表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/398

主人公対クソザコモブ③

ご覧いただき、ありがとうございます!

『キミ、モウスグコノ世カラ消エチャウンダモン。【チェンジ】』


 立花がそう告げると、[ジークフリート]の身体が、突然幽子の渦に包まれた。


「な、何なノ!?」

「立花の精霊(ガイスト)、一体どうなるんだよ!?」


 プラーミャと加隈が驚きの声を上げる。

 だけど、あれは[ジークフリート]が持つスキルの一つ、【チェンジ】。


 [ジークフリート]から別の精霊(ガイスト)へと、文字通り変化(チェンジ)する能力だ。


 幽子が晴れ、立花の精霊(ガイスト)が姿を現す。

 そこには……精悍で屈強な精霊(ガイスト)の姿とは打って変わり、巨大なランスと盾を持ち、全身に甲冑をまとう美しい女性の姿へと変貌を遂げていた。


 あれこそ……主人公が持つもう一つの精霊(ガイスト)、[ブリュンヒルデ]。

 十一ものスキルを有し、向かってくるものをその重厚な盾で全て防ぎ、その巨大なランスで全てを討ち果たす、[ジークフリート]と並ぶ規格外の精霊(ガイスト)だ。


 というか、『攻略サイト』によれば、主人公の性別が選べる仕様で、それによって初期の精霊(ガイスト)が異なる予定だったらしいんだけど、どちらも同時に登場させたい開発者が両方使えるようにしようって言い出したらしく、【チェンジ】なんてふざけたスキルを用意して、両方使えるようにしたらしい。


 その結果、主人公が完全にチートになってしまい、ゲームバランスが崩れたとのこと。いや、ハッキリ言ってそんなのクソゲーだろ。開発者は正座しろ。


『アハハハハ! サア! コノ[ブリュンヒルデ]ト、ドウヤッテ戦ウツモリダイ?』


 なんて、立花は嬉しそうに勝ち誇ってやがるけど。


「[シン]、遠慮はいらない。あの精霊(ガイスト)をボッコボコにしてやれ」

『! ハイなのです!』


 俺はニヤリ、と口の端を持ち上げて[シン]に指示すると、[シン]は嬉しそうに飛び出した。


『アハハ! 力ノ差ヲ見セテアゲルヨ! 【スコグル】!』


 すると立花は[ブリュンヒルデ]のランスを震わせる。まあ、ハッキリ言ってしまえば高周波振動による破壊兵器だな。

 当然、あんなモンに当たったら、[シン]の身体は粉々になる。


 当たれば、だけど。


『ッ!? コノ!』

『そんな攻撃、[シン]には当たらないのです!』


 そして[シン]は[ブリュンヒルデ]の背後に素早く回り込むと、呪符を何枚も貼りつけた。


『食らえ! なのです! 【爆】! 【裂】!』

『アアアアアアアアアッッッ!?』


 幾重にも貼られた呪符が爆発すると共に、[ブリュンヒルデ]の身体をズタズタに切り裂いていく。

 [ジークフリート]だったら、【竜の恩恵】を使っている間は同じ攻撃をしてもほぼノーダメージだっただろうけど、今は[ブリュンヒルデ]。その身体に[シン]の呪符を防ぐ手立てはない。


『クッ……! 【レギンレイヴ】……!』


 背中に大怪我を負った立花は、治癒のスキル【レギンレイヴ】によってその身体を回復していく。

 だけど。


『回復しても意味ないのです! 【爆】! 【裂】!』

『ッッッ!?』


 [シン]は、回復中の[ブリュンヒルデ]に容赦なく呪符による攻撃を続ける。

 だから、[ブリュンヒルデ]……立花は延々と苦痛を味わう羽目になっていた。


「はは! どうするんだよ立花! このままじゃジリ貧だぞ!」

『ッ! ウルサイッ!』


 俺に煽られて立花は口惜しそうな表情を浮かべて叫ぶ。

 だけど、[ブリュンヒルデ]……いや、立花じゃ、[シン]のその素早い動きに対応できないことは分かっていた。


 これが先輩だったら、[シン]の動きを予測して、キッチリとスピード差を補ってくるはずだから、絶対にこんな展開にはならないけど、な。


 さあて、立花……こうなったら、もう手は一つしかないぞ?


『クソッ! クソッ! 【チェンジ】!』


 立花は地団駄を踏むと、[ブリュンヒルデ]から[ジークフリート]に精霊(ガイスト)を【チェンジ】した。


 さあ……これで終わりにしよう。


『アハハハハ! 今ノ[ジークフリート]ハ、【竜の恩恵】デホボ無敵ダヨ! モウ、ソノオ札ダッテ通用シナイ!』

「はは、そうかよ! [シン]!」

『ハイなのです!』


 それでも[シン]は[ジークフリート]に肉薄し、その身体に呪符を何枚も貼りつけた。


『【爆】! 【裂】!』

『アハハハハハハハハハ! 効カナイッテ言ッテルヨネ! 【グラム】!』


 [ジークフリート]が右手の剣を振り回し、[シン]に切りかかる。

 まあ、当たらないけど。


『クッ! 本当ニ厄介ナスピードダヨ!』


 それより……。


 俺は、チラリ、と向こう(・・・)を見やると。


「ハアアアアアアアアアアアアアッッッ!」

「これで終わりですワ! 【裁きの鉄槌】!」


 その巨大な身体を切り刻まれ、叩き潰されたヨルムンガントが、先輩とサンドラからトドメの一撃を食らった。


『ジャ……ジャアア……』


 ヨルムンガントは最後の(うめ)き声を上げると、その巨体を全て幽子……いや、“ウルズの泥水”へと姿を変え、[関聖帝君]にその全てを吸収された。


「ぐ……っ!?」

「先輩!?」


 先輩が膝をつき、サンドラが慌てて駆け寄る。

 だけど……“シルウィアヌスの指輪”がある限り、吸収できる“ウルズの泥水”は半分。先輩は大丈夫だろう。


 さて……これで、準備は整った。


「立花……もう、終わりにするぞ」


 俺は、立花に向けて静かにそう言い放った。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は今日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ