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第二十階層

ご覧いただき、ありがとうございます!

 プラーミャが闇堕ちした日から一週間が経った八月十日。

 俺達は“アルカトラズ”領域(エリア)の第十七階層に来ている。


「ちょ!? おま!? 俺が前に出てる時は、後ろから攻撃仕掛けんなって言ってるだろう!」

「アラ? ならお得意の『敏捷』を活かして戻ればよろしいのでハ? ……(チッ)」


 そして、今日も相変わらず味方であるはずのプラーミャが俺の背中越しに【フレアランス】をぶっ放してやがる。

 あえて補足するとすれば、むしろ俺が前に出てきた時を狙って撃ちやがるし、避けたら避けたで舌打ちはするし……本当に、遠慮が無くなってきた。


「フフ、まあまあヨーヘイ、プラーミャもわざとじゃないですワ」

「サンドラー! スキー!」

「チョ!? プラーミャ!?」


 サンドラがプラーミャのフォローを入れると、感極まったプラーミャがサンドラに抱き着いた。

 というか、あれ以来ますますヤンデレシスコンが加速している。おかげで俺はいい迷惑だ。


「ふふ……みんな、では次の階層に行くぞ」

「「「はい!」」」


 微笑む先輩の指示に、俺達三人は元気よく返事をした。

 先輩も、ヴェルンドを吸収したことで、[関聖帝君]のステータスが伸びている。といっても、【千里行】スキルの取得は叶わなかったみたいだけど。


 ……あんなことがあったんだ。次、いつどこで“守護者”が現れるか分からない。

 できれば今日中にこの領域(エリア)を攻略したい気分だけど……。


「望月くん、早く行くぞ」

「あ、す、すいません!」


 階段に足を掛けた先輩に呼ばれ、俺は慌てて駆け寄る。


「ふふ、二人はもう上の階層に行ってしまったぞ? 私達も早く行かねば」

「は、はい……あの、先輩」

「ん? なんだ?」


 階段を上る途中、先輩を呼び止めると、こちらへ振り返った。


「その……身体に、おかしなところはない……ですか……?」

「身体? いや、特には……」

「そ、そうですか……」

「ふふ、変な望月くんだな」


 クスクスと笑うと、先輩はまた前へと向き直って歩を進める。

 だけど……そうか、まだ紋様(・・)は出ていない、か……。


 俺はほんの少しだけ安堵すると、先輩に遅れないように足早に階段を上った。


 ◇


 そのまま第十八階層を抜け、俺達は第十九階層へたどり着いた。

 というか、ステータスが向上した先輩とサンドラ、危険だけどプラーミャも正式にパーティーに加わったことで、“アルカトラズ”領域(エリア)の攻略はかなり楽になった。俺には危険だけど。


「ふッ!」

「食らいなさイ! 【裁きの鉄槌】!」

「フフフ……【絨毯(じゅうたん)爆撃】」


 ……とまあこんな調子で、三人はこの階層で大量に現れる幽鬼(レブナント)、“ヴォジャノーイ”を一気に殲滅する。


『……[シン]の出番が全くないのです』

「あー、そうだなー……」


 俺と[シン]は、そんな三人が無双するさまをただ眺め続けていた。


「さあ! 次は第二十階層だ!」

「エエ! 行きますわヨ!」

「サッサとこんな領域(エリア)を攻略しテ、サンドラと……ムフフ」


 意気込む二人と、ますます変態に磨きが掛かってきたように思われるプラーミャの後に続き、第二十階層にやって来ると。


「……幽鬼(レブナント)がいないですわネ……」

「ああ……ということは、第十階層と同じく、領域(エリア)ボスがいる、ということか……?」

「デスガ……普通、領域(エリア)ボスというのは、一つの領域(エリア)に一体なのでハ?」


 先輩の言葉を、プラーミャが指摘する。


「いや、確かにプラーミャの言うように領域(エリア)にボスが一体しかいないというのが一般的だが、いくつかの例外はある。ここは、その例外なのだろう」


 まあ、先輩の言う通りここは例外……いや、例外中の例外だ。なにせ、二周目でないと行くことができない特別な領域(エリア)なんだから。


「まあ、まずは先に進んでみましょう。警戒は怠らないで」

「ふふ、そうだな」

「ソウネ」

「……アナタに言われるのは(しゃく)だけド」


 一人不満げなプラーミャは無視し、俺達は階層の奥へと進む。

 すると。


「ヤッパリ、第十階層と同じく部屋への扉がありますわネ……」

「エエ……」

「ふむ……となると、中には領域(エリア)ボスがいるということだな」


 はい、います。

 それも、とんでもなくデカい幽鬼(レブナント)が。


「みんな、準備はいいか?」

「「「(コクリ)」」」


 扉に手を掛けた先輩が確認すると、俺達は頷く。

 さあ……いよいよこの領域(エリア)攻略のクライマックスだ。


 ――ギイ。


 扉を開け、中に入ると……部屋の中は真っ暗だった。


「……これでは何も見えんな」

「任せてくださイ。【ファイアボール】」


 プラーミャが初級の火属性魔法である【ファイアボール】を天井に向かって放出すると、部屋の中が明るく……はならない。

 何故なら。


「な、なんだこれは!?」

「ウエエ……ウネウネと動いてますワ!?」

「ト、トニカク部屋を出ま……扉が開かなイ!?」


 そりゃそうだ。ここは領域(エリア)ボスの部屋、第十階層と同じなんだ。だったら領域(エリア)ボスを倒すまで、扉が開かないのは当然だ。


 そして……(うごめ)ナニカ(・・・)双眸(そうぼう)が妖しく輝いた。


「そ、そんナ……!?」


 サンドラは領域(エリア)ボスのあまりにも巨大な姿に思わず後ずさった。


 そう……これが、“アルカトラズ”領域(エリア)の二体目のボス、“リヴァイアサン”だ。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は今日の夜の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価をよろしくお願いします!

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