久しぶりの教室
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[ゴブ美]から[シン]へとクラスチェンジを果たした次の日の朝、俺はテーブルに座りながら母さんが作ってくれた朝食を食べる。うん、美味い。
「ふふ、なんだか機嫌良さそうね」
キッチンで洗い物をしている母さんが、カウンター越しに俺を見て微笑んだ。
ああ、そういえば母さんにまだ見せてなかったな。
「[シン]、出ておいで」
そう呼んで[シン]を召還すると。
「ええ!? ど、どういうこと!?」
『改めましてお母様! [シン]なのです! どうぞよろしくお願いしますなのです!』
「しゃべった!?」
驚く母さんに向かって[シン]はそう言うと、ペコリ、とお辞儀をした。
「あはは、実は先輩のおかげで、[ゴブ美]は[シン]にクラスチェンジしたんだ。もう……俺達を馬鹿にできる奴なんていないんだ」
俺は母さんに胸を張ってそう報告した。
いつも心配してくれた、母さんに。
「そう……そうなのね……」
母さんは、そんな俺達を見て、泣きながら微笑んでくれた。
◇
「はあ……今日はどうしようかな……」
学園に向かう中、俺は教室に行こうかどうか迷っている。
もう俺の精霊は、一年生の中では最強だ。ハッキリ言ってしまえば、成長して最終決戦に挑む主人公達と同等の実力はある。
だから、アイツ等が俺を馬鹿にすることはもうできないっていうのは分かるんだけど……。
「というか俺、そもそもアイツ等が嫌いすぎるんだけど……」
うん、正直言って顔も見たくない。
特にあの木崎に至っては、ある意味殺されかけたわけだからな。むしろ痛い目に遭わせてやりたい……って、アレ? 矛盾してる?
「まあ……教室に行かないと、見返してやることも仕返しすることもできないからなあ……」
なんてこと言ってるけど、ここまで強くなってしまった今、アイツ等なんてどうでもいい。
あんな奴等、これからやってくる主人公と一緒にわちゃわちゃするなり、イチャコラするなり好きにして、勝手にイベントこなしてりゃいい。
とはいえ。
「その前に……って、あれは……先輩だ!」
俺の前方に学園に向かって歩く藤堂先輩の姿があった。
「せんぱーい!」
俺は先輩に向かって手を振りながら駆け寄った。
「ん? ふふ……望月くん、おはよう」
「先輩、おはようございます!」
朝の挨拶を交わすと、俺は先輩の隣に並ぶ。
「ところで望月くん、今日はさすがに教室に顔を出すのだろう?」
おおう……早速釘を刺されてしまった。
いや、確かにもうクラスチェンジも果たして圧倒的に強くなったし、もう授業をサボってまで領域でレベル上げや疾走丸の回収作業をする必要はない……んだけど。
「そ、そのー……教室に行くのは明日からにしようかなー、なんて……」
俺は苦笑しながら頭を掻く。
だけど。
「む、それはいかんぞ。このまま授業をサボってばかりいたら、本当に留年してしまいかねない。ちゃんと授業は出るんだ」
「ですよねー……」
うん、やっぱり先輩が許してくれるわけないよなー……。
それに先輩がこうやってたしなめてくれるのって、俺の事心配してのことだし……。
「ふふ、本音を言えば、君があのクラスの連中にどう見返してやるのか、楽しみで仕方ないんだ」
そう言って先輩はクスリ、と笑った。
くそう、その笑顔で言われたら、期待に応えるしかないじゃんよ。
「あははー……わ、分かりました」
「うむ。とにかく、一度あのクラスで連中を見返したら、その後は私が父……学園長に頼んで君のクラス替えをしよう」
「は、はあ……」
「それに……あの女だけは絶対に許せん。しかるべき罰を受けるべきだ」
ああ、やっぱり先輩もあのクソ女だけは許せないよな。俺もだけど。
「ですね。それにせっかく教室に行くんです。自分がしでかしたこと、身をもって知ってもらわないと」
「ああ。なので私も君が教室に行くのに付き合おう」
先輩は俺を見てニヤリ、と口の端を持ち上げた。
「あはは! ですね!」
ということで。
――ガラ。
俺は教室の扉を開けると……はは、久しぶりに教室にやって来たもんだから、クラスの奴等、全員驚いてやがる。
で、あのクソ女は……おーおー、完全に目を見開いてやがる。
あの件が表に出たら、下手したら退学モノだもんな。
そんな中。
「アレアレー? ゴブリン、久しぶりじゃね?」
加隈は相変わらず考えなしにそんな台詞をのたまった。何一つ成長の跡が見られない奴だ。
当然俺は加隈を無視して席に着くが、今度はこれも相変わらずだけど悠木が俺の席の横を通ると。
「……何しに来たんだか」
などと呟いていった。コイツも何も変わってない。
「も、望月さん! 心配したんですよ!」
瞳を潤ませながら、クソ女が俺の元に駆け寄ってきた。
そして、触れそうになるほど顔を近づけてくると。
「……あのことを言ったら、分かってますよね?」
そう言って、ニコリ、と微笑みやがった。
というか、あの時はやられたが、クラスチェンジした今、その力はもう通用しねーよ。
ということで。
――ドン。
「キャッ!?」
「寄るなよクソ女」
俺はクソ女を突き押すと、よろめいて尻餅をついた。
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