部活動コミュ
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「……これからしばらくの間……少なくとも、学園祭終了までは、放課後は君と一緒に領域に行ったりすることができない……」
「えええええええええええええッッッ!?」
唇をキュ、と噛んだ先輩から放たれた無情の言葉に、俺は朝の通学路で絶叫した。
「どど、どういうことなんですか!?」
俺は思わず藤堂先輩に詰め寄る。
領域に一緒に行けないのもそうだが、それ以上に先輩と放課後に一緒にいられないってことが何よりもつらい。
「学園祭の運営については、自主性をはぐくむという理念の下、全て生徒達に委ねるというのがアレイスター学園の方針でな……そうなると、運営責任者は生徒会、ということになる……」
「あ……」
「当然、生徒会長であるこの私が、これから学園祭を成功に収めるためにも、そちらにかかりっきりになってしまうのだ……」
先輩は本当につらそうに、訥々と理由を語った。
そうだった……先輩は生徒会長で、本来だったら俺達と一緒に領域攻略なんてしている暇もないほど忙しいはずなんだ……。
それこそ、先輩の好意でいつも来てくれて、見守ってくれて……。
「だから、その……本当に、すまない……」
絞り出すような声で、先輩は深々と頭を下げながら謝った。
「や、やめてください! むしろ、俺のほうこそすいませんでした! 先輩の好意に甘えて、いつも頼ってばかりで……!」
「そ、そんなことはない! 私だって、君が私にどれほどのものを与えてくれていると思っているのだ! 感謝なんて言葉だけでは表せないくらいなのだぞ!」
「で、ですが!」
俺と先輩は、何故か通学路で押し問答をしてしまう。
そして。
「…………………………プ」
「ププ」
「「アハハハハハハハハハハハハ!」」
そんな様子がついおかしくなってしまい、俺は思わず笑ってしまった。
それは先輩も同じみたいで、さっきまでに悲壮な顔とは打って変わり、今は愉快そうに腹を抱えている。
「ハハハハハ! 本当に、君は……」
「あはは! それはコッチの台詞ですよ、先輩! ですが……分かりました先輩、学園祭の準備、頑張ってください!」
「ああ! だ、だがその……昼休みや休日は、問題なく時間が取れるから……」
そう言うと、先輩は上目遣いで俺を見ながら、両手の指をコチョコチョとしていた。
「もちろんですよ! 俺だって……先輩と一緒に、いたいですから……」
「あう…………………………うん」
そして俺達は、普段通りの様子に戻って、学園へと急いだ。
◇
「では、また昼休み」
「はい!」
俺は教室へと向かう先輩へ、その姿が消えるまで手を振り続けた。
先輩も、何度もこちらへと振り返っては、手を振ってくれた。
さて……となると、いよいよ俺も、部活動コミュを選択する時がきたようだ。
『攻略サイト』によると、この『ガイスト×レブナント』というゲームは、主人公が何らかの部活動に入るイベントが用意されている。というか、主人公の部活動への加入は強制らしい。
当然、部活に入れば、精霊のステータスとは別の、主人公にのみ用意されている『学力』、『体力』、『魅力』の三つのパラメーターが、運動部なら『体力』、文化部なら『学力』といったように、部活の特性に応じて上がる仕組みなのだ。
となると、俺が入る部活動は当然、“生徒会”一択だ。
生徒会に入っちまえば、それこそ先輩とずっと一緒にいられるし、何より、今までお世話になっている先輩を手伝うことで恩返しができる。まさに一石二鳥だ。
「ただ、なあ……」
そう、生徒会に入る上で、一つだけ懸念がある。
それは……生徒会には、ヒロイン候補がいるのだ。
もちろん、全ての部活動に一人ずつヒロイン又は仲間候補がいるんだけど、生徒会だけは特別だ。
なにせ、生徒会のヒロインは、先輩とは犬猿の仲なのだから。
「……確か、『攻略サイト』によれば、三学期の生徒会長選挙で先輩とヒロインが争って、主人公がヒロインの手伝いをしたりして好感度を上げつつ、いつも先輩に勝てないヒロインがコンプレックスを抱いて嫉妬して、それで闇堕ち……って流れだったな」
いや、トラブルの予感しかしない。
コレ……絶対に面倒なことになるじゃん。
「でも……行くしかない……!」
「ドコに行くんですノ?」
「ドコ……って、うあ!?」
拳を握って意気込んでいると、いつの間にか隣にいるサンドラが、不思議そうに俺の顔を眺めていた。
「あ、ああいや……その、ちょっと考えごとしててな……」
「フフ、変なヨーヘイ。それより、早く行かないと遅刻ですわヨ?」
おっといけね。
いずれにしても、もう答えは出てるんだから、ヒロインについて考えるのは後にしよう。
クスクスと笑うサンドラの後を追いかけ、俺達は教室へ向かった。
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