表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/398

領域(エリア)見学

ご覧いただき、ありがとうございます!

今日も一挙四話更新です!

「くあー……眠い……」


 次の日の朝、俺は眠いまぶたをこすりながら、重い足取りで学園へと向かっている。

 昨日あんなことがあって行きづらくはあるんだが、それでも俺は行くしかない。


 だって。


「学園に行かないと、“領域(エリア)”に入れないからなあ……」


 そう、[ゴブ美]のレベルを上げるためには、領域(エリア)という場所に現れる”幽鬼(レブナント)“と呼ばれる敵を倒さないといけない。


 この幽鬼(レブナント)、倒すと“幽子(ゆうし)”に変わり、“マテリアル”をドロップする。

 その幽子(ゆうし)を一定以上吸収することで、精霊(ガイスト)はレベルアップできるのだ。


「といっても、入学したばっかりの俺が入れる領域(エリア)なんて、初心者用の領域(エリア)一択だろうけど」


 俺は昨日の夜、あのまとめサイトを穴が開く程に何度も読み返した。

 その結果、今の俺が入れそうな領域(エリア)が、学園にある初心者用の領域(エリア)だけだった。

 もちろん、学園の外にも領域(エリア)はいくつもあるが、今の[ゴブ美]の能力じゃ、速攻で死んでしまうだろう。


 それに……結果的に、[ゴブ美]の育成には、初心者用の領域(エリア)が最適だった。というか、これしか思いつかなかった。


「ホント、この攻略サイト様様だな……」


 これがなかったら、[ゴブ美]を強くしようと張り切ったところで、どうやっても主人公にやられる運命しかなかった。

 結局のところ、学園最弱の俺が唯一有利なのは、このまとめサイトで得た情報だけってことだ。


 もちろん、最大限活用させてもらうとしよう。


 そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか学園に着いた。


 で、教室に入ると。


「「「「「…………………………」」」」」


 クラスの連中が俺を見たかと思うと、ガヤガヤした雰囲気が一瞬だけ微妙な空気になる。

 といっても、すぐに元の雰囲気に戻り、クラスは賑やかさを取り戻した。


 そんな中。


「よう! なんか昨日は悪かったな!」


 後ろから背中をポン、と叩き、加隈ユーイチがニッ、と笑った。

 まあ、コイツが何も考え無しな性格だというのは分かったが、昨日の今日でよく俺に声を掛けられるな。


「……別に」


 面倒なので、俺は半ば無視するように自分の席へ向かう。


「チェ、感じワリーな」


 いや、それは俺の台詞なんだけど。

 つーか、少しは空気読めよ。


「……フン」


 すると今度は、俺の席の横を通りかかった悠木アヤが、俺を一瞥してから鼻を鳴らした。

 オイオイ、俺がオマエに一体何をしたっていうんだよ。というか、昨日勝手に[ゴブ美]のステータスをみんなにバラしたの、俺は絶対に許さないからな。


「うふふ、みなさんおはようございます」


 教室に入るなり、木崎セシルが笑顔で挨拶をした。


「「「おはようございます!」」」


 おおう……クラスの男子連中が一斉に挨拶を返しやがった。

 ……ま、まあ、その気持ち分からなくはないけど。


 俺はチラリ、と木崎のほうへと見やると。


「! ……(ニコリ)」


 うおお!? 俺の視線に気づき、笑顔を向けたぞ!

 ヤバイ……結構ドキドキした……。


 ——キーンコーン。


 しばらくして朝のチャイムが鳴り、クラスの連中は全員席に着くと、先生が教室に入ってきた。


「みなさん、おはようございます」

「「「「「おはようございます」」」」」


 にこやかに挨拶をする先生。

 で、昨日俺が教室を飛び出したっていうのに、俺を一瞥もしないのな。

 まあ、空気として扱ってくれたほうが俺としても助かるけど。


「それでは昨日お伝えした通り、今日の午前中は早速領域(エリア)の見学をします。これからの皆さんの学園生活の中心になりますので、しっかり見学してください」


 おお……! まさか、今日から領域エリアに入れるとは思いもよらなかった!

 というか、昨日そんな大事な話をしてたんなら、先生もちゃんと連絡くらいして欲しいよな……。


 まあ、俺が勝手に飛び出したんだけど。


 それから、先生の案内で領域(エリア)のある場所……コンクリートブロックでできた小さな小屋のような建物の前に来た。

 そしてそこには、既に他のクラスの連中も来ていた。まあ当然か。


「え、ええと、先生これ……?」


 加隈が小屋を指差しながら、おそるおそる先生に尋ねる。


「はい、こちらが今日見学してもらう領域(エリア)です」

「「「「「ええええええええ!?」」」」」


 先生の言葉に、クラス全員が驚きの声を上げた。

 他のクラスの連中はというと、既に聞かされているのか、驚いた様子もなく澄ました顔で俺達を見ていた。中には、同意するかのようにウンウン、と頷く奴もチラホラいた。


「ちゃんと中は広いですから。それと、今日見学するのは初心者用(・・・・)ですので安心してください」


 いや、『攻略サイト』で確認したけど、[ゴブ美]の能力だと素の状態で行ったらかなりギリギリなんだけど。

 先生、[ゴブ美]のステータスを知っている上で言ってるんですよね?


「では、昨日の班分けの通りに分かれてください」


 先生がそう言うと、クラスメイト達はぞろぞろと移動し、五人一組に分かれる。

 昨日いなかった俺は、当然一人だけあぶれていた。


「え、ええと先生、俺は……?」


 俺はおずおずと先生に尋ねるが。


「……あなたは昨日、自分勝手に集団行動を乱しました。そのような行動をされると、今後の領域(エリア)探索においても、他の生徒に迷惑を掛けることになるんです。よって、あなたはペナルティとしてソロで見学してもらいます」

「はあ!?」


 い、いや、何言ってんだよこの先生は!


「それに先程も言いましたが、ここは初心者用の領域(エリア)です。普通(・・)の生徒であれば、危険な目に遭うことなんてありませんよ」


 そう言うと、先生は俺を見ながら嘲笑した。


 ……ああ、そうか。

 コイツ、[ゴブ美]のステータスを知った上で、俺をソロで行かせて痛い目に遭わせようってつもりか。性格悪いな。


「……分かりました」


 俺は落ち込んだフリ(・・・・・・・)をして、すごすごと先生から離れた。

 ハッキリ言ってこの先生は最低だが、俺としては好都合だ。


 だって。


 これで心置きなく、俺は初心者用の領域(エリア)を探索できるから。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ