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第三話 勇者パーティ

「ラミ。いきなりケンカ腰はダメだよ? ヘタしたら勇者パーティと戦いになっちゃうからね?」


「上等だよ。舐めた口ききやがったらチョーパン喰らわしてから叩っ斬ってやる」


ラミリアは眉間にシワを寄せて肩をぐるぐる回した。


なお、チョーパンとは頭突きを意味する昭和のヤンキー言葉である。


二人が転生前に暮らしていたのは平成の時代だが、ラミリアは昭和ヤンキー漫画やヤンキードラマ、映画をこよなく愛していた。


彼女の口調がこんなに荒っぽいのもその影響である。そして、幼馴染であるヴァンは彼女から何度も繰り返し昭和ヤンキー漫画やドラマを観せられていたため、大抵のヤンキー言葉は理解できる。



と、そこへ兵士に案内されて勇者パーティがやってきた。


赤い髪を逆立てた勇者エルヴィンに楚々とした雰囲気が印象的な賢者のマリア。黒いローブを纏った幼い顔立ちの女魔法使いジル、男らしい屈強な体つきをした剣聖のクルド。


全員、教会の洗礼で正式に称号を授かった者ばかりだ。



「ラミリア! 今日こそいい返事を聞かせてもらうぞ!」


勇者エルヴィンはラミリアの顔を見るなりそう叫ぶ。


「これはこれは、勇者様じゃあーりませんかー。いい返事って何のことでしたっけ〜?」


ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるラミリア。


完全に煽る気満々である。


「ふ、ふざけるな! お前は聖女なんだぞ!? 俺たち勇者パーティと同行して魔王を倒す義務があるんだ!」


そう、この世界には魔王がいるらしい。そもそも、勇者や聖女として選ばれる者が出てくるのは、誕生した魔王に対抗するためとのことだ。



「あ〜……その話ね。でもさぁ、そもそも魔王の被害なんて出てねぇじゃん。悪いけどさ、魔王や魔物よりも虎視眈々とこの国を狙ってる隣国の奴らの方があたいにとっちゃずっと問題なわけよ」


腕を組んだラミリアの胸が持ち上がり、勇者エルヴィンの視線が釘づけになる。


「……おい、聞いてんのかよ。人の乳ばかり見てんじゃねぇぞタコ助が」


眉間にシワを寄せてエルヴィンを睨みつける。


「い、言いがかりだ! お前の胸など……!」


「そうよ! 彼が夢中なのはこの私だけよ! あなたなんてお呼びじゃないわ!」


言い訳がましいエルヴィンを庇うように、賢者マリアが言葉を被せる。以前からラミリアに対して敵意剥き出しだったマリア。エルヴィンの隣に立ち、目力を込めてラミリアを睨みつける。



「……ああん? 何メンチ切ってんだてめー。マジでトサカにくんぜ。ちょづいてんじゃねーぞシャバ僧がよ。あたいとタイマン張る気か?」



──説明しよう。ラミリアは頭に血が昇ると語彙の多くが昭和ヤンキー言葉になってしまうのであーる。


「め、めんち? たいまん??」


もちろんマリアたちに通じるはずがない。マリアもエルヴィンもきょとんとした表情を浮かべている。


すかさずサポートに入るヴァン。


「何を見ているんですか。本当に頭にきます。調子にのらないでくださいダサイ人ですね。私と一対一で戦いますか? と姫は申しています」


的確な翻訳である。



「や、やめるんだ! 俺たちは別にケンカをしにきたわけじゃない。ラミリアに俺たちのパーティへ入ってほしいだけなんだ」


ハッと我に返ったエルヴィンが場を収めようとする。


いや、そもそもてめぇが元凶だかんな?



「ちっ。何度来たって同じこった。あたいは魔王なんかどうでもいい。まあ明確に敵対するってんなら話は別だがな。聖女様の役割とやらにも興味はねーよ」


勇者パーティ全員が苦々しい表情を浮かべる。


「そもそもよぅ、清楚系ビッチ……じゃねぇや賢者も魔法使いもいるじゃねーか。治癒魔法の使い手が欲しいなら十分だろ?」


実際には聖女と賢者、魔法使いでは治癒魔法のレベルが段違いだ。治癒系の魔法において、賢者や魔法使いは聖女の足元にも及ばない。


「い、いや……聖女の治癒魔法とは比べものにならない。だから、何としてもラミリアにはパーティに加入してほしい」


「いやでーす」


真剣な表情で頭を下げたエルヴィンに対し、バカにしたような返事をするラミリア。


エルヴィンのこめかみに蜘蛛の巣のような血管が浮きあがる。



「てめぇの言葉は安っぽいんだよ。巨乳枠のハーレム要員が欲しいだけだろーが。透けてんだよ」


図星だったのか、エルヴィンの顔が茹でダコのように赤くなり始めた。



「んじゃ、話し合いはお終いってことで。お帰りはあちらで〜す。気をつけて帰ってね、チュ」


最後まで煽り倒したラミリアは満足したのか、踵を返して自室に戻ろうと歩き出す。



「ふ、ふ、ふざけやがってーーー!!」


ついに我慢の限界を迎えたエルヴィンは、相手が()()王女であることも忘れ、抜剣すると背後から斬りかかった。



「ラミ、ほい」


ヴァンが地面に転がっていた木刀をラミリアに投げて渡す。


「ラミ、顔はヤバいよ。ボディーをやんなボディーを」


瞬間、盛大に噴き出すラミリア。


「ヴァン、あ、あんたあとで覚えときなさいよ」


笑いを堪えながらエルヴィンを振り返ったラミリアは頭上から迫る斬撃を紙一重でかわすと、流れるような動きで胴を薙いだ。



「ぐぼぁあっ!!」


強烈な一撃を喰らいその場に膝をつくエルヴィン。



「よ、よくもエルヴィンを!」


賢者と魔法使いが魔法を放つが、ラミリアはそれを悠々とかわしつつ二人に近づくと、木刀でぽかりと頭を殴った。


続いて剣聖の男が大剣を振り上げて強力な一撃を喰らわそうとするが、ラミリアはその前に木刀の柄で男の鳩尾に打突を喰らわす。



「ぐ、ぐうぅぅ……」


腹を押さえてうずくまる剣聖。


「いやいや、あんた正式な剣聖でしょ? あたいに負けててどうすんのさ。そんなんで魔王退治とかマジ? まあ知らんけど」


ラミリアは男を見下ろしつつ屈辱的な言葉を投げかける。



「まあ魔王退治がしたいならお好きにどうぞ。ただ、あたいを巻き込むのはやめてねー。んじゃ、ばいばいきーん」


ひらひらと手を振ったラミリアは、兵士にエルヴィンたちを外へ叩き出すよう命じるとヴァンを伴い自室へ戻っていった。


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「森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜」連載中!


https://book1.adouzi.eu.org/n3094hw/

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