ていますが」

 「それは私とゼノの事です。国に居たくなくて飛び出したので」

 「でも俺もフィナも戻る気はないぞ。フィナも戻りたくないって言ってるし」

 言われた言葉にそう答える。そもそも、フィナにとってあの国は好んでとどまりたいと思う場所では決してないし。

 そんなこんな話していたら、

 「ゼノラシア、久しぶりに顔を出したかと思えば……人の子を連れているとは」

 と、そんな母さんの声が聞こえた。

 そちらの方へ視線を向ければ、魔獣の姿の母さんが、少し驚いた顔をしてこちらを見ていた。





 

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