サンドラからの果たし合い
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いよいよ第二章、開幕です!
『ガイスト×レブナント』
このゲームは、一年生の二学期に“国立アレイスター学園”に転校してきた主人公が、仲間達と共に悩み、葛藤し、乗り越えていきながら成長し、この学園……いや、世界の謎に挑むジュブナイル学園ファンタジーRPGである。
「……ってことは、もう穴が開くほど『攻略サイト』見てるから分かってるんだけど……」
そう呟きながら、俺は思わずうなだれる。
そして俺はそのゲームに登場するクソザコモブっていう位置付けで、主人公が転校早々、これでもかとばかりにザコムーブをかましてアッサリ倒される……まあ、お決まりのヤラレキャラだ。
藤堂先輩や『攻略サイト』の力を借り、おかげで[ゴブ美]から[神行太保]……[シン]にクラスチェンジして、むしろ俺達は最強クラスの能力を手に入れはした。
だからもう、俺はクソザコモブと馬鹿にされることもないし、ゲームみたいに主人公にアッサリやられるなんてこともないはず。
ということで、俺を馬鹿にした連中を見返すって目的は果たしたわけだけど……。
「……ここがゲームの世界なら、先輩は……」
そう、俺の尊敬する先輩が、俺が二年生の時のクリスマスイブ、主人公に倒され、そして……死んでしまう、ということだ……。
「まあ、そんなことさせるつもりはないけどな」
[シン]を手に入れたあの日、俺は心に誓ったんだ。
俺のクソみたいなフラグをへし折った今、先輩の破滅フラグもバッキバキにへし折ってやると。
そのためには。
「ウーン……とにかく、ゲームの物語が始まるのは二学期からだし、それまでに“ぱらいそ”領域みたいに、二周目からしか入れないあの領域を攻略しておいたほうがいいだろうなあ……」
『攻略サイト』によれば、真のラスボスを倒すために用意された五つの領域。この領域を攻略すれば、真のラスボス戦が有利になる。
というか、真のラスボスのステータス見たけど、シャレにならん。
なにせ、物理攻撃を除く【全属性無効】スキル持ってやがるんだから、手に負えない。
とはいえ、物理特化型でないと勝負にならないのかといえばそうでもなく、例えば[シン]の【方術】や[関聖帝君]の【一刀両断】【千里行】なんかは、物理や各属性とはまた別のカテゴリー、いわゆる『特殊スキル』に当たる。
なので、その『特殊スキル』を多く持つキャラが有利ってわけだ。
そして、皮肉なことにその『特殊スキル』を最も多く手に入れることができるのが、主人公だ。
「まあ……とにかく五つの領域のうち最優先で攻略すべきなのは、“アルカトラズ”領域だろうなあ……」
うん、先輩のことを思うなら、この領域は絶対に攻略しないといけない。
残り四つの領域も攻略したいが、それは来年のクリスマス前まででも充分に間に合う。
まずは……物語の始まる二学期までに攻略を終えておかないと。
でも。
「くああ……夏休みは、全部先輩との領域攻略に充てることになりそうだ……!」
いや、もちろん先輩とずっと一緒にいられるわけだから、俺は最高に嬉しいよ?
だけど……せっかく夏休みなんだから、その……先輩と遊びに行ったりしたいし?
なにせ入学してからこれまで、ひたすら[シン(ゴブ美)]を強くするためだけに時間の全てを費やしてたからなあ……って、ええい! こうなったら速攻で“アルカトラズ”領域を攻略して、先輩と遊び倒してやる!
「……よっし!」
俺は気合いを入れるために両頬をパシン、と叩くと、席を立ち上がろうとして。
「……それで、お前はまだいるのかよ……」
目の前にいる同じクラスの女子でメインヒロインの一人、“アレクサンドラ=レイフテンベルクスカヤ”……通称“サンドラ”が仁王立ちしながら俺をジッと睨みつけていた。
彼女はルーシ帝国からやってきた留学生で、輝くような金髪をツインサイドテールにまとめ、アクアマリンの瞳とルーシ人らしく妖精のように整った顔立ち、肌も先輩に負けないくらい透き通るような白さだ。
ただ……残念なことに、彼女は背もチンチクリンで、それに比例して絶壁なのだ。今後成長する可能性を一切見いだせないほどに。まあ、当然需要もあるし、俺も嫌いじゃない……すいません、好き寄りの好きです。
「もちろんですワ! ワタクシと勝負するんですのヨ!」
で、彼女は独特のイントネーションで俺に絡んでくるんだけど……正直、俺が一週間前にこの“一-三”にクラスを変わってからずっとだ。
理由? 知らん。
「ハア……で、お前はなんで毎朝こうやって俺に勝負だの言い出すの?」
「エ……!? そ、それハ……ひ、秘密ですワ!」
とまあ、こんな感じではぐらかしやがる。
……いや、これと似た展開、主人公が二年生になった始業式の日のイベントであったなあ。
などと考えるが、そもそもまだ物語すら始まってないし、俺は主人公じゃないし、それはないな、うん。
「大体、勝負って何するんだよ。精霊での喧嘩は禁止されてるだろ」
「モチロン、そんなことは分かってますわヨ! そうではなくて、“グラハム塔”領域の攻略進行度だったり、テストの結果だったり、総合的にですワ!」
おおう……確かにそれなら、互角の戦いになりそうだ。
何より、領域に関しては『攻略サイト』もある分、俺が圧倒的に有利だが、学力に関して、俺は勝つ自信がない。
いや、それよりもこの提案……。
「……ひょっとして」
「? なんですノ?」
「……いや、いい」
俺の呟きを拾った彼女……サンドラが問い掛けてきたが、俺はかぶりを振ってあいまいに返事した。
これ……やっぱり、サンドラ用のイベントに突入しちまってるじゃんよ……。
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次回は今日の夜更新!
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