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第十九話 事後処理

ラミリアが勇者パーティを斬り捨てた現場に臨場した教皇スーリアにより広場の騒ぎは鎮静化される。最後までラミリアやルナマリアに敵対心を抱いた聖騎士団長クラウドであったが、ヴァンによって腕を斬り落とされた挙句スーリアから聖騎士を解任されたのであった。

ラミリアの自室では、二時間ほど前に別れたスーリアにルナマリア、ヴァンの三人がソファに体を預けてくつろいでいた。


ただ、部屋の主であるラミリアの姿はない。国王と王妃から呼び出しを喰らっているためだ。さすがに、独断で勇者パーティ全員を斬ったとなると、王女といえど無視できない問題である。


キィとドアが開く音が室内に響く。三人が視線を向けた先には、疲れたような表情で部屋に入ってくるラミリアの姿が。侍女のバレッタも一緒である。


「お疲れ、ラミ」


「ああ……マジ疲れたわ……」


隣に座ったラミリアに労い(?)の言葉をかけるヴァン。どうやら本当に疲れているようだ。


「その調子だと、ずいぶん絞られたようだな」


「まあな。でも、スーちゃんが先に話を通してくれておいたおかげで助かったわ」


何かと問題があった勇者パーティをラミリアが斬ったことを教会が問題視しなくても、国王や王侯貴族まで問題にしないとは限らない。そのため、スーリアは一度教会へ戻ったあと、すぐ王城に出向き陛下と王妃に謁見を申し込んだのである。


勇者パーティが起こした問題や、それによってラミリアが剣を振るったことをスーリアは丁寧に説明した。そのおかげでラミリアへの罰などはなくなったのである。説教はされたようだが。



「ラミ……ごめんね」


ルナマリアは少し俯き加減でラミリアに謝罪した。どことなく元気がない。


「気にすんなって。ルナマリアは何も悪くねぇじゃねぇか。悪いのは全部あいつらだからさ」


「でも、私のせいでラミリアは勇者たちを斬ることになって、国王たちにも叱られる羽目になって……」


「いいんだって。悪い奴を斬るのも叱られるのも慣れてるっての。それより、ルナマリアが無事で本当によかったわ」


あっけらかんと話すラミリアに対し、ルナマリアは泣き笑いのような微妙な表情を浮かべる。


「ルナマリア。ラミもこう言っているし、気にすることはない。こういう言い方はどうかと思うが、ルナマリアがきっかけを作ってくれたおかげであいつらを処分できたしな」


整った顔に邪悪な笑みを浮かべるスーリア。とんでもない腹黒教皇である。



「それはそうと、スーちゃんのほうは大丈夫なん?」


「私? 何故だ?」


「教会も一枚岩じゃないんだろ? 今回の件でやいやい言う奴が出てくるんじゃねぇの?」


「ああ。その可能性はあるが……そこまで心配はしていない。私と同じで勇者に早く消えてほしいと思っていた奴らも大勢いるからな」


「へー。あ、そう言えば聖騎士団の団長がいなくなったわけだけど、今後どうなんの?」


ヴァンに肘から先を斬り落とされ、スーリアから聖騎士の身分も剥奪された団長クラウドの将来は暗い。もちろん、誰も同情などしていないが。


「クラウドの側近だった男が団長に昇格する。あいつはクラウドよりも頭がいいし枢機卿の信頼も厚い。多分大丈夫だろう」


なるほどね。



「それにしても、今回はヴァンも結構暴れていたようではないか」


のんきにお菓子を頬張るヴァンにスーリアが目を向ける。


「暴れたってほどじゃないと思うけど。一応これでも将軍だしラミの護衛でもあるからね」


「私も久々にヴァンの剣技を目の当たりにできて少々嬉しかったぞ」


スーリアとラミリア、ヴァンは同じ学校に通っていた旧友でもある。剣術の授業もあったのでヴァンの強さは知っていたが、聖騎士団長が手も足も出ないほどとは思っていなかった。


「まあそれなりに強くなきゃラミの護衛なんてできないしね。僕のほうこそ、今まであまり見たことないスーリアの表情が見れて嬉しかったけど」


国軍や聖騎士たちの前で演技をしていたときのことを思い出し、恥ずかしくなったのかスーリアの頬がやや紅く染まる。


「な、なな……何を……!」


「あれ~? スーちゃんもしかして照れてんの? え、まさかスーちゃんってヴァンのこと……」


「なななな……!なな……!」


いや、だからジョ〇マンかっての。


「はいはい。スーリアをからかわないの。スーリアが一番好きなのはラミに決まってるでしょ?」


ヴァンにとどめをさされてしまい、耳の先まで真っ赤になるスーリア。


「お、お前らいい加減に――」


と、ドアがノックされ侍女のカタリナが一礼して入ってきた。


「失礼いたします姫様。お客様がおいでなのですが……」


「客? 誰?」


「それが……」


カタリナはちらりとスーリアに視線を向ける。


「エルミア教の枢機卿、シャロン様と仰っています」


あ。あのおっとりしているようで超怖ぇー姉ちゃんか。ん? それにしてもどうしてここへ?


「スーちゃん、何か聞いてる?」


「いや……王城に出かけると言って最小限の供回りだけ連れて飛び出てきたからな。連れ戻しにきた可能性が大だ」


はあ、と大きくため息をつくと同時に項垂れる。どうやらあまり得意な人物ではないらしい。


「とりあえずここに呼ぶ?」


「そうだな……そうしてくれるか」



やがて、カタリナに連れられてシャロンがラミリアの自室へやってきた。


「失礼いたします。ラミリア王女、ヴァン将軍、先ほどはきちんと挨拶もできず申し訳ございません。私はエルミア教で枢機卿を務めております、シャロン・マイアと申します」


「ああ……で、いったい何故ここに?」


「もちろん、そこの困ったちゃんを連れ戻すためですわ」


シャロンはソファでもじもじしているスーリアにじろりと目を向けた。


「い、いや……すぐに戻るつもりだったんだがな。いろいろ積もる話もあったもので……」


「何を言っているのかしらスーリア。あなた何度かアリスを身代わりにして教会を抜け出しているわよね? どこに行っているのか私が把握できていないとでも?」


どうやら、二人は教皇と枢機卿という立場を越えた関係性のようである。


「な、何故それを!?」


「私も子飼いの密偵をあちこちに放っているからよ。あなたの行動を監視するためにね」


街中に密偵を放つ教皇と、その教皇を見張るために密偵を放つ枢機卿。何だか面白い。


「そ、そんな! ずるいぞシャロン姉!」


ん? シャロン姉?


「人前では役職か名前だけで呼ぶようにって言ったわよね?」


やや低いトーンで言葉を発したシャロンは、スーリアのやわらかそうな頬を指でつねって引っ張った。


「いひゃい……! わあったって! いひゃいからはなひて……!」


スーリアのこのような姿をあまり見たことがないラミリアとヴァンは、思わず呆気に取られてしまった。


「あ、あの……お二人の関係って……」


恐る恐るヴァンが質問する。グッジョブ!


「あ、失礼いたしました。私とスーリアは従姉妹なんです」


何と。そうなのか。クラウドを一喝したときの迫力は只者ではないと思ったが。なるほど、スーちゃんの従姉妹ね。何となく納得。


二人のやり取りから何となく関係性も見えてきた。


まあ、お堅い人よりはこういう姉ちゃんのほうが話しやすくていいな。わたわたとするスーリアを尻目に、そんなことを考えるラミリアであった。

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「森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜」連載中!


https://book1.adouzi.eu.org/n3094hw/

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