プラーミャへの依頼
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「よう、プラーミャ。ちょっといいか?」
次の休み時間、先輩のアドバイス通り早速プラーミャに話をするために声を掛けた。
これから、立花の動向を見守ってもらうために。
「私は嫌なんだけド?」
「まあそう言うな。ちょっと、プラーミャにしか頼めないことがあるんだよ」
「イヤ!」
「どうしたノ?」
すると、サンドラが不思議そうな表情でやって来た。
「お、おおサンドラ……って、そうだ、サンドラにもちょっと話しておきたいことがあるんだけど、今いいか?」
「? エエ、いいですけド?」
とりあえず、サンドラが頷いてくれた。
フフフ、こうなるとプラーミャも一緒に話を聞くに決まってる。
「ナラ、私も話を聞くワ」
ホラ、な? というか、分かりやすい奴。
「んじゃ、ちょっと場所移そう……「望月くん、どこにいくの?」」
二人を連れて教室を出ようとしたところで、立花に声を掛けられてしまった。
というか、コイツが一緒にいちゃ話できないんだけど。
「いや、ちょっと二人に頼みたいことがあってな。それで……「だったらボクも手伝うよ!」……ぐ、ぐむう……」
立花は瞳をキラキラさせて、嬉しそうにそう申し出たため、俺は思わず呻き声を上げた。
「……ボクが一緒にいちゃ、イヤ……?」
俺の反応を見て立花は、瞳をウルウルさせながら上目遣いでそう尋ねる。
い、いや、そんな瞳で見られても……ぜ、絶対に連れて行かないからな!
「フフ、立花さんには悪いですけド、少しワタクシ達の家族の件ですのデ……」
おお! サンドラ、ナイス!
よくぞ俺の思いをくみ取ってくれた!
「あ……そ、そうだったんだね。だったら、ボクは一緒じゃないほうがいい、かな」
「申し訳ありませんワ」
ということで、無事(?)立花とも別れ、俺達は廊下に出た。
……立花は、最後までジーッと俺の背中を眺め続けてたけど。
「ソレデ……私達に一体何の頼みがあるノ?」
「おお。いやホラ、二人も朝の件は見てただろ? それでさっきの休み時間に先輩に相談して来たんだけど……悪いけど、プラーミャにはしばらく立花の様子を見ておいて欲しいんだ」
「? どういうこト?」
俺の説明を聞いてもキョトン、とするプラーミャ。まあ、これだけじゃ理由になってないもんな。
「お前達も変に思わなかったか? 立花の奴、いくら加隈……ああ、絡んできた奴な。アイツが精霊出して襲い掛かってきたからって、さすがにアレはやり過ぎだ」
「マア……確かニ……」
「それで、また同じようなことが起きたら暴走するんじゃないかと思ってな。普段の“グラハム塔”領域攻略なら俺達もいるが、一年の必修としてあの領域の踏破に挑むとなったら、先輩や俺、サンドラは同行できない」
「アア、そういうことネ」
ようやく理解したプラーミャの言葉に、俺は頷いた。
「ということだから、サンドラもこれからはアイツのことを少し気に掛けるようにしてくれ。もちろん、俺と先輩も注意するから」
「分かりましたワ」
うん、とりあえずこれで立花に関してはよし、と。
あとは……加隈と、昼休みのイベント、だな……。
加隈はともかくとして、あのイベントのことを考えると、どうしても不安で胸が苦しくなる。
もちろん俺は、[シン]なら立花の[ジークフリート]に負けないと思っているし、立花だって、『攻略サイト』とは違って関係も良好……りょ、良好だから、同じことになる要素もない。
でも……それでも……。
「ヨーヘイ」
すると、いつの間にかサンドラが俺の傍に来て、不安そうに俺の顔を覗き込んでいた。
おっと……顔に出てたか……。
「……はは、何でもない」
「嘘、ですワ」
かぶりを振ってそう答える俺を、サンドラは否定した。
「ヨーヘイ……アナタが何に悩んでいるのか、不安に思っているのかは知らなイ。だけど、ワタクシは少しでもアナタの力になりたいんですノ」
サンドラのアクアマリンの瞳が、強い輝きを放ちながら俺をジッと見つめる。
ハア……チクショウ、こんなの嬉しすぎるだろ。
「そうだな……だったら今日の昼休み、俺と先輩は加隈と話をしに行こうと思ってるから、その時……サンドラも一緒にいてくれるか?」
「! 当然ですワ!」
俺は頭をガシガシ掻きながら、照れくさそうにそう言うと、サンドラはぱあ、と笑顔を浮かべ、力強く頷いてくれた。
「じゃあ、私も一緒に……「いや、プラーミャは俺達が加隈に会っている間、立花を抑えていてくれ」」
プラーミャも俺達と一緒に来ようとしたので、俺はそれを断って別の頼み事をした。
立花のことだ、絶対に俺と一緒に行動しようとするだろうし、それに……ひょっとしたら、昼休みに一緒に過ごさなかったら、イベント自体を確実に回避できるんじゃないかって、そうも思っている。
「これは、プラーミャにしか頼めないことなんだ。だから……」
「ハア……分かったわヨ」
「すまん……助かる」
プラーミャは溜息を吐きながらも、渋々了承した。
コイツだって、本当はサンドラと一緒にいたいはずだもんな……。
「ソノ代わリ」
「ん? その代わり?」
何だろう……昼休みのイベント以上に嫌な予感がするんだけど……。
「明後日の日曜日、私の引っ越しを手伝いなさイ!」
「「ハア!?」」
プラーミャのその言葉に、俺と、何故か一緒に住んでるはずのサンドラまで驚きの声を上げた。
「ど、どういうことだよ!? サンドラと一緒に住んでるんじゃないのか!?」
「そ、そうですワ!? 荷物はアレだけで終わりのはずですわよネ!?」
「ハア……マサカ、私の荷物がアレっぽっちなわけないでショ?」
呆れた表情でプラーミャはそう言うが、そんなの俺が分かるわけないだろ……。
それに、サンドラも思わず絶句してるところを見ると、既にかなりの荷物があの広い部屋に運び込まれているに違いない。頑張れ、サンドラ。
「というわけで、チャンと働くのヨ!」
「「…………………………」」
とうことで、図らずも日曜日の予定が埋まってしまった……。
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