表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

166/398

欲しがる私に、くれたあなた②

ご覧いただき、ありがとうございます!

■氷室カズラ視点


 それからも変わらない中学三年間を経て、私はいよいよ、あの“国立アレイスター学園”に入学する。


 というのも、私の精霊(ガイスト)について学校経由で“GSMO(グスモ)”というところから連絡が入り、アレイスター学園に通わないか、との打診を受けたのだ。


 その時の私は嬉し過ぎて、二つ返事で受けた。

 学費だって免除されるし、何より実家からも近い。これなら弟妹(きょうだい)の面倒も見ることができる。弟も妹も大きくなって、以前のように手がかからなくなったといっても、それでも私がちゃんと見てあげないと。


 ……ううん、本当はそんなの、ただの後付けの理由。

 本音は、あの名門のアレイスター学園にこの私が通えるほど、その存在を認められたことが……特別扱いをされたことが嬉しいのだ。


 そして、いよいよ入学式。


 私は新品の制服に袖を通し、鏡でチェックする。

 うん、おかしなところはない。


「じゃあ、行ってきます!」

「「「「「行ってらっしゃい!」」」」」


 家族全員に見送られ、私は足早に学園を目指す。

 これから、私の学園生活が始まるんだ!


 そんな期待に胸を膨らませながら学園の門をくぐり抜け、お世話になる教室に入った瞬間……私の身体が硬直した。


 だって……教室には、三年前のあの日に見た、あの女の子がいたから。


 別人だと思いたかった。こんなところにいるはずがないって思いたかった。

 だけど……見間違えるはずもなかった。


 赤くウェーブのかかった髪に真紅の瞳、赤い唇、それを際立たせるかのような、透き通るような白い肌……。


 ああ……あの女の子は、精霊(ガイスト)だって持ち合わせていたんだ。

 私は結局、彼女に何一つ敵わないんだ……。


 それから、席も隣同士になった私は、いつも彼女……“藤堂サクヤ”さんを見ていた。

 もちろん、羨望と嫉妬の眼差しで。


 聞いたところによると、彼女は学園長の一人娘らしい。

 そして、授業にはあまり出ず、いつもどこかに行っていた。

 それをクラスメイト達は、「学園長の娘だから特別扱いなんだろう」とか、「いつもニコリ、ともしないで感じ悪い」とか、口々に噂していた。


 かく言う私はといえば、やはりクラスメイト達に馴染めず、彼女ほどではないにしろ、どこか敬遠されていた。


 そんなこともあって、私はいつも一人、近所の公園で弟や妹と一緒に遊んだ時に偶然見つけた領域(エリア)の第一階層で、レベル上げに勤しんでいた。

 ここの領域(エリア)は強い幽鬼(レブナント)ばかりだけど、一種類だけ、[スノーホワイト]でも確実に倒せる幽鬼(レブナント)がおり、しかも、幽鬼(レブナント)自身のレベルも高いので得られる幽子の量も多い。

 これなら、授業にもあまり出ていない彼女の精霊(ガイスト)よりも強くなれるかもしれないと思ったから。


 彼女を……超えられると思ったから。


 もちろん、[スノーホワイト]のレベル上げだけじゃない。勉強だって私のほうが高い順位に行けるんじゃないか、そう思って頑張った。

 だって、彼女は授業にあまり出ていないから。


 だけど……現実は残酷だった。


 一年生の中間テストで、彼女は学年トップの成績だった。

 私は頑張った甲斐もあり、学年三位の成績を収めたけど、なんの慰めにもならない。

 だって、私は授業をまともに出ていない彼女に負けたんだから。


 だから、私はますます精霊(ガイスト)のレベル上げに取り組んだ。

 彼女と一緒に領域(エリア)に入ったりしないから、彼女の精霊(ガイスト)がどれほど強いのかは分からないけど、それでも、誰にも負けないくらいレベルを上げれば、彼女よりも強くなれると信じていたから。


 なのに。


「あれえ? アンタ、精霊(ガイスト)のレベルがそんなに高いのに、ステータス低くない?」


 たまたま“グラハム塔”領域(エリア)攻略で一緒になった、同じクラスの佐久間さんに[スノーホワイト]のステータスを見られ、そう指摘された。


「ホラ、私の精霊(ガイスト)のステータスを見なよ」


 そう言って見せられたガイストリーダーの画面を見ると、私の[スノーホワイト]とは明らかに違った。

 レベルは[スノーホワイト]の半分以下なのに、全てのステータスが彼女の精霊(ガイスト)、[フロスティ]のほうが上だった。


「アハハ! まあ、ガッカリしないでよ!」


 笑いながら私の肩を叩く佐久間さんの瞳は、明らかに私を馬鹿にしていた。

 その後も、陰で私の悪口を言っていたし。


 でも……私に[スノーホワイト]のレベル上げをやめるという選択肢はなかった。

 だったら、誰にも負けないくらい……それこそ、倍じゃきかないほどのレベルを上げて、強くなればいいんだから。そう、言い聞かせて。


 毎日、家事や弟妹(きょうだい)の世話をしながら、近所の公園の私だけの領域(エリア)で、[スノーホワイト]のレベルを上げる日々。


 学園に入学してから半年以上が過ぎ……[スノーホワイト]のレベルは五十五になっていた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は今日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ