九天玄女
ご覧いただき、ありがとうございます!
『さあ……かかってこいなのですッッッ!』
大砲……それを備える塔に向け、[シン]は咆哮した。
「[シン]……!」
そんな[シン]の姿を見て、俺はギュ、と拳を握る。
あの百八門もの大砲が、逃げ場もないほど一斉に放たれるんだ。普通だったらひとたまりもない。
でも……俺は、[シン]ならやってくれると信じている!
[シン]は……[シン]こそが、最高の精霊だッッッ!
「行けえええええええええ! [シイイイイイイイイイイイン]!」
『はううううううううううううううッッッ!
迫りくる百八つの弾丸。
それぞれが、[シン]の体内に入っていった宝玉と同じ色をしている。
おそらく、一人一人に刻まれた文字もあるんだろう。
『はう! はう! はう!』
その弾丸一つ一つが、[シン]の残像に触れてはそのまますり抜ける。
まるで、百八の精霊達を嘲笑うかのように。
「そうヨ! [シン]は、私の精霊、[スヴァローグ]の【絨毯爆撃】すらも躱し切ったのヨ! そんなモノ、当たるはずがないワ!」
「クク……[シン]を捉えるなら、せめて【クロノス】がなければな」
後ろから、プラーミャと中条が声援を送る。
そうだ……俺達は、二人と……みんなと戦って、競って、支え合ってここまで来たんだ。
「ふふ……私はこの一年以上、ずっと彼等を誰よりも一番傍で見続けてきた」
そう言うと、サクヤさんはクスリ、と笑う。
そして。
「その私だからこそ言おう! [托塔天王]だか百八の精霊だか知らんが、刮目するのだな! ヨーヘイくんと[シン]の魂の強さをッッッ!」
はは……そうですね。
あなただけはずっと、俺達を見守ってくれました。
だから……そんなあなたに、俺達の全てを見せます!
『ふふ! 面白い! 面白いですよ! ならその魂の強さというものを、存分に楽しませてもらいますよ!』
「っ!?」
『はう!?』
なんと、次々と躱したはずの宝玉が、いつの間にか[シン]を四方八方から囲みながら浮遊していた。
『さあ……終わりですッッッ!』
[托塔天王]が掲げた右手の拳を握りしめた瞬間、百八つの弾丸がまるで[シン]に吸い寄せられるかのように向かって行く。
『はうううううううううううッッッ!』
悲鳴に似た叫びと共に、無情にも百八つの弾丸が一つの弾丸を形成した。
[シン]……っ!
俺は……俺は、信じている!
お前が、こんなものでやられるような奴じゃないことを!
すると。
――ぺた。
『はう……終わりなのです。【裂】』
いつの間にか[托塔天王]の目の前にいた[シン]は、その鬼の面に呪符を張り付け、静かに呟いた。
『ふふ……見、事……』
鬼の面が粉々に砕けた瞬間、巨大な塔も、百八つの弾丸も消滅した。
◇
『ふふ……予想外、まさに予想外の強さでした』
鬼の面が砕かれ、顔の一部が露わになった[托塔天王]が、口元を緩める。
というか……うん。一部だけ覗く素顔から察するに、メッチャ美人だな……サクヤさんには負けるけど。
「それで、俺達は合格か?」
『もちろんです。むしろ、あなた達と共に戦えることに、これほど名誉だと感じることはありません』
そう言うと、[托塔天王]はそっと胸に手を当てた。
『……これからあなた達は、九つの柱や五つの領域のボス、さらには封印されし原初の王“ヴーリ”などでは比べものにならないほど強大な者と戦うこととなります』
「…………………………」
はは……ラスボスである“ヴーリ”ですら相手にならないって、真のラスボス以外あり得ないんだけど。
そんなことを考えながら乾いた笑みを浮かべていると。
「
『ふふ……おそらく、あなたが今想像した御方すらも、なお及ばないかもしれませんね』
「っ!?」
[托塔天王]の言葉に、俺は思わず息を飲んだ。
真のラスボスでも勝てない、のかよ……。
『……ですが、“管理者”を倒さねば、結局はこの世界でも同じ物語が繰り返されるだけとなってしまいます』
「……つまり、やるしかないってことだよな」
はは……何だかんだ言ったところで、結局やることは変わらない。
このクソみたいなゲームのシナリオをぶっ壊して、サクヤさんが死ぬっていう結末を絶対に回避して、クリスマスから先へ進む。
それが、俺の望みなんだから。
『ふふ……さすがは[シン]のマスター。そんな覚悟は最初から決まっていましたか』
そう言うと、[托塔天応]は嬉しそうにはにかんだ。
『[シン]、そして[シン]のマスター……私達“梁山泊”領域の精霊は、あなた達と共にあらんことを……』
『「「「「っ!?」」」」』
突然、[托塔天王]の鬼の面が全て砕け散ると共に、その身体が幽子に包まれた。
これはまるで……クラスチェンジみたいだな……。
幽子の渦は徐々に薄れ、中から現れたのは……っ!?
「こ、これは……」
神々しいまでの輝きを放つ、黒髪黒目の、まるでおとぎ話にでてくるかのような、そんな絶世の美女の姿がそこにあった。
『この【九天玄女】……永遠に、マスターと共に……』
そう言ってニコリ、と微笑むと、【九天玄女】はすう、と、まるで幽体のようになって[シン]と同化した。
お読みいただき、ありがとうございました!
1/8に発売された「ガイスト×レブナント」もどうぞよろしくお願いします!
お近くの書店や通販、電子書籍などでお買い求めくださいませ!
HIMA先生の超絶美麗イラストが目印です!
明日、明後日はお休みし、次回は明々後日水曜日の夜に更新!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価をよろしくお願いします!




