ステータスの真実
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『はう! 突然ビックリしたのです!』
「はは、悪い悪い」
ようやく落ち着いた俺は[シン]を降ろすと、[シン]にたしなめられてしまった。
まあ、最高に嬉しかったんだから仕方ないよな。
「デモ……精霊のステータスって、一体どこまであるんですノ……?」
俺のガイストリーダーをしげしげと眺めながら、サンドラが呟く。
だけど、確かにサンドラの言う通りだ。
実際、『攻略サイト』でもステータスの最高値は“SS”で間違いないはずだし、それはこの世界の常識でもある。
「ふむ……だが、このステータスの上限が、実はたった一つの事実のみで決まっているということは知っているか?」
「「「え……?」」」
先輩がふいに発した言葉に、俺達は一斉に先輩へと視線を向けた。
「そ、それってどういう意味ですか……?」
「うむ……これは私のお母様から教えてもらった話なんだが、精霊のステータスは、ある英雄達の能力値を基準としているのだ」
「「「英雄達!?」」」
オイオイ!? 先輩の言う英雄達って、ひょっとして……!?
「……それは、“始まりの六人”のことだ」
「“始まりの六人”……」
先輩の言葉を、氷室先輩が反芻する。
“始まりの六人”というのは、この世界の人間なら誰もが知っている、百年以上前に世界で最初に精霊が発現した六人。
それぞれが伝説に相応しい能力を持ち、数々のエピソードは子ども達の夢物語となっている。
「そうだ。そして“始まりの六人”の能力値を最上の“SS”とし、全ての精霊使いの能力値の中間値を“D”としている……」
そうか……俺の[シン]は、『敏捷』ステータスがその“始まりの六人”のステータス値を超えているから、“SSS+”になった、ということか……。
確かに、『攻略サイト』にある真のラスボスのステータスはオール“SS”、これは、『ガイスト×レブナント』の世界において、文字通り最強であることを意味するもの。
だからこそ、主人公の最終ステータスも、オール“SS”となっているんだから。
「……ははっ」
「望月さん……?」
思わず笑ってしまった俺を、氷室先輩が不思議そうに見つめる。
だけど……俺は今、最っ高に嬉しくて仕方ないんだ。
だって、それが示しているのは、強くなるのに限界がないってことだから。
そしてそれは、俺達がどこまでも速く……そして、どこまでも強くなれることができるんだから。
「ア……フフ、ヨーヘイったら、本当に分かりやすいですわネ……」
「な、何だよ……」
クスクスと笑うサンドラに気づき、俺はつい悪態を吐いてしまった。
「ふふ、そうだな……だが、私もまだまだ強くなる。君が、その可能性を示してくれたのだから」
すると今度は、先輩が口の端を持ち上げてそう宣言した。
ですが、もちろん俺も、それは理解していますよ。
そんな優しくて、強くて、素敵なあなたを、俺は超えてみせますから。
「よっし!」
俺は気合いを入れるため、パシン、と両頬を叩いた。
「さあ! この階段を下り切ったら“レムリア”領域のボス戦です! サクッと倒しちゃいましょう!」
「ああ!」
「フフ……エエ!」
「そうですね」
俄然やる気になった俺の言葉に、先輩とサンドラが力強く頷き、氷室先輩は表情を変えずに返事した。
といっても、氷室先輩はグッ、と拳を握っているし、気合十分なのが窺える。
そして、少し足早に俺達は階段を下りて“レムリア”領域に到着すると、その足でここの領域ボス、“ベレヌス”がいる建物へと向かった。
「いましたね……あの忌々しい領域ボスが……!」
俺はベレヌスの姿を見て、ギリ、と歯噛みする。
相変わらず、ムカツク面してやがるなあ……!」
『プークスクス! マスターがまたアイツに嫉妬してるのです!』
チクショウ! そういうこと言うの、いい加減やめろよ!
「そうですか? あの領域ボスなどより、望月さんのほうが明らかに良いと思いますが?」
ひ、氷室センパアアアアアイ!
「むむ! もも、もちろん私だってそう思っているとも!」
「エエ! 当然ですワ!」
いや二人共、別に氷室先輩に張り合わなくても……でも嬉しい。
「では、あの目障りな領域ボスは、この私が排除いたします。[ポリアフ]」
すると、氷室先輩はまだベレヌスからかなりの距離があるにもかかわらず[ポリアフ]を召喚すると。
「くたばりなさい。【スナイプ】」
[ポリアフ]は、氷室先輩の肩の上でロングバレルのスナイパーライフルを構え……って、スナイパーライフル!?
「ファイア」
そんな氷室先輩の合図と共に、銃口から一発の弾丸が射出された。
そして。
『ッッッ!?』
弾丸は見事にベレヌスの額に命中し、もんどり打って倒れる。
「次弾装填……ファイア」
さらにもう一発発射すると、今度は倒れているベレヌスの左胸に着弾した。
「「「あ……」」」
俺達三人の呆けた声と同時に、ベレヌスが幽子とマテリアルに変化した。
「ふふ、他愛もない……これなら、あの領域のボスのほうが手強かったですね」
「え……?」
氷室先輩が放った何気ない一言に、俺は思わず目を向ける。
「ひ、氷室先輩、その……今言った、あの領域というのは……?」
「っ!?」
そう尋ねた瞬間、氷室先輩が息を飲んだ。
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