クラス代表選考会 決勝トーナメント④
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中島との試合を終え、俺と[シン]は舞台を降りようとすると。
「サンドラ……立花……」
二人が、俺と入れ替わるように舞台へと上がる。
そして。
「ヨーヘイ……決勝で、待っているんですのヨ」
「望月くん、また後でね」
すれ違いざま、二人は決意に満ちた表情でそう告げると、並んで舞台の中心へと歩を進めた。
はは……二人共、ちょっと相手をはき違えてるだろ。
「望月くん、お疲れ」
「お疲れ様でした」
「先輩、氷室先輩、ありがとうございます」
笑顔で労いの言葉をかけてくれた二人にお礼を言うと、俺はその隣に並んで舞台上を見据える。
「フフ……立花サン、残念ですけどワタクシの糧になってくださいまシ」
「あはは、そうだね。サンドラさんには、ボクが望月くんの前に立つための踏み台になってもらうよ」
お互いがそう言うと、サンドラと立花は不敵な笑みを浮かべた。
「ふむ……望月くんの試合を見て気持ちが高揚しているのはいいが……少し、目の前の試合に集中できていないきらいがあるな」
「そうですね。あれでは、どちらも足元をすくわれかねません」
二人の様子を見た先輩達は、冷静に分析する。
だけど、まさに先輩達が言った通りで、少しかかり過ぎ、だよなあ。
「……お二人はこの試合、どっちが勝つと思います?」
「む……そうだな。サンドラ……と、言いたいところだが、六対四で立花くんに分があるだろう」
「私も立花さんが勝つと思います。ただ、私は立花さんの圧勝になる可能性が高いと踏んでますが」
「ひ、氷室先輩、それはどうしてですか……?」
その答えに、俺は思わず聞き返す。
いや、確かに俺も、立花に分があると分析しているけど、それでも、氷室先輩はどうしてそこまで言い切れるんだ……?
「まあ……早い話が、[ポリアフ]の【オブザーバトリー】で二人の精霊を解析したんですが」
「ああ……」
そうだった。氷室先輩の精霊には、精霊や幽鬼を解析するスキルがあるんだったな。
「……その上で、彼……立花さんの精霊を視ましたが、レベルは七十一、全ステータスがオール“S”、さらに【竜の恩恵】による二段階のステータス上昇……基本的な能力だけでしたら、藤堂さんの[関聖帝君]すらも凌ぐスペックです」
「「っ!?」」
ア、アイツ、もうそこまで強くなってんのかよ!?
「それに加えて、クラスチェンジによって新たに獲得したスキル、【四神】は脅威です。また、【チェンジ】によって隠されている精霊の能力も踏まえると……やはり、立花さんの勝ちは揺らぎません」
「そ、そうですか……でも」
冷静に告げる氷室先輩。
でも……俺は、サンドラにはそんな精霊の能力だけじゃないナニカがある。そう、信じたい。
だから。
「それでも、俺はサンドラを信じています。ステータスやデータを超えて、アイツならやってくれる、と」
「望月さん……」
今、氷室先輩にそう告げたことでハッキリと分かった。
俺は……サンドラに勝って欲しいんだ。
アイツが、誰よりも頑張っていることを知っているから。
アイツが、絶対にくじけない心を持っていることを知っているから。
「ふふ……私も信じているよ。私だって君と同じくらい、サンドラの成長を見守ってきたんだから、な」
「先輩……はい!」
俺は先輩に向かって強く頷くと、改めてサンドラを見る。
そして。
「サンドラ!」
俺は大声で彼女の名前を叫び、右拳を高々と突き上げた。
“アルカトラズ”領域でサンドラが闇堕ちしたプラーミャと戦った、あの時と同じように。
「フフ……本当に、ヨーヘイはバカなんですかラ……」
「えー……ボクへの応援はないの……?」
そんな俺を見て、頬を赤らめながら口元を緩めるサンドラとは対照的に、肩を落としてうなだれる立花。
だけど……悪いな、立花。どちらを応援するかって言われたら、俺は迷わずサンドラを選ばせてもらうぞ。
「フフ……ヨーヘイもサンドラに甘いわネ?」
クスリ、と笑いながら、プラーミャが俺の傍に来てそう告げる。
「はは、当然だろ? サンドラは、俺の大切な仲間なんだから」
「ハア……サンドラも苦労するわネ……」
俺がサムズアップしながら笑顔で答えると、何故かプラーミャは溜息を吐いた。なんで!?
その時。
――パシン。
「サア! ワタクシはいつでも大丈夫ですわヨ!」
さらに気合いの入ったサンドラが両頬を叩き、立花を指差しながら宣言する。
「フウ……まあ、サンドラさんを倒したら、望月くんもボクだけを見てくれるよね?」
立花は深く息を吐いたかと思うと、クスリ、と口の端を持ち上げた。
うわあ……闇堕ちから解放されてまともになったと思ってたけど、根っこのヤンデレ気質は直ってねえ……。
そして。
「では……始め!」
俺達が見守る中、サンドラと立花の戦いが幕を開けた。
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