二人が家にやって来る
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“アトランティス”領域と“レムリア”領域の二回目の踏破を終えた次の日の日曜日。
とりあえず“アルカトラズ領域や氷室先輩が見つけたという”葦原中国“領域の攻略は来週からにするとして、今日は先輩とサンドラの三人でいつものように”ぱらいそ“領域でレベル上げをしている。
――斬ッッッ!
――ドオオオオオオオンッッッ!
お、ちょうど二人が十体目のクイーン=オブ=フロストを倒したな。
というか、今日の二人の姿と殺伐としたアクションのギャップが半端ない。
というのも。
「あうあう……ふ、服は汚れたりしていないだろうか……」
「あ、汗はかいたりしてませんわよネ……?」
うん……二人共、この後は俺の家に来るってこともあって、その……すごく可愛い服を着ているのだ。
先輩は白の長袖ブラウスに黒のロングフレアスカート、それにブーツといったコーデで、圧倒的なスタイルとも相まって、その……最高に可愛い。
サンドラも、フリルのついた白のブラウスにモスグリーンのノースリーブの膝丈ワンピース、黒のストッキングにローファーという、まさに絵本の世界から出てきた妖精なんじゃないかっていうほど、その……良き。
正直言うと、俺の家はごく一般的な庶民の家なので、逆に二人が場違いすぎるんじゃないかって余計な心配をしてしまう。
「さあ! 後はもう一体の幽鬼を倒せば、その……も、望月くんの家に……あうあうあうあうあう!」
「フ、フエエエエエ……先輩、余計なことを言わないでくださいまシ……」
二人はそんなことを言いながら両頬を手で押さえ、クネクネしている……。
「あー……[シン]……」
『ハイなのです……だけど、本当に二人共ちょっと残念なのです……』
[シン]は溜息を吐きながらキング=オブ=フレイムに突っ込むと、呪符で瞬殺した。
◇
「な、なあ望月くん、そ、その……手土産はルフランのスイーツで問題ないだろうか……?」
「エエ!? 先輩もルフランにしたんですノ!?」
「ななななな!? ひょっとしてサンドラもか!?」
学園を出て俺の家に向かう途中、先輩とサンドラは手土産の話でわちゃわちゃしている。
というか二人共、手土産とかいらないって言ったのに……。
『はう! 手土産はアイスが一番喜ばれるのです! むしろ、アイス一択なのです!』
いや、それ喜ぶのお前だけじゃん。
そんなやり取りをしているうちに、とうとう俺の家に到着した。
「えーと、じゃあ……「ままま、待つんだ望月くん! ちょ、ちょっとだけ深呼吸をさせてくれ!」」
家の中に入ろうと玄関の扉に手をかけたところで、先輩が待ったをかける。
「「スー、ハー、スー、ハー」」
先輩とサンドラが二人仲良く深呼吸をすると。
「もういいですか?」
「ううう、うむ!」
「モモモ、モチロンですワ!」
俺は一抹の不安を覚えながらも、玄関の扉を開けて二人を手招きすると。
「あらあら、いらっしゃい!」
なんと母さんは、既に玄関でスタンバっており、二人を笑顔で出迎えてくれた。
「あうあうあう!? おお、お邪魔します!?」
「ソソソ、ソノ! はは、初めましてなのですワ!」
とりあえず、二人は緊張で変な動きはしているものの、無事に顔合わせを済ませることができた。というか、先輩に関しては母さんと会うのは初めてじゃないのに……。
「ほらほら、ヨーヘイは二人を部屋にでも案内しなさい! 私は飲み物を用意してあげるから!」
「う、うん……」
母さんに促され、俺は二人を部屋へ……って。
「そそ、そうだ、お母様! こ、これ、つまらないものですが……!」
「おお、お召し上がりくださいまセ……!」
二人が同時に全く同じルフランの紙袋をずい、と差し出す。
「まあまあ、二人共ありがとう。じゃあ、飲み物と一緒に出そうかしら」
紙袋を受け取ると、母さんが俺にウインクした。
まあ、緊張している二人を気遣って、早く部屋に連れてけってことだろう。
「ホラホラ二人共、俺の部屋に行くよ」
「あう! まま、待ってくれ!」
「ヨーヘイのお部屋……ヨーヘイの……」
まあ、挙動不審なサンドラは置いといて、とにかく俺は二人を部屋へと案内すると。
「「うわあああ……!」」
「はは、まあ特に何もない部屋だけど……」
俺の部屋をまじまじと眺める二人に苦笑しながらそう告げるが……はい、ウソです。二人が来るからって、メッチャ片づけました。
「ええと、空いてるところに適当に座ってくれればいいから……」
「う、うむ! な、なら私はここに……!」
そう言うと、先輩は机の椅子に座る。
「ふふ……望月くんはここで勉強をしたりしているのだな……」
「あ、あははー……」
すいません先輩……勉強に関しては、先輩の家でしている時間のほうが長いです……。
「ワワ、ワタクシはここにしますワ!」
サンドラはというと、俺のベッドにぽすん、と腰を掛けた。
「フフ……ヨーヘイはいつもここで寝ていますのネ……」
あー……スマン、サンドラ。お前が今撫でている場所では、いつも[シン]が寝ているぞ。
そんな二人を眺めていると。
「ヨーヘイ! ちょっと下まで飲み物を取りに来てちょうだい!」
「了解! ……じゃ、じゃあ俺は、母さんから飲み物を受け取って来るよ」
「う、うむ」
「エエ……」
ということで、俺は部屋を出て母さんからお茶とケーキが乗ったお盆を受け取る。
「うふふ、二人共感じのいい子達ね」
「はは、それに関しては間違いないよ!」
母さんにそう返事すると、俺は部屋に戻……っ!?
『「「あ……」」』
先輩とサンドラ、そして[シン]が、クローゼットを開けてナニカを物色していた。
『はう!? こここ、ここにマスターの大事なものがあるだなんて、[シン]は一言も言ってないのです!? ホホ、ホントなのです!?』
「「[シン]!?」」
オニキスの瞳を泳がせて挙動不審極まりない[シン]が、聞かれもしていないのに勝手に自爆しやがった……。
というか、なんでお前が俺の大切なアレの場所を知ってるんだよ!? 上手く隠したと思ってたのに!
「ワワ、ワタクシはやめようって言ったんですのヨ!?」
「あう!? うう、裏切るなんてヒドイぞ!?」
……まあ、二人も共犯だってことは分かってますよ。
今度からは[シン]には絶対にバレないようにしよう。
俺は、強く心に誓った。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は明日の朝更新!
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