欲しがる私に、くれたあなた②
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■氷室カズラ視点
それからも変わらない中学三年間を経て、私はいよいよ、あの“国立アレイスター学園”に入学する。
というのも、私の精霊について学校経由で“GSMO”というところから連絡が入り、アレイスター学園に通わないか、との打診を受けたのだ。
その時の私は嬉し過ぎて、二つ返事で受けた。
学費だって免除されるし、何より実家からも近い。これなら弟妹の面倒も見ることができる。弟も妹も大きくなって、以前のように手がかからなくなったといっても、それでも私がちゃんと見てあげないと。
……ううん、本当はそんなの、ただの後付けの理由。
本音は、あの名門のアレイスター学園にこの私が通えるほど、その存在を認められたことが……特別扱いをされたことが嬉しいのだ。
そして、いよいよ入学式。
私は新品の制服に袖を通し、鏡でチェックする。
うん、おかしなところはない。
「じゃあ、行ってきます!」
「「「「「行ってらっしゃい!」」」」」
家族全員に見送られ、私は足早に学園を目指す。
これから、私の学園生活が始まるんだ!
そんな期待に胸を膨らませながら学園の門をくぐり抜け、お世話になる教室に入った瞬間……私の身体が硬直した。
だって……教室には、三年前のあの日に見た、あの女の子がいたから。
別人だと思いたかった。こんなところにいるはずがないって思いたかった。
だけど……見間違えるはずもなかった。
赤くウェーブのかかった髪に真紅の瞳、赤い唇、それを際立たせるかのような、透き通るような白い肌……。
ああ……あの女の子は、精霊だって持ち合わせていたんだ。
私は結局、彼女に何一つ敵わないんだ……。
それから、席も隣同士になった私は、いつも彼女……“藤堂サクヤ”さんを見ていた。
もちろん、羨望と嫉妬の眼差しで。
聞いたところによると、彼女は学園長の一人娘らしい。
そして、授業にはあまり出ず、いつもどこかに行っていた。
それをクラスメイト達は、「学園長の娘だから特別扱いなんだろう」とか、「いつもニコリ、ともしないで感じ悪い」とか、口々に噂していた。
かく言う私はといえば、やはりクラスメイト達に馴染めず、彼女ほどではないにしろ、どこか敬遠されていた。
そんなこともあって、私はいつも一人、近所の公園で弟や妹と一緒に遊んだ時に偶然見つけた領域の第一階層で、レベル上げに勤しんでいた。
ここの領域は強い幽鬼ばかりだけど、一種類だけ、[スノーホワイト]でも確実に倒せる幽鬼がおり、しかも、幽鬼自身のレベルも高いので得られる幽子の量も多い。
これなら、授業にもあまり出ていない彼女の精霊よりも強くなれるかもしれないと思ったから。
彼女を……超えられると思ったから。
もちろん、[スノーホワイト]のレベル上げだけじゃない。勉強だって私のほうが高い順位に行けるんじゃないか、そう思って頑張った。
だって、彼女は授業にあまり出ていないから。
だけど……現実は残酷だった。
一年生の中間テストで、彼女は学年トップの成績だった。
私は頑張った甲斐もあり、学年三位の成績を収めたけど、なんの慰めにもならない。
だって、私は授業をまともに出ていない彼女に負けたんだから。
だから、私はますます精霊のレベル上げに取り組んだ。
彼女と一緒に領域に入ったりしないから、彼女の精霊がどれほど強いのかは分からないけど、それでも、誰にも負けないくらいレベルを上げれば、彼女よりも強くなれると信じていたから。
なのに。
「あれえ? アンタ、精霊のレベルがそんなに高いのに、ステータス低くない?」
たまたま“グラハム塔”領域攻略で一緒になった、同じクラスの佐久間さんに[スノーホワイト]のステータスを見られ、そう指摘された。
「ホラ、私の精霊のステータスを見なよ」
そう言って見せられたガイストリーダーの画面を見ると、私の[スノーホワイト]とは明らかに違った。
レベルは[スノーホワイト]の半分以下なのに、全てのステータスが彼女の精霊、[フロスティ]のほうが上だった。
「アハハ! まあ、ガッカリしないでよ!」
笑いながら私の肩を叩く佐久間さんの瞳は、明らかに私を馬鹿にしていた。
その後も、陰で私の悪口を言っていたし。
でも……私に[スノーホワイト]のレベル上げをやめるという選択肢はなかった。
だったら、誰にも負けないくらい……それこそ、倍じゃきかないほどのレベルを上げて、強くなればいいんだから。そう、言い聞かせて。
毎日、家事や弟妹の世話をしながら、近所の公園の私だけの領域で、[スノーホワイト]のレベルを上げる日々。
学園に入学してから半年以上が過ぎ……[スノーホワイト]のレベルは五十五になっていた。
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次回は今日の夜更新!
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