どこまでも一緒に
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「「しゃべったあああああああああ!?」」
『?』
俺と先輩の絶叫が、この“ぱらいそ”領域に響き渡った。
だけど……なんで[ゴブ美]はキョトンとしてるんだよ!? 驚くところだろ!
「せせせ、先輩! 精霊がしゃべるなんて、そんなことってあるんですか!?」
「いいい、いや!? 私も聞いたことがないぞ!?」
「ででで、ですよね!?」
俺と藤堂先輩はチラリ、と[ゴブ美]を見やる。
……うん、意味が分からん。
「な、なあ[ゴブ美]……どうして、しゃべれるんだ……?」
『ウーン……[シン]にもよく分からないのです……』
「[シン]!? ……って、ひょっとして[神行太保]だから[シン]ってことか?」
『はいなのです!』
[神行太保]……もとい[シン]は、ピシッと右手を高々と上げた。
うん、元気があってよろしい……って、そうじゃなくて!
「も、望月くん……とりあえず、ガイストリーダーで精霊のステータスを確認してみたらどうだ?」
「そ、そうですね……」
先輩の提案に頷き、俺はガイストリーダーを取り出して画面を見る。
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名前 :シン(神行太保)
属性 :神仙(♀)
LV :51
力 :E
魔力 :S+
耐久 :D
敏捷 :SSS
知力 :S
運 :B+
スキル:【方術】【神行法】【全属性耐性】
【状態異常無効】【物理弱点】【繁殖】
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「な、なんだこのステータスは!? いくらクラスチェンジをしたとはいえ、ここまで上昇するものなのか!?」
「あ、あはは……」
先輩は驚愕し、俺は乾いた笑みを浮かべる。
いや、というかステータスの上限は“SS”じゃなかったっけ……なのに、『敏捷』が“SSS”になってるし……。
あの『攻略サイト』でも、確かに“SS”だったのになあ……。
「これは、私の[関聖帝君]と互角……いや、それ以上かもしれない……」
「ま、まさか! そもそも[シン]は物理が弱点ですよ? 完全に相性最悪じゃないですか!」
「っ!? う、うむ……」
先輩の呟きを否定すると、何故か先輩は悲しそうに俯いてしまった……ど、どうして!?
『マスター……今の言葉はないのです……』
「[シン]!?」
そして[シン]にまでダメ出しされる始末。
今の俺の発言にどこが悪い要素が……って、[シン]!?
『いいですか? 藤姉さまはマスターが不用意に言った、『相性最悪』という言葉に心を痛めているのです。ですので、今すぐフォロー入れるのです!』
ふよふよと浮かびながら[シン]が俺にそう耳打ちした。
な、なるほど……た、確かに先輩は勘違いしてしまったのかもな。
とりあえず、[シン]のアドバイス通りにフォローを入れておこう。
「せ、先輩! 俺が言った『相性最悪』っていうのは、あくまで先輩と戦った場合のことですからね! そ、それに、俺の[シン]は術者タイプですから、むしろ一緒に戦うなら物理攻撃主体の先輩の[関聖帝君]とは相性バツグンですから!」
俺は先輩に向かって、少し大げさにそう告げた。
ど、どうだ……?
「っ! う、うむ! そうだな! 確かに君と私が戦うなんてあり得ないし、一緒ならばお互いを補い合いながら戦うことができるからな!」
俺の言葉に気を良くしたのか、先輩は打って変わってぱあ、と最高の笑顔を見せてくれた。
よ、よかったー……というか[シン]、ナイスだ!
俺は[シン]に向かってコッソリとサムズアップすると、[シン]も笑顔で親指を突き立てた。
「ふふ……そうだ、あの幽鬼が話の途中で襲ってきてしまったため言いそびれていたが……」
先輩が少し恥ずかしそうというか、照れくさそうというか、モジモジしながら上目遣いでおずおずと声を掛けてきた。
いつも凛としている先輩にしては珍しい反応だけど……可愛い。とにかく可愛い。いや、最高に可愛い。
「ええと……何でしょうか?」
「そ、その……もし君が良ければ、これからもエ、領域の攻略に一緒に付き合ってもいいだろうか……」
いつもの勢いはどこへ行ったのか、最後は消え入るような声で俺にそう言った。
ああもう! この先輩はもう! 何というか、その、可愛すぎるぞコノヤロウ!
「も、もちろんじゃないですか! むしろ、俺からお願いします! 俺はもっと強くなりたい! 先輩と一緒にどこまでも!」
「あう!? どこまでも!?」
「はい!」
そうだとも。先輩はこんな俺をずっと信じてくれて、助けてくれて、励ましてくれて……なのに俺は、先輩に何も返せていない。
だから、今度は俺が恩返しを……って、違うな。俺がこの先輩と一緒にいたいんだ。
この……素晴らしい“藤堂サクヤ”って女性と一緒に。
『うわー……マスターは無自覚にすごいこと言うのです……』
ん? [シン]が呆れた表情で俺を見てる……。
そして。
「? 先輩?」
「あ、あうあうあうあうあうあうあうあうあう……」
先輩はその真っ赤な顔を両手で覆い隠し、しゃがみこんでしまった……。
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次回は明日の夜更新!
明日で第一章完結です!
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