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「ウルセーヨ、クソが」

ご覧いただき、ありがとうございます!

 ――キーンコーン。


 ……とうとう昼休みになった。

 あの『攻略サイト』の通りなら、俺はこれから立花と一戦を交えることになる。

 といっても、それはあくまで俺が立花に仕掛けた場合だ。当然、俺にそんなつもりはない。


 とはいえ。


「望月くん! お昼ご飯食べようよ!」


 とまあ、こんな風に立花の奴が昼メシを誘いに来た。それというのも、立花が転校してきてから今日で四日目だが、立花はいまだに俺達以外に友人がいない状況なのだ。

 ……まあ、俺だって友人は限られてはいるけどな。


「わ、悪い……今日は先輩達と、ちょっと別の用事があるんだ……」

「そ、そうなの!?」


 俺が申し訳なさそうにそう告げると、立花はこの世の終わりみたいな表情を浮かべた。

 いや、一日くらい俺がいなくても別にいいだろ。


「フフ……(ヤー)もサンドラがコイツに取られたせいで一人なノ。だから立花くん、(ヤー)と一緒にお昼ご飯食べまショ?」


 プラーミャがクスリ、と笑いながら、立花を誘いに来てくれた。ナイスだ、プラーミャ。


「う、うん……」


 さすがにこうなると、食い下がることもできない立花は、プラーミャに引きずられるようにして教室を出て行った。

 プラーミャよ……日曜日の引っ越し、全力でやらせてもらおう。


「望月くんはいるか」


 すると、ちょうど先輩も教室にやって来た。ナイスタイミングです。


「先輩、ありがとうございます」

「ふふ……君があんなに悩むほどなのだ。これくらい、当然だよ」

「先輩……」


 先輩の微笑みに、不安な俺の心が満たされていく。

 ああ……やっぱり、先輩だな……。


「はは、サンドラもありがとな」

「な、何を言ってますノ……そんなの、当然ですわヨ……」


 そうだ、サンドラも俺の気持ちをくみ取って、同行を申し出てくれたんだ。

 本当に……感謝しかない。


「さて……あまりのんびりしているわけにもいくまい。早速、その加隈くんがいる教室へと向かおう」

「「はい!」」


 先輩の後に続き、俺達は一-二の教室へと向かう。


 ――ガラ。


「失礼。ここに加隈くんはいるか」


 教室の扉を開け、先輩が声を掛けると……うん、一-二の連中は、俺達を見るなり一斉に目を逸らしたり気まずそうな表情を浮かべやがった。

 まあ、俺との件もあるしな。この態度は仕方ない。


 それよりも、だ。

 俺は教室内を見渡すと…………………………いた。


 加隈は、教室の窓際で一人ポツン、とたたずんでいた。

 しかも、クラスの連中からも相手にされていないのか、だれも加隈に声を掛けたり近寄ったりする奴はいなかった。


 ……俺がこのクラスにいた時は、加隈はクラスのムードメーカーみたいな奴で、いつもクラスの中心にいたのに、な……。


 色々と思うところはあるが、ここでアイツを眺めていても仕方がない。

 俺達は教室の中に入り、窓際にいる加隈の(そば)へと行く。


「よう……加隈」


 俺は、努めて明るく声を掛ける。

 だけど。


 ――プイ。


 加隈の奴は、俺と目を合わせようともせず、顔を背けて窓から外を眺めた。


「チョット! ヨーヘイが話し掛けているじゃなイ!」

「ま、まあまあサンドラ……」


 そんな態度が気に入らないサンドラが加隈に突っかかるので、俺はそれをたしなめる。

 というか、コイツの態度……。


「なあ、加隈……お前、いつも教室で、こうやって一人でいるのか?」

「…………………………」


 話し掛けるが、加隈は顔を背けたまま一言もしゃべらない。

 ふう……このままじゃ(らち)が明かない、なあ……。


「……加隈くん。聞くところによると、君は一-三の教室に単身乗り込み、ここにいる望月くんと話をしようとした。そうだな?」

「…………………………」


 先輩が問いかけても、加隈の態度は変わらない。

 そのことに、俺はチョットだけイラッときた。というか、先輩が話し掛けてるのにその態度はなんだよ。


「話を続けよう。まだ望月くんが登校していないので、立花くんが応対をしたら、君はその立花くんと口論になり、精霊(ガイスト)を召喚して戦闘になった。そして……立花くんに、君は負けた(・・・・・)

「っ!」


 先輩の言葉に、加隈が初めて反応を見せた。

 だけどそれは、悔しさや(みじ)めさ、それ以外のいろんな感情が入り混じったような、そんな思いが見て取れた。


 ……それはまるで、あの弱かった俺達のようだった。


「加隈くん……君はどうして、この望月くんに会いに一-三の教室に来たのだ? そして、どうして立花くんとケンカをしようと考えたのだ?」


 先輩は諭すように加隈に尋ねる。

 その真紅の瞳も、まるで加隈を気遣っているようにも感じられた。


 その時。


「……ウルセーヨ(・・・・・)クソが(・・・)……」

「っ!?」


 加隈のその言葉に、俺は思わず声を失った。


 今……加隈が、俺達に言った台詞(セリフ)……それこそ、クソザコモブである俺が、主人公に負けた後、会話するたびに吐き捨てる台詞(セリフ)、そのものなのだから……。

お読みいただき、ありがとうございました!


なお、明日からは夜の二話更新になります!

次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価をよろしくお願いします!

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