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目標ステータスに到達

ご覧いただき、ありがとうございます!

 俺達が例の行き止まりにたどり着くと、いつものようにその奥には木箱が置かれていた。


「あの木箱には何が……」


 先輩は木箱へと近づいてゆき、(ふた)を開けると。


「これは……疾走丸、か?」

「そうです……しかも、この領域(エリア)を出入りすれば、いくつでも手に入るというオマケつきです」

「な、なんだとっ!?」


 まあ、先輩が驚くのも当然だ。

 普通は一度取ってしまえばそれっきりだからな。


「俺は見学をした日、偶然見つけたんです。この領域(エリア)を……この、不思議な木箱を」


 俺はもっともらしく先輩にそう告げるが……すいません、情報元は全部『攻略サイト』です。


「そ、そうか……それで君の[ゴブ美]はそのような『敏捷』を……って、ちょっと待て!?」


 どうやら先輩は気づいたみたいだ。


「この疾走丸、ひょっとして特殊なのか!?」

「いえ、他の領域(エリア)で見つかるものと同じ、普通の疾走丸です」

「だ、だが、それだと疾走丸によるステータス上昇効果など微々たるものだ! なのに君の精霊(ガイスト)の『敏捷』は、まもなく“S”に迫ろうというステータスだぞ!?」


 先輩はわなわなと震えながら俺を指差した。

 そんな先輩に、俺は無言で頷く。


「き……君は一体、どれだけこの作業を繰り返したというんだ……」

「あはは……途中から数えるのをやめました……」


 そう言って、俺は苦笑しながら頭を()いた。


「君という男は、本当に……!」

「わっ!?」


 突然、先輩に頭をわしわしと乱暴に撫でられた!?


「ふふ……私の目に狂いはなかった! やはり君はすごい男だ!」

「あ、あはは……ありがとうございます」


 手放しで褒めてくれる先輩に、つい照れ笑いした。

 本当にこの先輩は俺のことを見てくれて、認めてくれて……。


「さあ望月くん! では、疾走丸を!」

「はい! [ゴブ美]!」

『(コクコク!)』


 先輩から手渡され、[ゴブ美]はいつものように疾走丸を口に放り込んだ。


『…………………………』

「ふふ、その苦さには慣れないか」


 不味くて舌を出す[ゴブ美]に、先輩がクスリ、と笑った。

 はあ……やっぱり先輩は最高だ。


「ん? 望月くん、私の顔をまじまじと見てどうしたんだ?」

「へ? あ、あああああ、いい、いえ、その……!」


 うああああ!? とても先輩に見惚れてただなんて言えない!


「? まあいい、では早くこの領域(エリア)から出よう」

「はい!」

『(ビシッ!)』


 先輩の言葉に俺と[ゴブ美]は敬礼のポーズをした。


 ◇


 それからというもの、先輩は初心者用の領域(エリア)にも毎日一緒に来てくれるようになった。

 というか先輩、生徒会長なのに生徒会の活動とかいいんだろうか……。


「ん? どうした?」

「あ、いえ……何でもないです……」

「?」


 うん……聞くのはやめとこう。


「それはそうと望月くん、強くなることも重要だが、勉学も大切だぞ?」

「は、はあ……」


 先輩の言葉に、俺は曖昧(あいまい)に返事した。

 あのクソ女に閉じ込められた一件以来、俺はあの教室に一度も顔を出していない。

 あんな連中と顔も合わせたくないっていうのもあるし、それに、担任の伊藤先生も謹慎が解けて復帰したしな。


「ふむ……やはり、父……学園長に掛け合って君のクラス替えを進言してみよう。あのような掃きだめは、君に相応しくない」

「あはは……せっかくですが、それは結構です」

「ふう……君はなかなか頑固だな……」


 先輩のありがたい提案を断ると、先輩は俺をジト目で睨んだ。

 だけど、俺が強くなってアイツ等を見返して、悔しそうにするツラを拝んでやるのだ。


 それに……二学期にはアイツ(・・・)が来るしな。


「ふ……まあいい。それよりも」


 先輩は通路の行き止まりにある木箱を指差した。


「そうですね。[ゴブ美]」

『(コクリ)』


 いつものように木箱から疾走丸を取り出し、[ゴブ美]がそれを飲み込んだ。


「ふふ、一度ステータスを確認してみたらどうだ?」

「あー、そうですね」


 俺はポケットからガイストリーダーを取り出し、[ゴブ美]のステータスを確認すると。


 —————————————————————

 名前 :ゴブ美

 属性 :ゴブリン(♀)

 LV :45

 力  :G+

 魔力 :F

 耐久 :G+

 敏捷 :S

 知力 :E-

 運  :G+

 スキル:【集団行動】【繁殖】

 —————————————————————


「あ……!」


 なんと、『敏捷』のステータスがとうとう“S”に到達した。


「どれどれ……おお! やったじゃないか!」


 先輩が我がことのように喜んでくれる。

 そして。


『(ブンブン!)』


 [ゴブ美]も嬉しさのあまり、棍棒をブンブンと振り回してはしゃぎまくっていた。


「あはは……とうとうここまで来れました」

「うむ! ならば次はクラスチェンジだな!」

「はい!」


 そうだ、俺達はまだ到達すべき目標を一つクリアしただけだ。

 次は、レベルを五十以上に上げて、クラスチェンジを果たさないと。


「よし! ではこの領域(エリア)を出て、次は“グラハム塔”領域(エリア)でレベル上げに集中しよう!」

「ですね!」


 意気揚々と来た道を戻り、幽鬼(レブナント)が後ろを見せた隙に向こう側へ……っ!?


 ――クルリ。


「っ!? な、何だよそれ!?」


 俺達が通り過ぎようとした瞬間、幽鬼(レブナント)……“クイーン・オブ・フロスト”が反転してこちらを向いた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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