領域ボス、撃破
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「コノ! 食らいなさイ! 【ライトニング】!」
[シン]の呪符で行動不能にした悠木を置き去りにしたまま、俺はサンドラの元へと向かうと、当然ながら彼女は領域ボスであるタロースとの戦闘の真っ最中だった。
ふむふむ……状況からみて、六対四でサンドラが押しているか。
「サンドラ! 待たせた!」
「ッ! ヨーヘイ、あの女ハ?」
「ああ、[シン]の呪符で野ざらしにしてあるよ」
「アラ? アナタも結構ヒドイことするわネ」
タロースが振り回す鬼の金棒のようなものを[イヴァン]が鉄鞭で受け止めると、サンドラが俺を見やってクスクスと笑った。
というか、一歩間違ったら死んでてもおかしくないんだぞ? 相応の罰は受けるべきだろ。
「それよりも……」
俺は目の前のタロースを見据える。
「エエ……それじゃ、今度こそ勝負ですわヨ?」
「ああ!」
俺とサンドラはお互いの手でタッチすると、二手に分かれてタロースを挟み込むような配置に就いた。
「サンドラ! 俺が[シン]のスピードを活かして呪符で動きを止めてみる! その隙にお前は【裁きの鉄槌】をぶち込め!」
「ハア!? ……って、いいんですノ? それだと、このワタクシが勝ってしまいますわヨ?」
「はは。というかお前、たかだか【裁きの鉄槌】一発でコイツ倒せるって思ってんの? それに、俺は楽して勝ちたいの。だから、お前がタロースを弱らせ切ったところで、サクッと倒すから気にすんな」
俺は口の端を持ち上げ、わざと余裕ぶった表情でそう言い放った。
ま、そうじゃないとサンドラの奴、俺がサポート役に徹することについて変に気を遣いそうだしな。
「プッ! ……フフ、そういうことにしといてあげますわヨ! [イヴァン]!」
『……(コクリ!)』
吹き出したかと思うと、サンドラの指示を受けた[イヴァン]が鉄鞭を振り回して突っ込んで行った!?
「ちょ!? おま!? 俺の話聞いてたのかよ! [シン]!」
『ハイなのです! アレク姉さまとイヴァンおじさまをフォローするのです!』
[シン]は俺の傍から弾丸のように飛び出すと、[イヴァン]がまだタロースとの距離を半分も詰められていないにもかかわらず、既に[シン]はタロースの背後にたどり着いていた。
そして。
『ホイ、なのです! 【縛】!』
手に持つ呪符をタロースの背中にペタリ、と貼り付けると、すぐさま俺の元へと戻ってきた。
「よし! よくやったぞ!」
『えへへー、なのです!』
俺が頭を撫でて褒めてやると、[シン]は嬉しそうに目を細めた。
「食らいなさイ! 【裁きの鉄槌】!」
ようやくタロースの前にたどり着いた[イヴァン]は、鉄鞭で思いきり殴りつけると、その瞬間、周囲に稲妻がほとばしる。
『グオオオオオオオオオッッッ!?』
その電撃の威力にタロースは悲鳴を上げた。
やはり脳筋精霊、その攻撃力は[関聖帝君]に次いで高い。というか、主人公を含め、仲間キャラの中ではナンバーワンという設定だからなあ。
「マダマダァッ!」
――ドオン! ドオン! ドオン!
床に倒れるタロースに対し、なおも追撃の手を緩めないサンドラ。
タロースはというと、稲妻を浴びすぎて黒焦げだわ鉄鞭で殴られ過ぎて全身を砕かれて軟体動物みたいにクニャクニャしてるわで、少し可哀想なほどだ。
そして。
「トドメですワ!」
――ドオオオオオオオンッッッ!
鉄鞭を両手持ちに変え、[イヴァン]が上段から真下のタロースの脳天へと渾身の力で叩き落した。
『グ……オ……』
とうとう力尽きたタロースが、呻き声と共に大量の幽子とマテリアルへと変わった。
「フフフ! やりましたワ! やりましたワ!」
サンドラが両手を上げてはしゃぐと、同じように[イヴァン]も鉄鞭を振り回して……アレ、はしゃいでるのか?
『んふふー! マスター、やりましたのです!』
すると[シン]も嬉しそうにピョンピョンと飛び上がり、俺の前に来て両手を上げてきた。つまりこれは、俺とハイタッチしようってことだな。
「はは、おう!」
『わあい! なのです!』
俺は[シン]とハイタッチを交わすと……ん? サンドラがコッチに寄ってきた。
「フフ、ワタクシの勝ち、ですわネ?」
「ああ。全く……あんな攻撃反則だろ」
俺は苦笑しながら肩を竦めると、サンドラもス、と両手を上げる。
「はは、おめでとう!」
「ヨーヘイもなのだワ!」
俺達はハイタッチを交わし、大声で笑い合……っ!?
「サンドラ!」
「キャッ!?」
突然、緑色の液体が俺の視界に入ったのを見て、俺は咄嗟にサンドラを突き飛ばした。
「グアアアアッ!?」
『熱いのです!? 痛いのです!?』
「ッ!? ヨーヘイ!? [シン]!?」
背中が焼けただれて激痛が走り、俺の精霊として同じ痛みを共有している[シン]も、思わず床で転げ回る。
「ッ……! オ、オマエ……!?」
俺は顔を上げ、後ろへと振り返ると。
「アハ……アハハア……ッ! いいザマねッッ!」
苦痛で顔を歪ませながらも、無理やり口の端を吊り上げて嗤う悠木がいた。
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