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第十二話 その名は日本刀

※並行して連載している「森で聖女を拾った最強の吸血姫~娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!」の書籍化&コミカライズが決定しました☆ありがとうございます☆


腕のいい鍛冶師を紹介してほしいとのラミリアの頼みを聞き入れ、ドワーフのもとへ足を運んだ魔王ルナマリアと側近のジン。森の奥に住居を構える低身長巨乳の女ドワーフは最初つっけんどんな態度をとったものの、ルナマリアが魔王と知り慌てて跪くのであった。

「頼む! 私に刀とやらを打たせてくれ!」


ルナマリアが連れてきた低身長巨乳のドワーフ、シオンは、依頼主がラミリアだと分かるといきなり土下座して懇願し始めた。


「お、おう……そりゃありがてぇんだけど……」


「まさか、この私が剣聖ラミリアの剣……いや刀を打てるなんて……」


シオンは涙を流して喜んでいる。鍛冶師にとって凄腕の剣豪や達人の武器を手掛けるのはこの上ない誉れなのだ。


「それにこれ! 日本刀って達人が使えば鉄でも斬れるんだろ!?」


ラミリアがジンに渡した紙を見せながらシオンが興奮する。日本刀は鉄を斬れる、悪霊も斬れるなど厨二が好きそうなことを書いて渡しただけなんだが。


「おうよ。かつてある国には斬月や鉄砕牙、逆刃刀、和道一文字など数々の名刀があった。その中でも特に凄かったのが斬鉄剣だ。文字通り鉄でも紙のように斬っちまうとんでもねぇ刀だ」


「おお……つ、使い手はどんな奴だったんだ!?」


「石川五右衛門って奴でな、仲間と三人で悪人どもをバッサバッサと斬ってたんだぜ」


腕を組んで自慢げに話すラミリア。元ネタを知っているヴァンとルナマリアは呆れ顔だ。


「そういうわけでシオン。お前にはあたい専用の刀を打ってもらいたい。金はいくらかかっても構わねぇ。最高の素材を使った最高の仕事を期待してるぜ」


「よっし!! 任せてくれ!」


本職の刀鍛治じゃなくてドワーフが打った刀か。どんな刀になるか今から楽しみだな。ラミリアは久しぶりに心躍る気分だった。



「何? ラミ……王女が?」


「は。何やら魔族と思われる美少女と一緒に歩いている姿を目撃した者がおります」


エルミア教の教皇スーリアは街中に放っている密偵からもたらされた報告を聞いて首を傾げた。


ラミが魔族と? いやその前に美少女? そんな魔族いんの? 意味分かんねぇ。


「報告書を見せろ」


密偵から手渡された報告書に目を落とす。たしかにラミリアらしき者が魔族らしき者と一緒にいたと書かれている。


ラミリアはめちゃくちゃな奴だがバカではない。あんなだが一応王族でもある。それが魔族を連れて街中を歩いていた? いやいや、ねーだろ。


密偵を下がらせると、教皇の間へ持ち込んでいるお気に入りの一人用ソファに体を預け天井を眺める。艶のある黒髪をかきあげ、もう一度報告書に目を通した。


「本人に聞くのが手っ取り早いな」


スーリアはお付きの使用人を呼び出した。


「猊下、お呼びでしょうか?」


煌びやかなブロンドの髪が印象的な使用人の少女は、にこやかな笑みを携えてスーリアのそばにやってきた。


「ああ。ちょっと出かけてくるから私の代わりに留守番頼む」


「え〜〜またですかーー!? あれめちゃくちゃ心臓に悪いのに〜」


「まあそう言うなよ、アリス。また美味しいお菓子買ってくるよ」


「うう……てゆーか猊下、やっぱり一人で外出するのは危険ですよ〜。何かあったらどうするんですか〜」


「大丈夫だよ、これでも腕には覚えがあるんだ。その辺の奴には負けねぇよ」


こうして、スーリアは身代わりを立てて教会を抜け出したのであった。



「姫様、お客様がいらしています」


「んあ? 誰?」


自室でお菓子をつまみながら読書をしていたラミリアは、カタリナから来客を告げられ怪訝な表情を浮かべた。今日は誰とも約束していないからだ。


「それが、スーリアって言えば分かると」


「ぶふぉっ!!」


まったくもって予想していなかった相手の来訪に思わず噴き出すラミリア。いやいや、何で?


「その子って黒髪に蒼い目でちょっと目つきが悪かったり?」


「あ、やっぱり知ってる方なんですね。こちらにお通ししますか?」


マジか。スーちゃんの名を騙る偽物だと思ったがどうやら本物らしい。バレッタが部屋に入ってきてテーブルの上を片付け始める。



「姫様。お客様をお連れしました」


カタリナに伴われやってきた少女はラミリアがよく知っているスーリアで間違いなかった。変装のつもりなのか町娘風の格好をしているが、そこはかとなく只者ではない感が漂っている。


「突然すまんなラミ」


「ほんとだよ。てっきりスーちゃんの名を騙る奴かと思って追い返すとこだったわ」


「ちょっとラミに確認しておきたいことがあってな」


バレッタにお茶の用意をするよう伝え、二人はローテーブルを挟んでソファに座り向かい合った。


「んで、どうしたん?」


「いや、私が街に放っている密偵からの報告内容が気になったから、その確認に来ただけだ」


いや、あんた街に密偵なんて放ってんのかよ。宗教団体のトップがやることか? そんなことを考えていたが、スーリアはラミリアの目を真っ直ぐ見つめてきた。


「ラミ、お前は誰に対しても後ろめたいことをしていないと断言できるか?」


「はぁ? いきなり何を言い出すかと思えば……当たり前じゃねぇか」


ラミリアは「やれやれ」といった仕草を見せた。スーリアは少しほっとした表情を浮かべている。


「そうか……うん、そうだよな」


「つーか何があったん? わざわざ教皇がここまで来るってよっぽどのことじゃねぇの?」


「いや、もう──」


ドアがノックされたと同時に開かれ、バレッタが部屋に入ってくる。その隣には……。


「姫様。ルナマリアちゃんがおいでですよ」


「やっほ、ラミ。来たよー」


ルナマリアはトテトテと部屋に入るとラミリアの隣にぽふっと座った。いちいちやることが可愛い。


「よおルナマリア。シオンの進捗はどうかな?」


「んー。苦労はしてるみたいだよ。いくらドワーフでも口頭で説明しただけじゃね。でも張り切ってるからそんなに時間かからない気がする」


おお。マジあざまる水産よいちょ丸だぜ。あがるわー。ん? そういやスーちゃん急に静かになったけどどしたんかな?


「ラ、ラミ……その子は……?」


「ああ、この子はルナマリア。あたいのマブダチだ」


「こんにちはー。ルナマリアです」


スーリアが巨大な宗教団体のトップであるのはお飾りでもコネでもない。その地位に見合うだけの能力を彼女は有している。今、彼女の目にはルナマリアの全身から立ち昇る膨大かつ禍々しい魔力がはっきりと見えていた。


「ラミ、そいつから離れろ」


「あ? どしたんスーちゃん」


「そいつは只者じゃない! 今すぐ離れるんだ!」


「ああ、そういうことね」


ラミリアはルナマリアと顔を見合わせクスリと笑う。ルナマリアが背筋を伸ばしてスーリアに視線を向けた。


「えーと、スーリアさん? はじめまして。私はルナマリア・ディル・スタンダール。こんなですけど一応魔王です。よろしくね」


萌え袖にした両手を顔の目の前に持ってきてスーリアに挨拶するルナマリア。いちいちやることが小悪魔的である。


一方、スーリアはルナマリアの挨拶を聞いて意識を飛ばしてしまった。


「お、おい、スーちゃん!? おーい、バレッターー!!」


にわかにバタバタとし始めるラミリアたちであった。

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「森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜」連載中!

https://book1.adouzi.eu.org/n3094hw/

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